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 Mission 12:北の化物から逃げ仰せ!

 

 「おい、この通りの探査機は反応したか。」

 近衛騎士の一人が眠たそうに同僚に声をかける。


 別の同僚も呆れた様に首を振った。

 「最近、この周辺で不審者を見たという報告が上がっているっていうから毎晩借り出されてるけど事件なんてそうそうあるのかね。」

 「まったくだ。すぐに僻地の感覚で話すもんだよ。北の化物は。ここは安全な首都だっつーのに。まったく。」

 彼らは、首都では実績のない北の化物にの存在を疎ましく思っていた。彼は魔獣討伐の部隊長だ。本来顔を合わせることもない人物で、今までだってそうだった。

 だが、ある日この首都フランベールに突然配属され我が物顔でやってきたかと思えば、早速要らぬ仕事を増やしていると嫌々である。


 ー12区画の通りにてー


 黒鳥のように立派な羽マントを羽織り、立派な魔剣を腰に携え、人一倍強靭なオーラを放つ男が、誰もいない街路樹を警備のため歩いている。

 時折、月夜の光の揺らめきに夜空を見上げた。

 彼は何かを感じ取ると、足早に走り始めた。



 【プロメリア通り十三番地路地裏】

 到着したこの路地は、パウロから指示された場所だ。


 《十三番地路地裏に行き止まりの区画がある。そこに鳥が巣を作った。その鳥の巣に壁の人からの大事な餌が届き、受け取った番は、喜びで踊り明かすだろう。君にはその踊りが見えるよう、皆を引き連れて見守っていてほしいー》


 これがパウロ男爵からの文に書かれていた内容。

 隠語を利用しているが、極めて単純な隠語だ。


 鳥の巣は(巣箱=ゴミ箱)、壁の人は(壁隣=隣国の人)、大事な餌は(草=麻薬)、受け取った番(使い=手下)だ。そして、喜びで踊り明かすは(火を囲み踊る人(火祭り)=証拠隠滅と印象操作のために火を放って)踊る。そして最後は皆(近くを彷徨く兵)を、引き連れて(囮になって)見守ってくれという意味だ。


 正確に読み取れなくても、ある程度内容が分かるように作られていて、指示書として明言されていない。

 正直隠語を作れるほどの頭のキレる人物とは到底思えないのがパウロだ。

 明らかに彼以外の有能な協力者がいるはずである。

 それはおそらく隣国の使いだろう。隣国の存在までは、原作には書かれていないし、この事件はアメリアが犯人として全て闇に葬られてしまうから、この事件はきちんと明るみにさせなければならない。

 そして、本当の犯罪者を罰さなければ、絶対に同じことは繰り返される。

 例え焼け野原の未来を防いでも、この火種を残して安心とは言えないのだ。


 (しかし、何で私が追ってを巻かなきゃならないの?原作の彼女は、捕まるかもしれないこんな前線で仕事をさせられていたんなんて、本当に信じられない。)

 パウロの何が嫌かと言えば、それでも引き受けてくると分かっている所だ。


 私は屋根伝いに移動して彼らの犯罪行為と兵を視認しやすくした。

 この辺りは数日前不審者の報告があって、警備を派遣している場所だからだ。


 三名の近衛騎士がいつも周辺を見回りをしているのだ。 

 おかげで通路に何か仕掛けが施してあるのもわかった。

 ゲートごとにセンサーが張り巡らせれているのだろう。探査機のようなもので逐一チェックしていた。

 

 行き止まりの区画が見える屋根で待機すると数分後、二人の男がやってきた。

 彼らは私が近くの兵の囮のなるという役目をしっかり果たすと安心していのか、軽装で正体を隠していない。


 (こいつらが、パウロの手下・・・。)


 そうこうしている間に、彼らがゴミ箱を漁ると、木箱を取り出した。

 ニヤついた二人の男はすぐに持っていたマッチで火をつけそのゴミ箱に放った。

 よく燃える素材ばかりを入れたゴミ箱は瞬く間に火の粉をあげ燃え上がる。

 彼らは笑いながら去っていく。


 (やばい!火をつけられた。もう火柱が上がってる、私が思ってたよりも燃料が大きいわ。)

 

 この行き止まりの区画は一番の死角で犯行の行いやすさだけで選ばれたわけではない。

 約3メートルほどのレンガ塀の後ろは馬小屋がある。その存在を図ってのことだ。

 木造の造りでよく燃えるワラもある。

 これは、ちょっとしたボヤ騒ぎでは済まない、極めて危険な犯罪行為だ。

 この周辺に水路はないし、この時代に消防もない。改めて計画の悪質性を目の当たりにして怒りが込み上げた。


 タイミングを見て現場近くの低めの屋根へと飛び移ると近くを彷徨く騎士二人の場所を確認した上で、逃げる犯人達に向かって準備しておいた小石を投げた。


 この時、体ではなく、足元に向け石を放ったので後方の男は悲鳴を上げた。そんな失態を犯した相棒に前方を走っていた男が血相変えて後方を確認した瞬間に同じ様に足に小石をぶつけた。


 二人して悲鳴を上げ、その場に蹲み込みその声を聞きつけた近衛騎士達が彼のいる通りに向かっていく。

 (よし、これで奴らはお縄だな。生ゴムで針金ぶら下げて取り付けた的で練習した甲斐があったわ。周回しながら自転する的の両面に石を当てれるまでになったし。)


