もふもふとライバル?
ミ=ゴさんの魔力の気配が消えた。
たぶん、帰ってしまったんだろう。
少し、寂しい。
また呼べばいい。そう思うかもしれないが、そうはいかない。
彼女、俺の世話のあとに別の仕事が入っていて、しばらくは呼べないらしい。
……残念だ。
合格報告、聞かせたかったのにな。
「ミー!!」
シャンちゃんが、俺の背中をバンと叩いてくる。
……そうか。これからが本番だ。
落ち込んでる場合じゃないってことか。
ほんと、シャンちゃんは優しい。
俺は気合を入れて、学園の門をくぐった。
***
いくら気合を入れても、緊張するもんはする。
心臓がうるさいくらいにドクドク鳴ってる。
周りを見れば、みんな同じように固まった顔。
ちょっと安心した……と思ったら、一人だけ「わかんねぇ!」って大声で笑って、試験官に怒られてるヤツもいた。
どこにでも例外はいる。
俺は深呼吸して、試験用紙を前にする。
……でも、手が震える。
これで人生が決まる。
震えないわけがない。
けど、ミ=ゴさんに教えてもらったこの世界で、俺は絶対に負けられない。
震える手を抑えて、答えを書き始めた。
***
試験が終わって、やっと一息つけた。
ミラさんが教えてくれたところが、まさかのそのまま出た。
助かった……ありがとう、ミラさん。
彼女がいなければ、たぶん、ここで終わってた。
そんな感謝で胸がいっぱいになっていたところへ、一人の少女が近づいてくる。
「首席争いは、私とあなたみたいね」
「首席?」
「ええ。毎年、試験の点数と適性レベルで決まるの。
まあ、その魔力量じゃ、私の勝ちだと思うけど?」
「……俺の魔力量、そんなに低いのか?」
「うん。問題はちゃんと解けてたのにね。もったいない」
彼女は軽く肩をすくめて、続けた。
「魔力ってね、体のキャパを超えると溢れて見えるものなのよ。
それが出てないってことは、キャパ内だけってこと。つまり……そういうこと」
「……そう、なのか」
まただ。
ここでも、俺の不運が顔を出す。
「そんなに落ち込まないでよ。まるで私が悪いみたいじゃない」
少女は少し笑って、こう続けた。
「それに、魔力がなくても学者にはなれるわよ?」
「学者か……」
その道も、ありなのかもしれない。
シャンちゃんを研究して、子供を大量生産して……
「ミー!!」
「うぐっ!?」
突然、シャンちゃんが飛び蹴りをかましてきた。
どこから湧いた!?
試験の邪魔になると思って、学園の前で待たせておいたのに。
「シャンちゃん、ステイ!! 待ってってば!!」
「なにこの子!? 可愛い!! あなたの魔物!?」
彼女がシャンちゃんを抱き上げようとしたけど、ひょいっと避けられた。
「やっと……同志が!!」
「同志?」
シャンちゃんは、見た目のせいでよく不気味がられていた。
可愛いのに……。
でも彼女は、違った。
……ちょっと嬉しい。
「こんな子、図鑑には載ってなかったわ! どうやって呼んだの!?」
「昔会ったお姉さんが、呼び方を教えてくれたんだ」
「なんだそいつは!?」
――その時。
「こらぁ! 試験中に魔物を出すな!!」
教室中に怒鳴り声が響く。試験官の先生だ。
やばい!
俺は慌ててシャンちゃんを抱き上げる。
「こいつは君のか!?」
「はい、すみません!!
この子、外で待たせてたんですけど、勝手に入ってきちゃって!!」
「抱っこいいなぁ……」
少女がうらやましそうに見てくる。
今はそういうのいいから!
「こいつは見たことない魔物だな! どうかこの後――!」
「はいはい先輩。もう適性テスト始まりますよ~。新人のスカウトは後にしてくださいね~」
「待て! 袖を引っ張るな! やめ……その引っ張り方はやめろ!!」
試験官の先生は、後輩らしい女性に引きずられて行った。
「なんだったの、今の?」
「さあ……?」
「次はいよいよ適性テストか……」
「きっと大丈夫よ! そんな可愛い子呼べるんだもん!
もしダメでも、私が抗議してあげる!」
……基準そこ!?
はあ……緊張する。
あの先生に目をつけられたし、減点されるかも……。
胃が痛い……胃薬、持ってくればよかった……。
「ミー?」
シャンちゃんがお腹を見せてくる。
……もふれって言ってるのか?
君のせいだぞ?
……でも、もふる。
ふわふわ。柔らかい。
毎日ブラッシングしてるからな。ふふん。
「羨ましい!! 早く私も、あんな可愛い魔物が欲しい!!」




