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 mission19:事件の真相に迫れ!


 会場は、カルロス御用達のあの酒場を用意した。


 ここは昼間は空いていないらしいので特別に開けてもらって、私は彼らを先に待った。(作戦が功を奏し、売り上げがあがったことで、女将さんに気に入られたのがよかった。)


 フロリーと私、その二人だけであの因縁の集団を前に相手する。

 フロリーはあの事件を思い出し不安で震えながらも、決して私の腕を離そうとしなかった。


 「大丈夫よ、フロリー。今日は面接だって言ったでしょ?物騒な事なんてないわ。」


 「いいえ、あの人達の事です。相手がアメリア様だとわかったら、何をしてくるか分かりません。その為に私がお守りします!」

 

 彼女の必死な思いが、その握り締めた手から伝わってくる。本当は私も不安で仕方ないけれど、今回はやり合わずきちんと話ができる状態でなければ真相には辿り着けない。聞き出す為に聞き出させる策を練らないといけない。それは私自身を甘く見られないようにしなければならないということでもある。

 その緊張感がまるで現代の戦さ場に立つ感覚を思い出させる。


 ーカランカラン


 乾いた空間に響いた入室音。鐘の音に私はフロリーと一緒に立ち上がる。

 彼らのお出ましを期待して扉を固唾を飲んで見つめた。


 そして、ゆっくりと入ってくるその姿を見て、驚いて息をするのを忘れるほど二人して目を丸くした。

 長いマントを歩くたびにはためかせ、堂々と歩みを進めて近づいてくるその出立。

 まるで獅子のような勇ましさに、白馬のような品のある眼差し。


 まごうとなき、ペンタゴス指揮曹長、マーク・キュリーだったのだ。


 異世界でも群を抜く美青年が私のもとにゆっくりと向かってくる。 

 艶やかな黒髪、鮮やかなブルーの瞳、鍛え上げられた肢体と、華やかなオーラ。


 私はスローモーションとエフェクトに囲まれた彼を見て、高鳴る胸がゆっくりとなり始めるのを実感する。


 「はじめまして。アメリアお嬢様。」

 後光が刺すエフェクト付きでマントをさらりと横に流し、彼が目の前に立った。

 そう、今まさしく正真正銘の「北の怪物」、マーク・キューリー伯爵が登場した。


 まさかの、二度目の立ち会いがこんな古びた酒屋で唐突に訪れるとは!

 そしてこんなにイケメンだなんて!残念な気持ちと変な緊張感で頭が混乱しそうになった。


 「マーク伯爵様、ど、どうして、あなたが・・・。」


 彼は優しく微笑み紳士としてお手本の様な挨拶で首を垂れた。そして一度下げた目線がもう一度私に向けるとその眼差しは余裕の中にも鋭い瞳孔を輝かせている。

 私はその佇まいに、余計に恐ろしい想像を一気に膨らませた。


 (ど、どうして?なぜ今ここに彼がきているの?!)


 丸腰の私は息を飲んだ。あの日の事件以降、彼に正体を疑われているからだった。その証拠に、あの事件以降、なんの面識もない私に何度も、何度も、謁見要請を送ってくる。その理由はたった一つ・・・正体がばれたということ。

 

 (あの時、物的証拠が残らないようにしたはずだけどこの目立つ赤髪を見られたんだわ。きっと今日私は・・・こ、殺される!)


 固まった私に容赦なく近づき、マークは静かに私の手に触れると、上体を屈ませ静かに甲にキスをした。


 そのまま上話目使いの彼が一言。


 「ようやくお会いできましたね。・・・それに、私のことをご存知でいらっしゃったのですね。

 とても、嬉しく思います。」

 と、それはとてもとても安堵した表情で笑いかけた。


 (あ・・・終わった・・・。この満面の笑み間違いないわ!私完全に犯人としてとロックオンされてる!)


 「この様な形に、お会いすることになり申し訳ございません。ですがアメリア様はとても忙しい方とのことで、残念に思っておりましたが、今回、我が所属部隊のことで面談されると聞いて飛んでまいりました。」


 「ー・・・。」

 (隠していたのに!あの酒豪やろう!)


 「やはり、急なご挨拶でお困りですよね?」

 まるで飼い犬の様な、寂しそうな甘い眼差しを向けている。この間に一見の鋭い眼光は見る影もない。

 私は、慌てて返答した。

 

 「い、いえ〜。今回ペンタゴスに所属する前の騎士たちの面談ですので〜わざわざ、マーク伯爵に御足労いただくても良いのですよ。それにここは一時面談場所に取り急ぎ用意いした酒屋です。

 面談をうける騎士も、元は私どもの所属兵ですので、至って身内の会ですので伯爵様の御手を煩わせるわけにもいきませんわー。最終面談は後日開かれますので、それらに参加していただくだけで結構です〜。


 さぁさお帰りになってください〜」


 

 「そうですか、ですがそれは承知の上でまいりました。お嬢様のお気遣いはありがたいのですが、一次面接時点で有能な騎士を選択できなければ最終面談もする意味がありませんから、私は最初から参加させていただきます。」


 そう言って、彼は近くの椅子に座った。

 (イヤイヤ。何急にすんとした表情で椅子に座ってるのー!?困るわ!今日はあの日の火事の事件で問い詰めないといけないことがあるのに!)


