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お父様とローズ

ゆっくりと振り返る。

グレーの瞳と銀髪の髪。

左頬から腰にかけて真っ赤に染まっている。

「‥ぁ」

きっと私は彼に恨まれている。

死に戻り前も、彼は一度だって私の元に来たことはなかった。

「‥ロー‥ズ?」

びくりと肩を震わす。

‥‥今から私は彼に殺されるんだろう。でも最後に名前を呼んでくれたのは嬉しかったな。

なんて場違いな事を思う。

コツコツと靴音が響く。そして私の目の前で止まる。

「‥っ」

ごめんなさい。そう言いたかったのに、声が出なかった。パクパクと口を動かし、瞳に水をためることしか出来なかった。

‥‥あぁ、結局私の物語はここで終わるのか。

ゆっくりと目を閉じる。

次に感じるのは浮遊感。




‥‥浮遊感??




「会いたかった‥‥!ローズ!!!」

そう言って高く私を抱き上げる。

「‥‥‥っえ!?」

スリスリと頬擦りをする父。

「なんっ‥えっ!?」

現状把握ができない上に畳み掛けるような父の行動。

「私の可愛い娘‥」

そう言いながら父は私の頬へとキスをした。


顔がどんどんと赤くなるのを感じる。

「なっなっ‥‥!!」

ぷしゅーっと音が出るくらい頭がぐるぐると回る。

「‥‥ごめんねローズ、私は‥‥」

そう口を開くや否やメアリーが叫ぶ。


「悪魔様!」

「チッ‥わかってる!」

気づいたら私はアルの腕の中にいた。

「っえ、ちょ‥まっ!」

『デスウォーター』

「っメアリーっ!!?」

今物騒な単語が聞こえたわ‥!

びしゃりと父が水を被る。

「‥お、久しぶりだな、メアリー。またメイドとしてのスキルが上がったようだ。見てみろ。こんなに服が綺麗になったぞ。」

父の服を真っ赤に染めていた血が綺麗さっぱり失くなっている。

「‥‥今の魔法皮膚もろとも溶かす魔法なのですが‥流石としか言えませんね。ライム様。」

‥物騒な話しか聞こえないわ‥!

まずい、これは非常まずいと本能が告げる。

「っアル!メアリーを止めて!!」

アルの腕の中から脱出する。

「?なんで?僕の愛し子に手を出したんだから当然の報いだよ?」

‥目が笑ってないのよ!アル!

そうだ、こんな時こそのゾルよ!今この状況を打破する手だてがきっとあるはずだわっ‥!

「っゾル!二人を止めっ‥」

「メアリー様‥これが貴女の言ってた虫ですね。」

‥‥手遅れだ。

「‥‥久しぶりの親子の再開を邪魔するのか‥‥」

どうして貴方まで乗り気何ですか‥‥!



‥‥‥‥どうして、私のこと娘だと、言ってくれるのですか‥

ポタポタと床に涙が溢れる。

「っローズ?!」

父が駆け寄ってくる。

「どっどうしたんだ、どこか痛むのか?すまない怖がらせただろうか‥」

どうして優しくしてくれるんですか。

私は貴方から大切なものを奪ったから。

だから貴方は私を捨てたのでしょう。

なのに、なのにどうしてそんな大事そうに名前を呼ぶのですか。 

お父様。と呼ぶことが出来なかった。

私にはその資格がないと思った。


『親子の再開を‥』


自惚れていいのですか、貴方の娘で良いのですか‥

「おとぉさまっ‥‥‥」

「‥‥どうしたんだ?ローズ。」

ポスりと頭に置かれた手は温かくて、また涙が溢れた。

ぎゅっと抱きつく。

「お父様っ‥おとう様っ!!」

何度も何度も呼ぶ。

「うん、ローズ。お前の父はここにいるよ。」

貴方のことも守れなかった。名前すら死ぬ前に知った。

こんな私でも‥

「嫌いにっならないでっ‥」

許してくださいますか。





「いや、まさかライムの娘だったとはこれは驚いた!!」

国王が可笑しそうに笑う。

「‥ローズは可愛すぎますから。私とは系統が違うので分からなくても仕方がありませんね。」

‥‥本人を膝の上に乗せた状態で言うことではない。

目を腫らして心行くまで泣いた私は応接間に来ていた。

メアリー達は王室の片付けをしている。

さんざん暴れて周りはぐちゃぐちゃだ。

私が止めても聞かなかったので自業自得だ。

ゾルは取引の話をエルフの代表として伝えるために先に帰ってしまった。


「‥お父様。」

ずっと聞いてみたかった。

「お父様、は私が‥‥嫌いですか?」

父は目をパチパチと見開いたあと慌てたように言う。

「そんなわけないだろう!?私はローズとローズの母を世界で一番愛してるのだから。」

「‥‥でも、私のせいでお母様は死んじゃった。

私がお母様を殺したの。お父様の大切な人なのにっ‥私がっ‥‥」

「‥ローズはずっとそんな風に考えていたんだね‥ごめんね、ローズ。君を一人にして不安にさせた。ローズの母‥フィルが死んだのはローズのせいじゃない。私は愛しい我が子を恨んだことなんてない。」

そう優しい声で言われる。

「私と、ローズと、フィルで過ごす未来はもう何処にもない。フィルの分生きることなんて出来ない。‥死んだ人は、戻らない。」


そう、だから私はもう二度と誰も死なせないために生きる。

全員が笑って過ごせる未来のために。

「だからさ、ローズ。ゆっくり生きて、それでフィルに会えた時嬉しかったこと、楽しかったこと、悲しかったこと報告しよう。」

「っはいお父様っ‥」

涙が止めどなく溢れる。

‥‥生きるんだ。そして最後にお母様に伝えるんだ。

貴女の娘は立派に生きました、生んでくれてありがとうって。





「寝た顔も可愛い。」

「‥‥そうだな。してライムよ。我はお前に娘が居ることを知らんかったのだが‥‥」

「‥言ってないですもん。というより‥言えなかったんですよ。」

すやすやと眠る愛しの我が子を撫でる。

「だって私‥今まで死んでいたようなものですから。」

「‥‥目が覚めたらきちんと話すんだぞ。」

「分かっていますよ。」

私がローズを置いていった訳。

きっとなんて父だと嫌われるかもしれない‥‥‥いや、それは嫌だな。


‥‥もしもこの子が死んでしまう様なことがあったら。

そんなの私が死ぬ方がよっぽど良いに決まってる。

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