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ヴェルナー

「ひとつ‥貴女に聞きたいことがございます。」

「‥何でしょう?」

ここから先一つでも選択を間違えればこの取引はなくなりエルマー達が死ぬ未来へと向かうかもしれない。慎重にいかないと。

「‥どうして‥貴女は我々にこのような情報をくださったのですか?それこそ南の国でこれを広めれば貴女は革命の母として扱われるでしょうに。」

「‥そうね、確かに南は力が全ての国。でも、私はそんな国嫌いなの。」

力なき者を虐げ嘲笑う南の国が嫌い。

「‥私は私が助けたい人を助ける。私は悪役になるけど、悪人ではないもの。もう、弱いままは嫌」

エルマーと目を合わせゆっくり言葉を紡ぐ。

「私が貴方に知識をあげる。変わりに貴方は力を貸して欲しい。‥生きるために。」

じっとグリーンの瞳を見つめる。

「ふっ‥ふふふっ‥えぇ分かりましたローズ様。貴女と取引をします。」

エルマーは跪いて私の手を取った。

「南の国妃、ローズ様と‥‥」

「まって、」

契約を始めるエルマーを止める。

「‥‥?いかがなさいましたか?」

「これは南の国の妃としての契約じゃない。

私の‥ローズ・ヴェルナーとしての誓い。私が取り戻すヴェルナー商会の誓い。絶対に損はさせない。」

エルマーは目を見開き可笑しそうに笑う。

「かしこまりました。ローズ様。‥ローズ・ヴェルナー。ここに誓いを。私は貴女に力を貸すことを誓います。」

ちゅと可愛らしいリップ音が手の甲から響く。

「‥っ!わ、たしもここに誓うわ。」

顔を真っ赤にしながらなんとか誓いをした。

しばし目と目を合わせる。

にこりと微笑まれ ぁ、とかぅ、とか意味のない言葉を発するしか出来なかった。

「「長い」」

ベリッとメアリーとアルにより引き剥がされた。

正直ここからどうすればいいか分からなかったから助かったけど。

未だに人との距離感を上手く掴めない。

早く慣れないとパーティーでずっと顔を赤らめることになる。

メアリーが私の手の甲を布で拭き取る。

‥‥失礼に当たる気がするのだが。

「それで魔法石なのですが‥」

「それなら私が今から直接北の国に交渉に行くわ。」

いくら知識をあげたところで物がなければ意味がない。

「‥任せてください。私はヴェルナー商会ですから。損はさせないわ。」

にこりと笑って見せる。






本当にそっくりだと思う。

数年前突然現れた彼。銀髪の髪にグレーの瞳の男。

「私がヴェルナー商会を引っ張る。だから貴方には私の力となって欲しい。損はさせない。」

どこまでも真っ直ぐで逆らえないような威圧感。

彼だったから契約した。

ヴェルナー商会のライム・ヴェルナー。

彼は突如としてあれ程愛した商会を弟ぎみに渡し、北へと行ってしまった。それゆえヴェルナーとの縁は切れたと思ったが‥



「腐れ縁‥というものですかね‥」

「え?何か言いましたか?エルマーさん?」

ボソリと呟かれた言葉を聞き取ることが出来なかった。

「いえ、何でもありません。それより、今から北の国へ行くのであればぜひゾルを連れていってください」

「‥えっ?おっおれ?」

ゾルが慌てた様子でエルマーを見る。

「ゾルはエルフの中ではかなり頭が回る方ですし、何よりエルフがいた方が魔法石についても話しやすくなるでしょう。」

エルマーさんの意気な計らいだ。

「では、遠慮なく。ゾルさんよろしくお願いしますね?」

「‥拒否権とかないんだな、了解です‥」


馬車の方へと戻りサクサクと草原を踏む。

「‥ローズ様。魔法石についてなのですが‥あれはご自身で調べたのですか?」

‥来ると思ったその質問。

発案者は貴方だ。というわけにはいかないので私は前もって答えを用意していた。

「‥いえ、魔法石については私の悪魔‥アルに教えて頂きました。」

「‥えっ」

(アル‥ここは話をあわせて‥!)

パチパチと片目をつぶって訴えてみる。

「‥お嬢様、目が変ですね」

(違うメアリー‥いやそうかもだけど‥違うわメアリー。)

「ぁー‥うん、そうだよ、僕が、教え、た、んだ‥」

(カタコト過ぎるわアルっ‥)

「‥そうなのですね‥流石は悪魔様‥」

(よかった騙されてくれ‥)

「ほんとに悪魔様が教えたんです?」

(ゾルーー!!)

エルマーのお墨付きなだけあって頭が良く回るようだけど‥今じゃないっ‥

「‥んんっ、前から魔法石については不思議なことが多かったからね。何百年も生きてるんだ。暇潰しとして調べてみたんだ」

‥そういえば、アルって今何歳何だろう。というより、私はアルのこと何も知らない。

いや、知ろうともしていなかった。



馬車についた頃アルとエルマーは二人で話始め、メアリーは旅の支度を始めていた。

ゾルと私は二人取り残されていた。

「‥ゾルに聞きたいんだけど、悪魔ってどのくらい生きるの?」

ただの純粋な疑問だった。数百年を暇潰しとして生きるのだから、彼らは相当長く生きるのだろう。

私を愛してくれた彼を置いて死ぬことになってしまうのかと考えると少し胸が痛む。

ゾルは目を見開き言いづらそうに答えた。

「‥そっか、人間は数百年前のことを知らないのか‥」

‥百年単位で生きる種族と人間を比べるなと言いたかったがそんなこと言える雰囲気ではなかった。

彼があまりにも深刻そうな顔をするから。

「‥‥ローズ様、悪魔である彼は死ねないんですよ。‥貴方に殺されなくちゃ。」

‥‥本当に私は彼について何も知らなかった。

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