13 出発
3日後、ギムの工房に刀を取りに行った。
「出来てるぞ!その入り口にあるヤツだ」
フレームグレインの美しい木だった。
(ブライヤーか?)
手にとってみるとなんともしっとり手に馴染む。
全体的に蔦の模様が彫られ良い具合に滑り止めになっている。鐺・縁頭は小さめな金属が付いていて品が良い。
「これは素早く扱える!素晴らしい!」
小さい透かし丸鍔が付いていて、コレによりバランスがとても良くなっている。
「いいだろ?一昨日なクドーが来てアドバイスしてくれたんだよ」
「凄く良いですね!」
「そこのハンドガードも、ちゃんと生鉄が入ってるから光剣も受けられるからな」
「はい、ありがとうございます」
(なるほど、生鉄は剣などの武器として必須なのだな)
「コレは杖だ。ネバリの根で出来ている」
白と黒の色が練られたような木だ。少し軽めで丁度使いやすそうだ。
「いくらだい?」
「クドーさんからもらっているから不要だ、あとコレは生鉄代だ」
買い付け代金を受け取って家に帰った。
デザートカラーの薄い生地のフード付きマントをクローゼットから出す。
このマントは安っぽく見えるが天ノ羽衣と言う魔道具で、雨風を防ぎ温度調整をしてくれる。さらに自動洗浄機構で汚れない。ネイビーブルーに色が変えられ防御力もある優れモノアイテムだ。
コレは国の宝物庫に忍び込んだ三男がパクって来た物だ。宝物庫の隅に丸まっていたのを見つけ、取り上げてみると汚れが付いて居ないことから不思議に思い、羽織って見ると丁度良い温度にマント内を調整してくれる。
コレは便利!っと頂いて来たのだ。
もちろんずる賢い三男は宝物台帳からこの天ノ羽衣の名前を、ボケて今期で引退の宮廷魔術師を使い消させたのだ。
本当に快適だ!
◾️◾️◾️◾️
翌日早くから谷の村を出た、フギ村は一番近い町と言っても徒歩で5日だ。
馬車だとその半分程度で着くらしい。
「セバスはシエル侯爵にどのくらいの頻度で連絡してるんだ?」
「お屋敷の時は月1回です。今は別の暗部が入っているので連絡していませんね。言われても無いですから」
「侯爵のお人柄は?」
「素晴らしくちゃんとした貴族様です」
「お屋敷とかもデカくて中も豪華そうだ」
「私は中に入った事ありませんので分かりかねます」
「何で?」
「報告はツナギの者が来ますし、お屋敷に行く必要ありませんよ?私は国王陛下直属の暗部ですから侯爵様とご家族のお顔は分かりますが、直接話した事はありませんよ。さすがに陛下とは何度かありますが」
「なるほどそうだな」
「こっちの王族はどんな人達だ?」
「コート国から比べると、共に良い人だと思いますよ。あの人達は悪人ですからね」
「腹黒いよなぁ」
「軍事大国ですからね、周りの国は面と向かって逆らえませんな。ただ大国のおごりか?暗部はレベルがかなり低いですなぁ、人数も居ないようですし」
「バカみたいに直接的な軍事力だけに振ってるからな。武装が過剰だな」
「あと谷の外では俺の事はサエグサと呼んでくれ。ナガトと言う名前にピンと来るヤツが居るかも知れんからな」
「分かりました」
周りの風景を見ながら10時間ぐらい進んだ。
異世界の景色は三男の記憶には薄っすらあるが、俺の記憶には無いのでなかなか楽しい。
「ところで、お聞きしたいと思って居たのですが、剣者様とはどのように知り合ったのでしょう?」
「ん?この前が初めてだが?」
「いやいや、急にあんなに親密になる訳は無いと思うのですが・・・」
「うーん・・・でもそうなんだからしょうがない」
「はあ・・・何とも不思議な話ですな・・・」
「今日はこの先のトリネキの村で一泊します」
「あぁ、馴染みの宿でもあるのか?」
「はい元同僚の夫婦がやっていて、そこの蕎麦が美味いんですよ」
「それは楽しみだな、潜入などで店をやってそのまま引退した感じか?」
「それですね」
「セバスの知り合いは多そうだな」
「そうやって根を張って情報網を広げて行ってます」
(日本の草だな・・・)
「あっ、見えて来ました」
遠くにかわいいチロル風の建物が見えて来た。




