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うんざりだ

翌日、シャアリィとアイシャは構造が単純かつ敵の数の多いという『親指の迷宮』に潜った。

魔石をゾンビィから取り上げた所で、運べる数には限度がある。

迷宮の出入り口に荷車を置くわけにもいくまい。


空のナップサックを一杯にして、それが二人分で魔石の数は五百程度。

最低限の補助アイテムは万一に備えて持っておかねばならず、そうすると実際は四百個少々が限界だ。

装飾品の類がドロップしたならば、やはり、それも持ち帰りたい。


「もう、ほぼ単純労働だよね・・・」

「死臭、腐敗臭・・・よく、アイシャはぶっ続けで近接出来るよねぇ」


ずば抜けた索敵が出来るということは、アイシャの五感の鋭敏さは尋常ではない。

それでいて、この耐え難い環境にも屈しないというのは、シャアリィには信じ難い。


「私には呼吸術があるからな」

「気配遮断、持続戦闘、瞬発力、求められる能力によって呼吸を変える必要があるんだ」

「ある程度の感覚遮断も出来る」


そういうシャアリィも脳内麻薬が出ている時は、アイシャもドン引きするくらいにぶっ飛んでいるが、本人にその自覚はないらしい。

あまり良いことではないが、シャアリィは危険に対して耐性が強すぎる。

本来、恐怖を感じるのは本能に近い部分だが、シャアリィにはそれが欠落している。

圧倒的な集中力は最適解を手繰り寄せるが、自分の危険回避を疎かにしがちである。


「どうせ持ち帰れないんだからさ」

「四百ちょいやったら、早めに水浴びして美味しいモノ食べにいこうよ」

「ロースト・ビーフとか、食べたくならない?」


アイシャが言葉に詰まる。


「此処に潜った後で、肉を食べようなんて考えるのはシャアリィくらいだよ」

「私は沢山運動した後には、やはり甘いモノが欲しくなる」

「それとさっぱりとした飲み物だ」


ノルマの半分を終え、一度、外の空気を吸いに出る。

迷宮の中とは正反対に強い日差しが容赦なく照りつける中で、ぬるくなった水を喉に流し込む。


「心臓の迷宮・・・どうしようか?」


シャアリィが、グリーン・ノウズ最大の迷宮の名を挙げると、アイシャは首を横に振って、


「正直、私はこの街にうんざりしてるよ」

「巨大な迷宮だろうと、もう、踏破済みだし、私達が喜べるモノがあるとは思えない」

「潜ると言えばフランコが面倒な依頼を押し付けてくるかも、だし」


シャアリィもそれに大きく頷いて、そりゃそうだ、と。


「結局、お気に入りのカフェテラスも見つけられなかったし」

「海にも入らなかったし」

「ほんと、どうしようもないヤツの吹き溜まりみたいな街だよね」

「私も、うんざりだよ」


それから数日掛けて、シャアリィとアイシャは、闇の魔石の採集ノルマを達成した。


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