29 谷へ
支配者の王冠の奪還の為、工藤さん、バッシュ・レイヤ・リリスと馬車で谷に向かっている。
「バッシュもリリスも光剣持っているのか?」
「2人共持ってるぞ」
「どう言う物なんだ?」
バッシュが自分の剣を出しグリップをスライドさせて中を見せた。
魔法陣が描かれていて4つのクリスタルが並んでいる。
「下の3つの透明な石が魔石だ。魔力を貯めて送る。先端の紅白の石で魔力を貯め一気に放出する」
相手に当たると高温を放射する。その為、相手の傷も塞がってしまう。パワーを上げれば相手は蒸発させる事も可能だ。
「正直、光剣はどうなんだ?」
「剣技と魔法の中間だな。携帯に便利だけど魔力切れだと使えない」
「攻撃魔法に近いんじゃないの?私はそう思うわよ?」
「この紅白のクリスタルは数100年で使えなくなるんだよ。満タンに溜まって魔力を放出しなくなって消えちゃうんだよ」
「へぇー、そこは消耗品か」
「でも各国の騎士団も光剣をやめ出して、実剣に移っている傾向にあるわね」
「そうなのか?何でまた?」
「魔力は色々と使えるんだよ。だから剣の発動の為だけに使うのはもったいないしね」
「俺達もこんな立派な剣をもらったら差していたいしね!騎士としての誉だよ!」
(なるほど、その気持ちは分かる)
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谷に着くと入り口に黒髪の女性が居た。この世界で黒髪は工藤さんだけだから、奥さんの紡さんだとわかった。
2人はお互い若返った姿を見てウケていた。
俺はセバスに頼み街道の暗部OBにパトロールを頼んだ。
まだまだ現役で暗部の仕事がしたかった者もかなり居るので再雇用し、屯所をつくり警備隊をパトロールさせた。これにより治安が一気に良くなった。税金の金の多くはインフラの整備に振った。
谷の家の屋敷は元々広くて快適なので、そのままリリスと住むことにした。
ただ使用人が数人付くようになり、セバスは正式にサエグサ公爵家の家令となった。妻のサリさんは女中頭となった。
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決行まで少し間があるので稽古をする事にした。
工藤さんのススメでバッシュとレイヤも呼ばれた。
まさか一緒に教えて貰えると思っても見なかった2人は興奮している。
中庭に紐を通し洗濯バサミで薄い紙が挟まれてぶら下がっている。
コレを左右の袈裟、左右水平に切る。
俺と工藤さんはなんなく切るが、バッシュとレイヤは苦戦している。
まあ、体の使い方が良く無いのだ。腕だけで切っている感じなのだ。俺と工藤さんは剣と体が自然に一緒に、頭を上下せずに動いている。
「むっ、難しい!」
「見た目より難しいわね・・・」
「光剣ばかり使っていたツケが回ってきたな、正しい身体の運用と正しい刃筋。正しい握りとただしい斬撃が必要とされるぞ」
「騎士団長と言われても実剣で紙一枚切れないとは情け無い。しかも使っている刀はギム殿の剣にも関わらずだ」
工藤さんは2人に剣を納めさせ包丁を渡した。
新聞紙見開き1枚の大きな紙をぶら下げた。
「これでやってみて。包丁は短いから刃筋はそこまで気にしなくて良いけど、短いからこの大きな紙を切るには体を上手く使わないと切れないよ」
工藤さんが包丁を握り右から水平に切る。上手く体を上下せずに左側に動かしている。のそまま切ったすぐ上を左側から右に体を回して切る。
イメージはコマの外側に刃物が付いた感じだ。
そのあとは俺も左右水平と左右の切り上げを行う。
2人は唖然としている。
「奥が深い・・・」
この紙はリリスに再生魔法をかけてもらって居るので、切った所同士を近くに持って行くと元に戻るようになっている。
リリスは聖女で元々魔力がかなり高かったが、祝福・結婚後は爆上がりしたらしい。
シールド系と回復系は物凄い事になっているそうだ。
バッシュとレイヤに交代する。
イメージが付き、刃筋を気にする事も無くなったからか、切れるようにはなって来た。
だがまだ体の使い方が甘く、新聞紙を真っ二つには出来ない。
夜は部屋の中で稽古だ。
机にトイレットペーパーぐらいの厚さと長さの紙を置く。
(まぁコレはトイレットペーパーの芯だな)
それをアゴの高さぐらいに置き包丁で左右の袈裟に切り刃筋のイメージを掴む。
俺は立てた爪楊枝を切る稽古を行っていた。
それを見た2人は絶句していた。




