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愛してるよ

「‥え?それはどういう‥‥」

「‥ここから先は彼に直接聞くべきだ。貴女にはその権利がある。」

「なんの話をしてたのローズ?」 

エルマーとの話が終わったのだろう。いつの間にかこちらに来ていたアルに驚く。

「っえ、えっとね、」

言葉が詰まる。ゾルの言ってた意味が分からない。

死ねない‥?私がアルを殺さない限り?

「悪魔様‥ローズ様に説明すべきことがあるはずだ‥‥。」

ギロリとゾルがアルを睨み付ける。

「‥んー?何のこと?僕、分かんないなぁ」

「っぁ、アル!」

大きな声でアルを呼ぶ。

「‥なぁに?ローズ。」

「説明‥して。貴方が私の味方なら。」

アルに駆け寄り服の裾を掴む。

「‥仰せのままに、僕の愛し子。」


結局この日はエルフの村で一泊させてもらい次の日の早朝に北へと向かうことにした。


月明かり照らされた少年は不服そうに言う。

「‥‥‥あーあ、めんどくさいことしてくれちゃって」

あのゾルとか言うエルフ。今までの死に戻りではここまでローズに介入することはなかった。

‥物語が変わっている。確実に。

「もうそろそろかな‥‥」

月明かりに照らされた瞳は赤くギラギラと揺れていた。



「‥月が綺麗ね。」

村を一望できる丘の上。アルは月明かりに照らされていた。

「‥ずっと月を見ていたいな。ローズ。」

ふと、アルは口を開いた。くるりと振り替える。赤い瞳がかち合う。

冗談に付き合う暇はないと睨み付ける。

するとアルは居心地が悪そうにポツポツと話始めた。

「‥‥昔話をしようか。」




700年前、天使と悪魔は争いを始めた。

そんな争いを神は面白がった。まさしく愉悦の神とでも言うべきだろう。

天使と悪魔の争いが終わりを迎えはじめた頃。

神は芝居を見たあとの代金のように、天使と悪魔に永遠とも言える命を与えた。

しかし、そんなのは褒美でもなんでもない。神はアンコールとでも言うように天使と悪魔の舞台に新たな物語を作り出した。

初めは皆喜んだ。永遠の命は魅力的だ、と。

怪我をしても死なない。何度でも戦える。死んだのに死なない。

しかしこんな淡い夢は直ぐに壊された。

死にたい。死ねない。苦しい、痛い、何故まだ生きているのか。

段々と彼らは死ぬことを恐れ争いを止めた。

そんなのはつまらない、とでも言うように神は彼らに救済を与えた。

条件が揃えば死ねると。

『天使は愛するものの体に乗り移ってその体で死ぬこと。

悪魔は愛するものの手で憎まれながら殺されること。』

「心から愛するものを自ら殺すか。心から愛するものに殺されるか。君たちはの選択を見せてみよ。」


天使は絶望した。愛するものと無理心中を働くような死に方を。

悪魔は絶望した。愛するものに嫌われ憎しまれて死ぬことを。

‥‥まるで呪いだ。と誰かがいった。




「人間は天使に愛されると長生きするっていうけどね、それは天使がその体を大切にしたがるからなんだ。逆に悪魔は相手に恨まれるためあの手この手で嫌われようとする。だから短命になっちゃうのかもね。‥‥愛してしまったが故に。」

「っ‥アル。」

彼の名を呼ぶと彼は悲しそうに笑った。

「‥‥数百年生きてみた。その間病気はするし怪我もする。そのうち何人かの仲間が死んだ。本来なら悲しむんだろうけど、僕は羨んだ。‥‥狡い、僕も、早く楽になりたいって。」

アルは月へと手を伸ばす。

「月みたいに僕は死から遠く離れてる。あんなに綺麗なのに、触れられないなんて残酷だよね。」

「あ、のね‥」

「‥‥ねぇローズ。僕は君を愛してる。」

それが何を意味するのか。

分かっている。分かってしまった。

「‥‥だから、僕を嫌いになって。恨んで恨んで‥‥僕を、殺して。」

‥‥アルの笑顔は今すぐに消えてしまいそうなほど儚かった。







その夜。私は夢を見た。

牢屋の中で舌を噛み切り血を流す私。

会場の真ん中で首を切る私。

怒り狂いひたすらに何かに剣を振り下ろす私。

色んな私が死ぬ夢。

これは記憶じゃない。確かにあったことなんだ。

忘れてしまった私の記憶。

そうだ私が死んだのはこれが始めてじゃない。

でも、何も思い出せない。

頭の中で霧がかかったように大事なことが思い出せないのだ。


『ごめんなさい。』

誰かが謝る。

ポタポタと頬に水滴が落ちる。

泣かないでと言いたいのに声がでない。

‥‥誰?お願い泣かないで。私は大丈夫だから‥‥

『‥‥愛さなければ良かった。君じゃなければ‥』

ゆっくりと目を開ける。

赤い瞳に雫が溜まっている。

『愛してしまって、ごめんなさい』



がばりとベッドから飛び起きる。

あれは夢じゃない。

現実で起きたことだ。

「‥おはよー、ローズ。」

居心地が悪そうにそわそわしているアル。

「‥アル。私は貴方を助けたい。」

深紅の瞳が見開かれる。

「‥そっか。じゃあ僕のこと殺してくれる?」

「‥私は悪役令嬢よ。貴方の思いどおりにはなってあげない。だから、貴方の呪いは私がといてあげる。」

にこりと笑って見せる。

すると深紅の瞳は弧を描いた。

「それでこそ僕の愛し子だね。悪役令嬢のローズ・ヴェルナー。楽しみにしてるよ。君の物語を。」

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