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味方の話

一目惚れだった。

好きだと思ったんだ。

気味が悪いくらいに赤く染まる瞳。

ギラギラと輝く髪。

そして膨大な魔力。

何処を取っても綺麗で、それでいて恐ろしかった。


王宮へ彼女を送る途中俺は質問した。

「どうして貴女は俺の味方にはなってくれないのですか?」

と。

純粋な疑問だった。 

彼女の力になれることは素直に嬉しい。でも、どうして彼女は味方にはなってくれないのか。

‥どこか不安を感じてしまったのだ。


そう問うと彼女は虚ろな瞳で答えた。

「‥『味方』ってね、ただ力を貸してくれる仲間のことなの‥そして味方は裏切るかもしれない。‥‥私はね貴方に悲しんでほしくないの。もし私が貴方の味方なら、私は貴方を裏切るかもしれない。でもね、」

光に反射してローズの瞳はキラリと光った。


‥‥俺は、君をしっている‥‥?


ローズはにこりと笑う。

「貴方はいつでも裏切っていいの。だって、『味方』だもんね。」





ポロリと口から流れ出る。自分でも何故そう思うのか、この心の奥底にある気持ちが何なのか、何を言っているのかすらよく分からなくなる。

‥‥『味方』という言葉が頭を駆け巡る。


「見つけた!ローズ!!」

「お嬢様!!」


父とメイドの声が重なる。

「‥‥お父様、メアリー。」

ビックリして思わずブライトの服を掴む。

‥なんと言うか不可抗力だ。

嬉しそうにこっち見ないでブライト。

‥‥殺気をしまって、お父様、メアリー。


「‥あれ、ブライト君?」

父はじっとブライトを見つめる。

ピクリとメアリーが反応する。

ブライトはばつが悪そうに答える。

「‥‥はい。」

そう答えた瞬間メアリーが私とブライトを勢い良く離す。

「っ!?メアリー!?どうしたのっ‥」

「貴方‥お嬢様に手を出してはいませんよね‥!」

殺気のこもった瞳。

「っ何!何を言って‥‥」

「‥お嬢様彼は南の国の元第一王子。ブライト・オルモードでございます。」

‥‥ブライトが南の国の王子?

違う。彼は将来北の国を治める者だ。それに第一王子はエリックだけのはず。

それに元って‥‥

「メアリー話を聞いてっ‥‥」

「ブライト君、君私の娘に何しようとしたの?」

お父様まで‥‥!

「何もされてません!私はブライトと話をしただけです!お父様っ‥‥!!」

懸命に叫ぶ。

(どうして信じてくれないの‥)

「‥それは本当かブライト君」

「‥はい。俺はローズと話をして、彼女に生涯を誓いました。」

「ぇっ‥」

そうかもしれないけどなんか少し違う気がする‥!

「‥‥その心、嘘偽りないな?」

なんの話だ‥‥!

「‥はい、お義父様。」

「‥ならいい。」

いいの‥‥!?

どうしよう、ツッコミが追い付かない。

‥‥ていうか、え、お義父様‥?そう聞こえた気がするのだが‥‥

「あ、あのっ‥」

「ここにいたのかお前達。ローズよ、迎えの馬車がもう来ているぞ。」

‥陛下っナイスですっ!!

ドレスの裾を掴みペコリと礼をする。

「‥では私は一度南に戻り報告をしなければならないのでここで失礼致します。」

ゆっくりと顔を上げる。

「‥そうか、ローズ。もう時間か。」 

「悲しそうな顔をしないでお父様。今はまだ一緒に帰れないけどいつか、私と二人でお出掛けしましょうね。」

寂しくも思うがあまり長居しすぎるのも良くない。

もしかしたら怪しまれるかもしれないから。

へにょりと眉毛を下げて笑う。

すると突然父が胸を押さえる。

「えっ、お父様‥?!!」

「‥‥なんでもない、可愛さが心臓に刺さっただけだ。」

「そ、そう。」

そして私は父とブライトを残して北の国を去った。




そわそわと落ち着かない。いっそ聞いてみようか。

「ブライト君。君はローズを好いているのかね?」

「‥‥はい。その通りです。ローズの全てが狂おしいほど愛おしい。」


わかる。と頷く。

いやちがう、駄目だ。


「ブライト君。ローズはなんでもエリック殿下と縁談を結んでいるそうだ。それでもまだ君はローズを想うかな?」

「‥それは政略結婚ではなく、お互いが愛し合ったものですか?」

「‥‥政略結婚だ。」

「なら大丈夫です。俺がもっと強くなって権力も何もかも奪えばいいだけのことです。」

なんて奴だ、ブライト君。

「‥‥ブライト君。ぶっちゃけ私はブライト君とローズの甘酸っぱい恋を応援したい。‥‥君にローズを奪えるかね。」

「‥はい。お義父様。俺は何としてもローズを奪って見せます。」


誰も彼らを止める者はいなかった。

そして今ここに新たなる盟約が誕生したが、それを知るのはライムとブライトと頭を抱えた国王陛下だけである。







「メアリー?さっきはどうしたの?」

帰路の途中ガタガタと揺れる馬車の中は静かな時間が流れる。


ブライトの名を聞いたとき、メアリーはあからさまに動揺していた。

「‥‥お嬢様はブライト様についてどのくらい知っているのですか?」

「ブライト?えっと‥‥彼は死に戻りの前北の国の王として君臨してたわ。」

「‥‥左様ですか。ならば私が今のブライト様についてしっかりお伝えするべきでしょうね。‥お嬢様の為にも。」


真剣な眼差しが向けられる。

「‥‥彼は元々南の国の第一王子でした。

しかし二年前彼は自身の双子の弟であるエリック様に手を掛けたのです。」

「‥‥そんな‥‥」

「‥‥彼は生まれながらにして神童だと崇められていました。魔力も誰よりも持っている。力がすべての国においてブライト様は絶対的権力の持ち主でした。しかし、そんなある日。事件が起きました。それがエリック殿下の殺人未遂にございます。‥‥その後誰かが言いました。黒髪、黒目は魔女の生まれ変わりではないのかと。‥‥魔女は世界を混沌へと導く存在。その日から皆の彼を見る目が変わりました。

‥‥忌み子。魔女。化け物。様々な論争が飛び交うある日、彼はついに追放されました。」

「‥‥そう、なのね‥‥」

「そうしてエリック様は次期国王と呼ばれ始めました。しかし陛下はそれ望まない。陛下は力が伴わないエリック様を次期国王と認めないようです。」

「‥‥」

あの態度はそう言うことだったのか。

深くため息をつく。

揺れる馬車に体を預け静かに目を閉じた。







「‥‥お嬢様。着きました。」

「えぇ」

‥‥私は彼についても何も知らなかったのだとため息をつく。

そうして重い足取りへ王宮へと向かうのだった。

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