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業と徳

要領は以前と同じ。

しかし、今回は予想していなかった事態に見舞われた。


シャアリィとアイシャがフランコの教会の地下室に集めた闇の魔石は、二千とんで三十三個。

当然だが、大量に余ることもあり得るし、不足することもある。

余ったならばフランコに渡せば迷宮に還元するなり、同胞と取引をするなり、使途はあろう。


足りなかったならば、再び、集めればいいのだ。

シャアリィも、アイシャも、今回に関しては楽観的に考えていた。


「失敗しちゃった・・・」


取り込んだ魔石の数は九百十三。

前回よりもかなり増えていたが、それは問題ではない。


「白い光が私を拒絶したんだ」


シャアリィは、どうやら陽根源転換術式と相性が合わないらしい。

もう一度、試す分の魔石はあるが原因が何処かにあるならば、確認すべきだ。

此処にはフランコがいる。


「シャアリィ、少し休んでからどうするか決めよう」

「私は、フランコにアドバイスを貰ってくる」

「あの似非神父は、物事を良く知ってるからな」


アイシャは階段を駆け上って、フランコがいるであろう礼拝堂に向かう。


懺悔室の扉を開け放しにしたままで優雅に昼間から酒を呑む聖職者。

アイシャの気配に気付いたフランコが、頭半分、顔を覗かせる。


「どうした?拒絶でもされたかね?」


まるでシャアリィに起きる現象を予測していたかのような物言いにアイシャは困惑する。


「どうして・・・それを?」


図星を突かれれば、駆け引き上手なアイシャでも狼狽えた声を漏らしてしまう。

根源転換術式に関しても、フランコは一枚も二枚も上手(うわて)だと、認めざるを得ない。


「君たちはね・・・『殺り過ぎ』てるからね」

「私達聖職者が、何故、魔石を金で買うと思う?」

(カルマ)を負っては、聖職者に必要な素養である(ヴァーチュー)が減るからさ」

「それに金で魔石を買うことは他者への施しにもなるから、教義に叶っている」


アイシャは愕然とする。

それでは、何のためにグリーン・ノウズに来たというのか。

シャアリィに死霊術師(ネクロマンサー)になれとでも言うのか。


パンパンと手を叩いて、フランコがアイシャに福音を告げる。


「落胆することなどないさ」

「そもそも、魔導では根源転換術式は陽であろうと、陰であろうと、同一分化の存在だろう」

「君たちが価値を見出すべきは世俗の評判ではないよ」

「役に立つか、立たないか、だろう」

「私は君たちの業を祝福する」

「それでは不満かね?」


フランコの言うことは正しい。

そして、私達を救う唯一の言葉であり、慰めではなく祝福だと言祝ぐ聖者に相応しい。

その性根が私達より邪悪であったとしても、その在り方は流石としか言いようがない。

この胡散臭い男が小賢しいだけの似非神父だと思っていたアイシャにとって、これはまさに福音だ。


「あんたが本物の聖職者だとは思わなかったよ」

「小娘じゃ遅れを取るわけだ」

「・・・ありがとう」


なあに、構わないさ、とでも言いたげに横目でワインのグラスを持ち上げる男。

アイシャは自分達の歩んだ、この一年を振り返る。

そう言えばそうだな・・・壊して、殺して、逃げて、押し付けて。


(カルマ)だらけじゃないか」


と、呟いて、シャアリィの待つ地下室へと戻る。


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