 「伯爵様、今回の面談は我が一家の内情も含みますゆえ、少々込み入った話も予定しております。

 ですので、我が家の醜態を伯爵様にお見せすることはできません。改めて騎士入団試験をとり行いますので、今日はお帰りいただいてよろしいでしょうか。」


 だが私の言葉はマークには通らなかった。彼はすかさず首を横にふった。 


 「いえ、辞職部隊の者も、今はただの徒食者だと聞いています。実は、今日、一人ウチの訓練所に来た者がいました。ですが騎士とは思えないほど無礼な態度で押しかけてきました。あのような者たちが大勢集まったこの会場でたったお一人あなたがご対応されるのは非常に危険です。」


 (なんてこと!ただでさえ評判を落としている我が部隊は、もうすでにそんな醜態まで晒しているなんて!)


 「それに・・・」とマークは続けて発した。


 「それに・・・?」


 彼はふとポケットの中に手を入れ、中でカチャリと金属音がなり、ある物を取り出した。

 

 「こ、これは・・・」


 「事件捜査を行う際の、録音機です。」


 「・・・なぜですか?!」


 「はい、これで彼らの発言を録音できましょう。さすれば、いつかそれが必要になった時の手助けになるはずです。」

 

 私はここまで彼の話を聞いて、差し出せれたアーチファクトを目の前にして、彼が私と部隊の因縁を知っているのだと分かった。それほどこの魔道具がこの状況に一番最適な差し出しものなのがいちばんの証拠だ。


 (この世界にきて、初めて助けを求めていないのに、手を差し伸べてくれたのがマーク伯爵、あなたなんて・・・。)


 「・・・知っているんですね。彼らと私に間に何があったか。」


 「はい、失礼ながら以前お会いした執事に、貴女と解散した部隊について殿下が事情を知りたいとお伝えしたら、全てお話ししてくださいました。」

 

 (ん?ウチの使用人と会った事あるの?)


 「この方法はアメリア嬢、あなた様に教えていただきました。」


 (この方法?私の教え?何のことを言っているの?)


 私はその言葉に疑問を抱きながらも、またもイメージとは似つかわしくない和やかな見つめる彼の視線が怖くて何も聞けなかった。


 (仕方ない、すでに今回の目的の真意を知っているのであれば、ここで無理に彼を帰らせることはできないわ。)


 「・・・わかりました。ですが今回知り得た内容は決して口外しないと誓っていただけますか?」


 「はい、騎士の名の下において誓いは守ります。」


 手を胸に添える所作をして彼は頼もしく微笑んだ。私はその笑みを見て一瞬心のトゲがふっと解れるのを感じた。


 そして・・・・


 そんなやりとりも束の間、ドカドカと騒がしい様子で一斉にかつての団員たちが入ってきた。


 驚くことに、面談だと聞いているはずなのに、彼らはまるでこの飲み屋客かと思うほど、非常にラフな格好で現れ、伸びた髭・手入れされていない髪登場したのである。


 「おやー。アメリアお嬢様、ご無沙汰しておりますwww」

 私への挨拶を品位にかけ、皆が薄ら笑いでやり気の感じられない態度。

 ペンタゴンの面談を前提にしている会で似つかわしくない格好。


 (たった2ヶ月でここまで落ちぶれるなんて。しかもわざわざあんたらのためにこの機会を与えてあげている私に会釈程度の挨拶で済ますなんて!とことん腐り切った部隊ね!)


 怒りから火が吹き出しそうになるのを抑え、私はだらしなく座る彼らの前で、会を取り仕切った。

 だからと言って私は令嬢、立ち上がることはしない。そのために、壇上にして作っておいた椅子に座って指揮した。



 「お久しぶりね。貴方達、元気にしていて?」


 「元気も何も!いきなり解散を言い渡されて元気になんていられませんよ!」


 そうだそうだというヤジが飛ぶ、すると大きい舌打ちがアメリア嬢の後ろから聞こえ、彼らがまじまじとその後ろの正体を確かめて、血相を変えた。


 「や、ヤバイぞ!アメリア嬢だけだと思ったら、あのマーク・キューリー伯爵が監視役だ。ここで失礼な態度を取ったら、ペンタゴン再就職は愚か、生きてここから帰れる保証がねぇ!」


 「そ、そうだな!お、大人しくしとくのがいい。」


 急に示し合わせたかのように、皆が椅子から腰を話し、姿勢を正した。


 舐められてはいけないと思っていた私の思惑がこのような形で叶うとは、正直心底腹立たしい。だが、いったんこの状況を流すことにした。


 「それにしては、以前より体格が出産期の牛のような者もいるじゃない。いいものを食べて呑んでいるみたいだけど。」


 「う・・・・」


 彼らは、苦々しそうに見つめあっている。だが依然として、態度は横柄である。


 「私たちはとんでもない程の屈辱を受けたのです。多少の心の平穏のために必要なことはなんでもしました。

 そう、私たちはいわば被害者です。」


 (なんですって?あなたたちが被害者?!)


  

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