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 mission18;因縁の相手を呼び出せ!

 だが、これだけでは、ただ長期戦ができるようになったというだけにすぎない。

 

 これで数十杯稼げたとして、毎回お馴染みの3人で酒場に来ることを知っていた私は、試合をしない監視役の二人が厄介だった。

 だからこそ、こいつらも一緒に賭けジェンガに巻き込み、潰そうと考えた。

 その為の「エールジョッキお手つき作戦」だ。


 使える策が増えると、人間は使わずにはいられない。それで有利に立てると知っているのに、使わないという選択肢がないからだ。

 実際に、そう思わせるルールを提示した。

 今回、この酒を捨てる行為を後ろの二人にバレると私の負けが確定する。それを避けたかった。

 また試合が白熱する中で、彼らが素面で一挙手一投足試合を見守られては、私の精神的ダメージにもなる。


 二人の監視が疎かになってこその作戦スタートだ。

 その為には、一気飲みをさせることで、腹がパンパンになり効率よく酔わすエールジョッキが最適だ。

 しかも二人がこのエールジョッキを呑めなくなったら、代わりに飲むのはカリウス。

 同じ酒をショットという少ない量で飲む私と、アルコール度数は低くても、ちゃんぽんで大量の酒を飲むカリウス。

 どちらが酔いが回りやすいかは、一目瞭然だ。


 二人がこの提案に乗ってくれたおかげで、屈強な男たちとの飲み比べを見事に制する事ができたのだった。

 しかしながら、しんどい戦いでもあった。


 「それで?どういう事だ。マーク家の衛生兵をペンタゴンに加入させろとは。」

 水を飲み、冷静になった彼が抵抗の意思のない眼差しで私に純粋に問いかけた。


 「あぁ、俺今、マーク家で働いているんだけど、なんだか内輪揉めで突然部隊を解散されたらしいんだよね。

 推薦状も出してもらえなかったらしく、皆行く当てがなくて困ってる。そいつらを募集を詠って集めてほしいんだよ。」


 「なぜ俺らが・・・マーズ家は代々由緒正しい家系だろ。騎士家系なのに、不義理だなお前の主人は。

 そいつらがやれば良いじゃないのか。」


 「できないから、今あんたに言ってじゃん。ん?やるよね?!」

 私が首をは締める動作をしてみせると、カリウスはうっと声を漏らして露骨に嫌そうな顔をした。


 「わかったが、なんだ。二次選考要項って。」


 「ちょっと、あいつらが他の部隊に移る前にタイマン貼らなきゃなんない人がいるから。一次面接って事で」


 「一次面接・・・?」

 3人は顔を見合わせ、首を傾げた。私は、その真ん中で、次の一戦に闘志を燃やして、腕を組んだ。

 

 (ようやくあいつらとタイマンだ・・・。待っててねアメリア!私が真相を暴いてあげる!)



 ・

 ・

 ・

 

 「くそ!どうゆう事だ!あの、怪物め!」

 パリーン!と、盛大に床に叩きつけられたグラスが割れ、床に赤黒い染みが広がっていく。

 パウロ男爵は、今回も失敗するはずのない簡単な作戦ミッションが、またも惨敗と期し身震いがするほど逆上した。

 

 隣国の男からの報告によると失敗の原因は、1つ目、雇った下っ端がヘマをして石に足をつまづき悲鳴を上げた事。

 そして、2つ目にアメリアが近衛兵ではなく、北の怪物と遭遇した事だ。

 これは隊が使用している探査機の情報を不正に入手した事で、出てきた事実だ。間違いない。


 (最初は、アメリアが裏切り、任務を果たさなかった事で失敗したと思ったがそうじゃなかった。あのマーズ伯爵の探査機にも、アメリアを追跡した形跡があった。彼女がマーズに見つかって追われていたが為に彼らを擁護する任務を遂行できなかった。そして万が一捕まったとしても、全て彼女のせいにする裏計画も・・・なんという誤算!


 だが、なぜあの辺境伯がこの首都に・・・。今度こそ、盛大にこの国を窮地に貶めてやる!)


 彼は、水晶を取り出すと、早速例の男を呼びつける。

 彼は程なくして姿を現し、水晶の向こうで微笑んだ。


 「ヤァ、潜入は進んでおられますか?」


 パウロは彼にそう声をかけた。

 「あぁ。面白いほど順調だよ。あそこの警備はザルだな。加えて無能な忠誠心のない奴らばかりで助かる。」


 「でしょうな。もう世襲制の力ではこの国は統治するのは時間の問題だ。この私のように新たな風を巻き起こすそんな人間だけが今後生き残っていくことだろう。」


 「その為にはまず民衆から。このような失敗は決して軽視してはいけません。今度は大々的に混乱を招かねば。」


 「わかっている。ちまちま種を植え付けるのはやめた。私が反乱を起こす!」


 誇らしげなパウロ男爵の言葉に男は二ヤリと微笑んだ。

 二人は早速、その計画を練り始めた・・・。





 ◇  ◇ ◇


 フン!フン!フン!フン!


