北の国の国王様
この日、私の悪役令嬢シナリオに一つ追加された。
6・アルの不死の呪いをとく
「‥なんとしてでも。」
アルの悲しそうな顔はもう見たくない。
「お嬢様、出発のお時間です。」
メアリーに呼ばれ私は北の国へと足を踏み出した。
ガタガタと揺れる馬車の中。
ゾルがふと口を開く。
「‥悪魔様と話、できました?」
ゾルが言わなかったら私が知ることのなかったアルの話。
「‥ええ、私の悪役物語に新たなシナリオができたわ。」
そう答える。
「‥前も気になったんですが、ローズ様は悪役なんですか?」
首をかしげ不思議そうに問う。
「え、えぇそ、そうよ。私は悪役令嬢のローズなのよ!」
そう自信満々に答えると隣のメアリーが肩を震わす。
「んんっ、ゾル様、お嬢様は悪役を目指しておられます。貴方はそれの補助をしっかりお勤め‥ふっ‥ください。」
‥‥なぜ途中で笑うのメアリー。
「‥ローズ様が悪役‥ですか‥‥ぷっ‥」
「は」
なぜ笑う。小馬鹿にされた気がする。
「何か不満なのかしら、メアリー、ゾル????」
「「何も。」」
こんな時だけ呼吸を合わせるのだから。
ひとしきり笑ったあとゾルは口を開く
「ふふっ‥貴女に悪役は似合わないと思ったんですよ、貴女は真っ直ぐで優しすぎるから。」
ふわりと髪の毛に触れられる。
「貴女は物語のヒロインの方が似合ってると思います。俺は。」
髪の毛に口づけが落とされる瞬間。
何かが甲高い音を立てて鳴る。
『‥‥しつ、礼しま、す。ローズ様、聞こえますか?私、エルマーです。』
小さな魔道具からエルマーの声がする。
「っえぇ!聞こえるわ!」
助かったと言わんばかりに鷲掴みした手のひらに収まるサイズのこれ。
これは出発前にエルマーがくれたこの魔道具。魔道具はエルフが作るのを得意としているものであり、魔法を込めて作られる物だ。これは通信機の役割を果たし、どんなに離れていても連絡ができるという優れものだ。
『良かったです。これならいつでもお話ができそうですね。』
優しい声が馬車の中に響く。
「えぇ、素敵な物をありがとうエルマーさん」
『いえいえ、ローズ様のお力になれたなら光栄です。‥‥それより、ローズ様。』
緊張した声へと変わる。
『北の国にはあなた様の父ぎみがおられると思うのですが‥』
‥‥そう、私が北の国へ行くのに不安に感じていること。それは父がいるからなのである。
今から私は北の国王に謁見する。
聞いたところによると父はもう既に魔法使いの長をしているということ。
国王と会うのだから側近として父がそばにいる可能性は非常に高い。
会ったとしても私のことを娘だとわからないかもしれない。
分かったとしてもすぐに母の敵討ちに殺されるかもしれない。
「‥‥父は私を恨んでいるはずだわ。一目見た瞬間殺されるかもね。‥でも、私は貴方に言ったように北と西どちらも助けたい、それには北の国の力も必要だもの。」
なんとしてでもやりとげる。絶対に。
「‥‥ゾルは戦えるかしら?」
父は私を見つけた瞬間殺しにかかるかもしれない。
戦力があるに越したことはない。
「戦いはあまり得意じゃないけど‥まぁローズ様をお守りできるように頑張りますよ。」
ずいっと横からメアリーが顔を近づける。
「お嬢様、私も戦えます。魔法それに剣術にも自信がございます。」
どこからともなくアルが現れる
「僕も、ローズには指一本触れさせないよ」
にこりと笑う。
「‥うん。皆、宜しくね。」
こんなにも味方がいることが心強いのかと勝手に頬が緩む。
「くぅ、僕の愛し子かわいぃ‥」
と何故か心臓を抑えるアル。
‥不死でも体調は悪くなるらしいので心配だ。
「‥‥というかそもそも、あの方がお嬢様に手を出すなんてあり得ませんが‥」
ボソリと呟かれる。
「‥?なんて?メアリー」
「‥‥悪い虫は取り除くと言いました。」
気持ちは嬉しいけどメアリー‥主の父を虫呼ばわりはどうかと思うわ‥。
「でっっっか‥」
大きな宮殿。広すぎてもはや何がなんだかわからない。
「お嬢様、言葉遣いを‥」
「‥ご、ごめんなさいあまりにもで‥大きくて。」
「ほんとですね、こんな大きいんですか‥」
感無量の二人とは裏腹にメアリーは着々と王宮へ行く準備をする。
「行きましょう。皆様待っているはずなので。」
「‥良く来たな。ローズよ。」
‥‥ドラゴンだドラゴンがいる。
何を言ってるのかわからないって?
そのまんまよ。
鋭い眼光に、人から発せられるとは思えない威圧。
とても人間とは思えない。
(11歳の子供に向ける圧じゃないでしょうが‥!)
心で悪態をつきながらお辞儀をする。
「国王陛下におかれましては‥」
「よい、我はそういう挨拶は好まん。」
「さっ、左様ですか‥」
ゆっくりと顔を上げてみる。
目線をキョロキョロと動かす。
王の周りには家臣や警護の者がいる。
エルマーから聞いた父の外見に一致する人はいない。
銀色の髪につり上がったグレーの瞳。
‥‥やはり会いたくないから居ないのだろうか。
ぎゅっとドレスを握る手に力が籠る。
‥違う違う。私は父に会うために来たんじゃない。
「‥国王陛下。いきなりですが私のお話を聞いてくださいますか。」
見てなさいドラゴン国王。(勝手な命名)
私の素晴らしい提案で貴方を驚かせてみせるんだから!
それから私は魔物の氾濫と魔法石の使い方については色々なことを話した。
魔法石についてはエルフであるゾルが詳しく説明してくれたことにより信憑性が増した。
ざわざわと王の周りの者が騒ぐ。
「‥なるほど。それでお前は我々に魔法石の提供を願いたい‥と?」
流石は王。話が早くて助かる。
「えぇ、そうです。国王陛下。」
「ふむ‥それに我が応じる義理はないのではないか?」
‥‥‥ほんとどこの国王陛下も私をイラつかせるのがお上手なようで。




