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魔法石

私が13歳になった頃。王宮の門から叫ぶ声が聞こえた。

「どうかお力を‥!兄が‥皆が死んでしまう‥!」

「お引き取りを、西の者。魔物の氾濫も、貴殿の国の者の死も、我々には関係のないこと。」

門番は冷たく言い払う。

「待ってください‥一体どうなされたのですか?」

何が起こっているのか気になり話しかけてしまった。

そう問うと耳の長いエルフはすがり付くように言った。

「お、俺ははゾル・ローヤと申します!突然の訪問で失礼かと存じ上げますが貴女の力を貸してほしいのです!今、西の国ではっ、魔物が、」

「そこまで。」

手のひらで視界を遮られる。

「っ、旦那様‥」

「ローズ、こんなとこで何してるの?スートが探していたよ。」

「しかし、旦那様‥今西の国が、」

すっと目が細められる。

「大丈夫だよ、ローズ。僕達には関係のないことだから。」

そう言われてしまえば私は何か言い返すことなんて出来ない。

「ローズ様っ!見つけました!!何をしておられるのです!講師がお待ちですよ!!」

スートに引きずられていくときに見たゾルの顔。

焦り、絶望、怒り、全てが複雑に絡んだあの顔が忘れられなかった。


魔物の氾濫が落ち着いた頃私は西の国の死亡者リストを見た。

あのエルフの行方が気になったからだ。

「‥違う、これでもない‥‥」

決して彼の名前が乗っていないようにと願って。

しかし、現実は残酷だった。

「ゾル・ローヤ‥魔物討伐中に死‥亡。

‥そ、んな。」

あの時私に力があれば。彼は死ななかった。 

そして別の紙に大きく書かれた名前。

「‥‥‥エルマー・ローヤ‥死亡。魔法石を用いた戦略により、魔物討伐に大きく貢献したとしてその栄誉を称える‥。」

きっとこの人が彼の言っていた兄だろう。

「‥強く、ならなくちゃ。」

私はそう決心して魔法の練習により一層力を入れた。





「ゾル、そう、貴方が‥」

私が助けられなかった。でも、今回は必ず全員救って見せる。

「‥ゾル・ローヤ。人の話しは最後まで聞きなさい。」

声のトーンを落として話す。

ゴクリと息を飲む音が聞こた。

「確かにただの石ころでは誰の命も救えないわ。でもこれはただの石ではない。‥‥着いてきて。貴方達が納得するようなものを見せてあげる。」

にこりと微笑んでみる。




「‥本当にここなら大丈夫なのね?」

見晴らしの良い草原。誰も来ない上に多少壊しても良い所へと連れてきてもらった。

「はい。しかし、このような場所で何をなさるおつもりで‥?」

不安そうにエルマーは首をかしげる。

「見ていれば分かるわ。エルマーひとつお願いがあってね‥」

手のひらに握っていた魔法石を出す。

「‥これにエルフの魔法をかけて頂戴」

ふわりと風が吹くとともに私の首筋に刃があてられる。

「やはり、ふざけているのか‥一度使った魔法石は‥」

「ただ魔法をかけても同じようには使えない。そのくらい分かってるわよ。」

呆れたように言うとゾルは剣を下ろし、ばつが悪そうに言う。

「‥そ、うか、ならなぜ?」

「‥エルフの魔法。それは付与魔法よね?」

エルフは付与魔法を得意とする。本来前線に立つ魔法を得意とはしない種族だ。しかし、付与魔法の腕ならどの種族にも負けない。

「そもそも魔法石は魔法を使えるようになるものじゃないの。魔力・魔法の効果を増加させるものだったの。」

これはエルマーが未来で発見したことだ。

本来ならもう少し先の未来でエルマーが発見することだったのに、功績を奪ったみたいで居たたまれない。

「そのようなこと、聞いたことがありませんね。」

と、発見した本人が言う。

「‥私も聞いたことがございません。」

‥目が死んでいる。

「‥実際に見てみた方が早いですね。これに身体強化の魔法をお願いします。」

エルマーさんに差し出すとこくりと頷き詠唱した。

『‥身体強化、付与。』

キラリと石が光る。後は‥

『コーティング』

「今、何で闇魔法をかけたんだ?」

ゾルが首をかしげて問う。

「付与魔法に魔法をかけるとね、繰り返し使えるようになるんです。‥見てて。」

手に魔法を握りしめる。

『‥フライ』

地面を蹴りあげると高く浮遊しメアリー達の頭が見える。

「そして‥『穿て‥!』」

殴り付けるようにして腕を振りながら地面に向かって魔法を放つ。

ドンと鈍い音がして煙が立ち上る。

「「‥あ」」

「「えっ」」

私とメアリー、ゾルとエルマーの声が重なる。

「じ、地面が‥‥!!」

えぐりとられたようにへこむ地面。

「‥‥ど、どう?これが魔法石の力。」

思ったより破壊力が強かった。もうすこしでここら一帯が消し炭になるところだったのだ。

「‥‥凄い‥これが‥」

まぁ結果的には魔法石の凄いところを見せられたのだ。

ふふん、と得意気に上から見下ろす。

両手を口にあて声を大にしてメアリーが叫ぶ。

「‥お嬢様ー、大変素晴らしいーです。それとお嬢様ー、大変良く見えていまーす。」

「‥へ!?」

ドレスできたのは間違いだった。押さえてみるがたいして効果はないだろう。

「みっ‥見ないでください!!見上げるの禁止!!」

あわあわとしているとふわりと優しく抱かれる。

「僕の愛し子は暴れん坊だね。いくらここなら大丈夫だからって地面をえぐりとるのはどうかと思うよ‥?」

「あ、アル!!」

にこやかに笑って私を横抱きにしてくれた。

‥‥これなら下から見えることはないだろうと安堵する。

「だ、大丈夫よ、アル。加減はしたわ!だってほら土地が消えてないわけだし。」

「‥‥加減しなかったら土地が消えるわけだね。‥‥闇魔法使うの上手くなったね。」

ふわりと地面に下ろされる。

「‥ありがとうアル。」

‥‥何故そんなに悲しそうな顔をするのか分からないけど。

「ローズ様‥一体これは‥」

エルマーが慌てた様子で駆け寄る。

「今見て頂いたように魔法石に付与魔法をし、さらにその上に魔法をかけることで魔法石は強力な力を発することができるうえ、魔法がコーティングとなり、繰り返し使えることが出来るようになります。しかし上から魔法をかけない場合魔法石は魔法を発動したあと砂になります。」

この現象は何故起こるのか分からないけど‥

「‥‥なるほど‥」

「もう一度、言いましょう。エルマーさん。私は貴方と取引がしたい。」

アピールタイムはおしまい。後はただ祈るのみ。

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