2 憑依?融合?しました
「丈夫だけが取り柄か」
「生きてやがる・・・」
「死ねば良いのに」
「虫並みの生命力だな」
(ん?コイツらは?)
ゆっくり生前の三男の記憶が混ざってくる。
王・王妃に長男・次男がベッドを囲み俺を見下ろしでいる。
まぁ王族と言う地位を勘違いして、放蕩な限りを尽くした馬鹿三男だからな。融合した三男の記憶を辿ってみるとその行動はかなり酷く万死に値する。
(まぁ、今は俺なんだけどな、困るよなぁ・・・)
「お前はどれだけ我がコート国を混乱に落とし入れたいのだ?よいか、お前が刺された事件はそこら辺の者の喧嘩と言う訳にははならないのだぞ!王族襲撃・殺害未遂事件になるのだ!」
「全く馬鹿な弟を家族に持つ身になれよ!』
「お前をよく思っていない者が多すぎて調べカレンわ!」
(ん?犯人捕まって無いのか?)
「魔法も使えない無能なのだから、せめて大人しくしておけ!」
もの凄い言われようだがしょうがない。言い返す気も無い。
「はぁ、不貞腐れて口も開かんか・・・」
(えっ?いえいえ!その通りなんですよ!)
「王として命じる、ダジユール国のシエル侯爵家の長女の婿になる事になった。10日後旅立て」
(このヒゲ野郎、言ってやがる!)
「おいヒゲ!死ぬほどの怪我だぞ、10日じゃ回復しないだろ!」
「なっ!、父上になんて口のきき方をする!無礼であろう!」
「無礼では無いだろ?事実だバカ!そんな事も分からないのか?」
(若造をからかうと面白いな)
「貴様、王命に従えないのなら死ぬがよかろう」
(貴様だと?このヒゲほんとに頭に来るな。まぁ三男が悪いんだろうけど、コイツにも責任の一旦はあるわなぁ)
「おいそこのヒゲジジイ!生きていようが死んでいようが、二度とこの国には帰るなという事か?」
「なっ!、父上さまに対して何という・・・何という無礼な申しよう!」
「国王陛下の名により王族コキーユ家より永久追放をご提案します!」
「うむ、10日後出発後国境を跨いだ時より、ナガトをコート国コキーユ家を除籍としその経歴は抹消とする!」
(おいおい、そこまでかよ!あと10日はヤバいな。それまでに出来る事って何だ・・・何がある・・・)
「良いな、申し付けたぞ!」
「うむ、申しつかったぞヒゲジジイ!汚ねえヒゲ切れジジイ!」
「貴様と言う奴はぁ口が悪いぞ!」
長男のカランと次男のアルノが俺に殴りかかってきた。その顔に花瓶の水をかけた。
「怪我して動けない者に2人掛りで襲う卑怯者よりマシだ。貴族、いや王族って卑怯者だなぁ」
カランとアルノは怒りで震えている。
「何だ、帰るんじゃ無いのか?」
四人共、軽蔑の目で病室を出て行った。まぁもう会う事も無いだろう。
とりあえず無理してでも屋敷に帰りたい。
部屋には俺の他に一人だけ居る。
俺専属の年寄り使用人のセバスチャンが残る。兄達の使用人は若い優秀な者が多いが、三男には勿体無いという事と、希望者が居なかった事から一般公募で雇った者だ。
(王族の使用人を一般公募ってセキュリティ面でどうなのよ?と正直思うけどな。)
「セバス、すぐ家に帰れるか?」
「帰れます」
「じゃ今すぐ帰るぞ」
「はい、かしこまりました」
(刺されて多少マシになると思ったが、やはり芯からうつけ者か?)
このセバスと言う男、ダジュール国のシエル侯爵の手の者で、使用人であり裏仕事に長年携わってきたが、年齢が上がり引退し里で老後を送っていたが、長女レイヤと婚姻が決まり調査員として抜擢され派遣された者だ。
手に入れた麻薬の実験をするために、買った奴隷を勾留していたのだが、そこに向かう途中、旅の商人と山賊の戦闘にたまたま通りかかった。
山賊を全滅させ自分も瀕死の商人からセバス宛の手紙を預かったのだが・・・
そもそも戦闘訓練された動きの商人など怪しいに決まっている。その場でセバスへの手紙を読み正体を知った。
商人を洞窟に運び麻薬を与え、死ぬまで根掘り葉掘り聞かせてもらった。
(それにしてもこの三男、マジでなかなか性根の腐った悪党だ・・・)