 朝から誰よりも異性のいい発声と一振り一振り、空が裂ける強烈な一打を繰り返すのは北の怪物マーズ・キューリー伯爵であった。

 寒さを全く感じない環境のため、普段できない訓練を心置きなくできるためかまた彼の筋肉量が増幅している。日毎に彼の体が大きくなるのを、怯えた表情で周囲は見つめている。



 「なんであんなに張り切っているんですかね。」


 二番隊長のビューワット・デイーンは隣で一休みするカリウスにそうボヤいた。

 カリウスと日々訓練を指揮している彼だがその中で誰よりも、熱心に自主練する彼を見て、言いたくて言いたくて仕方ないことをとうとう口に出した。

 それは彼が客人という立場からようやく身内の人間になりつつあるという証でもある。



 「うちの部隊にまだまだ鍛錬が足りないと言いたいんだろ。休憩明けは今日は予定の10倍のメニューをやるぞ、出なければ示しがつかん!」

 「うっですよね;それにしても、なんか今日はやけに機嫌よく見えるのは私だけでしょうか・・・。」


 

 マークはそんな視線を向けられていることも知らず、最近の出来事に思い馳せていた。

 あの一件以降、彼はアメリアに会う為に申請書を出しているが、その返事が届くたびに愉快な日々を過ごしていた。満を辞して届く返事は、令嬢らしからぬ白紙で、敬意を表す挨拶文もなく、ただ一言「謁見不可」と書かれているからである。


 了承には一切の説明を必要としないものの、こと「断る」ことについては全ての理由が求められるこの日常で、理由を語るわけでもないシンプルな彼女の対応にこれまでの令嬢に抱いていたイメージとは一切重ならないそんな「アメリア嬢」に興味を惹かれる毎日だ。


 ここまで憮然としてあえない存在は果たして彼女が女性であることも疑わしくなるほど、清々しい。

 しかし、逢えないことで興味が湧く一方で、さらに会いたいと思う気持ちが日々増えていく。


 (なぜああも、断固として逢ってくれないのか。令嬢への友好的な誘い方とはどうしたら良いんだ?)


 マーク伯爵は、まるで夜の街頭に群がる虫のように、何もせずとも集まってくるそんなー女性ーという存在を気に求めていなかった今までの人生を初めて少し後悔した。

 このような時に、令嬢が好み話や引き寄せる口実が全くもってわからない上、てんで相手にされない状況が初めてだった。 

 彼が悶々と素振りを繰り返しながら、狂気に撒き散らしていると、ふと、入り口の警備兵が門の外の誰かと騒がしく口論する声が聞こえ始めた。

 彼はすぐさま門のそばまで向かう。


 「何事だ!君はそこで何をしている?!」

 

 門の外にいたのは、体格はそれなりにある男だ。だが髪はボサボサで無精髭で昼間から酔っ払いっている輩だった。

 そんな輩が相手を考えずに喧嘩腰に中に入ろうとしている。加えて何かを要求しているようだった。


 「あー、ちょうどよかった!お前、ここの部隊の人間だろ?これが俺に届いてたんだけど、この「選考要項」てなんだよ。俺はあの有名なマーズ家の部隊だぞ?!選考なんて必要ないはずだ!」


 静止されながらも、図々しく中に入ろうとするその男が掲げた薄紅色の便箋。その見覚えのある文に思わずその男のふみを奪い読み進めた。 そこには、


 ーマーク公爵家直属部隊を解散部隊の皆様へ 新加入する部隊の案内についてお知らせー


 と題して書かれた、やはりマークが最もよく知るある人の筆跡そっくりの字で書かれた案内状だった。



 「 この度皆様におかれましては、突然の解散にさぞ驚かれた事でしょう。

  今回、そんな皆様には、新部隊加入の選考会を特別開催致します。

  加入先は、首都中央本部統轄部隊「ペンタゴン」。

  今回、多数の御応募が見込まれる為、一次面接と二次審査を取り行います。

  ご希望の方は、身分証を持って下記会場にご参加ください。


  ※また一次面接にご来場されなかった隊員は、二次審査も自動辞退となりますのでご注意ください。

  二次審査はカルロス騎士団長の指揮に従ってください。


 と書いてあった。


 確かにここがペンタゴンで間違いないが、全くもって初耳の事態に、イライラを募らせ始めた。

 何より、直接アメリアの長文直筆の文を見て、嫉妬のような感情が湧き上がり余計に苛立つばかり、アメリア嬢がカルロスを知っていたことを初めて知ったマークは、怒りの形相で振り返り、カリウスを呼びつけた。


 彼は悲鳴を上げて、返事をする。慌ててかけよるカリウス。


 「マーク様。こ、これには深い理由が・・・。」


 「一体どういう・・・深い理由が・・・あるんだ・・・?」


 その顔面に「怪物」と称される彼の本性を強烈に理解した。

 その様を見た誰もが身内どころかまだずっと客人より遠い存在でいたいと思ったのであった。



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