またね
「‥‥え、アル‥‥?」
ツタがアルの心臓を突き抜けた。ボタボタと赤い血が落ちる。
「い、や‥‥うそ‥アル‥‥?」
どんどんと呼吸が浅くなる。
「どうしたの?ローズ‥?‥‥大丈夫だよ!オレっち達は死なないんだから!あぁでもそっちのお姉さんは死んじゃうかもね!」
笑顔で指を差し、メアリーを見てにこりと天使は微笑む。
ぷつりと何が切れた音がした。
「‥‥ね。」
「ん?なぁーにローズ?」
『死ね』
ズドン。
地響きのような音がなる。
目の前の天使の左腕が飛ぶ。
「っ‥な‥」
「『‥‥深淵に堕ちろ』」
大きな影が天使を覆う。
「‥まじかぁ。ひひ、『弾けろ』」
目の前が急に明るくなる。
駄目だ。殺せ。こいつを殺せ。怯むな。
だってこいつは‥‥
「ローズ。」
優しい声がする。
優しく手で目の前を塞がれる。
「‥‥ローズ。ごめんね。もう大丈夫。大丈夫だから。君が戦う必要はないよ。」
「‥アル‥‥アル‥!私、は‥っ…」
「‥うん。いいこローズ。大丈夫。」
優しくローズを撫でてあげると彼女は安心したように意識を手放した。
「‥‥見世物じゃないんだけど?」
左から血を垂れ流す男に睨みをきかせる。
「‥んー。ちょっといじめすぎちゃった。ごめんねローズ。‥‥今日のところはこの辺にしよっかな?なんかきたし。」
ドタドタと足音が聞こえる。
「‥‥またね。」
「‥‥もう、またなんてあって欲しくないんだけど。」
天使はにこりと笑って、オリビアを持って消えていった。。
「‥さて、これどうしようかな。」
僕はまだ完全に体の穴が塞がってない状態。
メイドは未だ気を失って倒れている。
ローズも疲労困憊だ。
今こちらに向かってきているのは恐らく会場の警備員といった所だろう。
あれだけ大きな音を立てたんだからそりゃ集まってくるよね。
さぁ、僕一人でこの人たちをどうするか‥‥。
「こっ、ち!」
ふいに後ろから声がし、ぐるりと振り向いてみる。
ピョコピョコと動く耳に青色の瞳
「‥‥!!ワンコくん!」
ローズの死に戻りの前、監獄にいた子だ!
首には商品としてつけられる首輪と無理やり引きちぎったような鎖がついている。
‥‥なるほど。前もここから逃げようとしたらオリビアに見つかって買われたと言うことか。
「ワン‥‥?わから、ナイけど、はやく、にげる!もう、く、ル‥‥!ついて、きて‥!」
ワンコくんはメイドを軽々持った。
「‥‥っ助かる‥!」
僕はローズを大事に抱えワンコくんの後ろを走る。
「たすかったー‥ありがとう、ワンコくん。」
「ん‥ここなら、たぶん、こな、い。」
「‥ここは。」
「ローズ‥!目が覚めた?」
ゆっくりと目を開けるローズ。
「‥アルっ‥‥!怪我は」
取り乱したようにローズが問いかける。
「大丈夫。僕は死なないからね。」
「‥そう、でもねアル。無理はしないで。私は誰かが傷付く姿は見たくない。」
「‥‥うん。ごめんねローズ。‥僕は暫く休むよ。」
そう言うとアルは姿を消してしまった。
「お嬢様、私も怪我しました。」
いつ起きたのかわからないメアリーがにゅっと顔を近づける。
「め、メアリー!良かった。貴女も無事なのね‥」
「この惨状を見て無事だと思うお嬢様はさすがだと思います。」
頭からだらだらと血が流れるメアリー。
「ご、ごめんなさい。目の前に体に穴が空いてる人がいたから、どうしても、なんか、血が流れてるだけだと軽視しちゃって‥‥」
「‥‥泣いてしまいそうです。」
「ふっ」
誰かが笑う。
「おま、えらおもし、ろいね。」
「‥‥ノア‥‥?」
「‥‥?なまえ、しって、る?なんで?」
こてんと首をかしげるノア。
「‥‥よかった、私貴方に会いたかったの。」
「‥‥お、れに?」
「えぇ、ノア、貴方私の‥」
「やっぁと見つけました。お客様。」
突然の声に私は体が硬直し動けなくなるが、メアリーとノアは警戒の体制に入る。
「‥!おま、え!!」
「そこのメイドに発信器をつけていたのですが‥いやはや策が高じましたね。‥あれ、犬が一匹脱走したと聞きましたがここにいたのですか‥‥あぁ!今日の私はついている!!脱走した商品と鬼神を見つけられたのですから‥‥!!」
男は嬉しそうに話す。
「‥‥鬼神‥?何の話を‥!」
「‥貴女も奴隷として自分の価値をしりたくはないですか??」
「‥‥私の価値‥‥?」
「えぇ!例えばそこの鬼神。八年前とある魔法使いに連れ去られたのです。実に悔しかったですよ。売ればかなり儲かったのに。」
男はがっかりしたように話す。
‥‥八年前。それはメアリーがメイドとして初めてうちに来た頃のはず。
「‥‥お嬢様私は‥」
「‥‥価値ね。貴方に良いことを教えて上げるわ。価値は他人に決められるものじゃない。自分で決めるものなの。」
周囲に魔力が漂う。
「‥‥私はローズ・ヴェルナー。良く名を覚えておきなさい。この世に名を轟かせる者の名を‥‥!」
地震のように会場が揺れる。
「なっ‥‥ローズ・ヴェルナーといいますとあの、ヴェルナー商会の娘で南の国の妃‥‥!っ、良いのですか、このようなことをして‥!貴方もただじゃすみませんよ‥‥!」
「あら、面白いことを言うわね?いいのよだって私‥」
辺りが闇に包まれる。
「悪役令嬢だもの。」
オークション会場へと走る。
「早く皆を助けなきゃ‥!」
「ローズ様!!」
聞いたことのある声。
「‥‥!?ゾル!なんで貴方がここにっ‥‥!」
「兄様から教えて貰ったんだ!ここに俺らの仲間がいるし‥‥その、ローズ様もいるって聞いて‥助けになりたいと‥‥」
そう顔を赤らめながら言うゾル。
「‥顔が赤いわ‥風邪かしら‥」
そっとゾルの額に触れる。
「『んんっ‥‥あのいいですか。』」
通信機から音がなる。
「あっ、エルマーさ‥‥」
「『すぐにそこから出てください、私の予想ですともうすぐそこは崩れます‥!』」
「っえ」
どうしよう。威嚇として少し地面を揺らしただけなのに。
‥‥元々ここを壊すつもりだったが、皆が避難してからにするつもりだった。
「「行こう!」」
二人に手を引かれる。
「‥なんだ犬っころ。ローズ様から手を離せ。」
「‥みみなが、おまえ、がはなす、がいい、」
バチバチとケンカが始まる。
「No.0!貴様、私を置いていくのですか‥‥!誰が身寄りのない貴女を育てたと思って‥‥!」
後ろから男の声がする。
「‥‥お嬢様。先に行って下さい。私は彼に話したいことがあります。」
「‥‥メアリー。」
どこか悲しそうな顔。
「‥‥メアリー。これは命令よ。必ず私のところに戻ってきなさい。」
メアリーは目を丸くしてくすりと笑う。
「承知致しました。お嬢様。」