 体よりも足の方が当てるのは難しいが、当たれば確実に足を止められる。しかも胴体よりも足の方が小石でも十分痛い。ここで下手なもの持ち込むよりずっといいのだ。とうとう男たちは、警備隊と追いかけっこを始めたようだ。


 その隙に燃え盛るゴミ箱までくると、用意していた小瓶の仕掛けの栓を抜く。一気に拡散させるとたちまち簡易消化器となって吹き出した消化剤を火種に向かって噴射した。一気に燃え盛る炎は消化剤によって消し止められた。

 ゴミ箱が灰になったが、塀は火柱の黒い煤がついただけだ。


 (さて私はさっさと帰るだけ・・・・)


 周辺を確認し目深にローブをかぶると、事前に考えた逃走経路に向かう為その場から立ち去る。もう一人の近衛騎士だけが見つけられず気になったが、頭上監査で近くにはいない為、見つかっても逃げ仰せるだろう。その理屈はちゃんとある。


 (よし、ここまでくれば・・・・)


 逃走経路は十二番路地に地下通路だ。あの下に潜り込めばその時点で逃走完了。

 一角から一度十三番街路地に出て、40メートル先の角を曲がるまでは一番危険だが、追手は犯人とともに逆方向へと逃げていったのでこれも大丈夫。あとは全速40メートル走。この先ずっと街灯の数が圧倒的に多く死角が無い為待ち伏せしていてもすぐ視認でき、もしも相手が向かってきても跳び箱競走の要領で、逃げることができる。


 私はどんな敵が向かってきても、この足を止めてはいけない。それが勝算だ。


 十三番街路地を疾走しながら目的地まで計算していると、突然背後から迫り来る鋭い刃を感じ頭を下げた。

 ローブが綺麗に一文字に割れた。

 だが、そんなこと気にすることもできない。

 相手の方がはるかにリーチが長く今度は私を完全に切り殺せる距離まで来ていると背後で分かった。

 二回目の剣撃、私は床に手を付け剣劇を避けつつ「バックスピン蹴り二打」を繰り出す。

 ただの後ろ回転の回し蹴りで二本足で二回蹴っただけだけど、威力はないが確実に相手と距離を取る方法だ。


 案の定相手はよろめいて少し遠くに飛ばすことができた。おかげで振り返る余裕ができる。

 剣の軌道がさっきの一撃で真一文と分かったからこの攻撃良かったけど、ブレてたら容赦無く斬られていた。


 そのまま滑り込むように反転させ、体制を整える。

 もうこの時には相当やばいやつで出会ってしまったと思っていたが、振り返って彼を見た時、私は自分の悪運を呪った。

 向かってきた影はゆっくりと暗がりから現れ、該当私が避けたと同時に立ち止まり振り返り、もうすでに次の一手を構えている。

 暗闇から突如現れた刺客、それはまさに、あの北の化物マーク・キューリー伯爵だった。


 黒髪に涼やかなブルーグレーの瞳、そして鍛えられた体幹のある体つき。

 オーラはすでに禍々しく、黒く猛々しく暗雲を立ち昇らせている。


 音もなく現れた死神、殺意を察知できないほどの獲物を捉えた黒豹。

 私の脳内は、彼への恐怖心のあまり、彼を表す通り名がいくつも頭を飛び交った。


 ’立ち止まらないことで勝率100%だった計画も、もうだめだ。

 止まっているし、向かい合っているし、相手は北の化物だし。詰みルートじゃん。’


 ラスボスと序盤戦で遭遇したのも同義、私は即死だ。

 ’くそ!一番避けたかった相手・・・!’


 (ここで直ぐに殺されるか、深傷を負って尋問されて死ぬか。

 逃げ仰せても、交戦すれば正体がバレる。そしてのちに殺される。

 すぐにでも撤退する以外道はない。でもどうやって!?)

 音速の推測で立てた計画を、私は実行に移すために走り出した。ここまで向き合ってからのカウント1秒。


 私は彼に向かって走り出す。彼も同時に向かってきている。

 武器はない。用意していない。チャンスはこの一回しかない。


 私は猛スピードで走ると急接近する間合いで足を振り上げる。マークはかかと落としだと判断し瞬時に身構えたが残念ながらこれは先頭の一撃ではない。


 屈んで低くした彼の体に、下からはねあげられたレンガが顎に向かって飛び、命中した。

 そう私はあの時、走るスピードを利用してソールの爪先で石畳のレンガを削るように跳ね上げていたのだ。

 

 彼は一瞬目眩しになったのでその隙を狙い私は、彼の肩を踏みつけ飛び乗る。

 何が起こったか対処できず肩から崩れ落ちるマーク。

 だがそれはほんの一瞬の出来事でやはり彼の体感は素晴らしく踏み潰すどころか立ち上がって私の足を掴もうと手を伸ばす。 

 

 私はそれすらもを予想していたので、彼の力を利用して立ち上がる彼の動作に合わせて宙へと飛び上がった。

 その瞬間、手から出したのは、ワイヤー式の鉤縄を使って再び屋根を飛び移る。

 そのまま、屋根伝いに逃げると、十二番街通路でおりて彼の視界から完全に焼失した。

 


 「・・・・・・・。」


 彼の知る戦闘方法とはまるで違う、一連の流れにしばらく圧倒された。

 出会い頭から、全てが息つく間もなく行われた最速の動き、私の剣速に全て対応していた。

 さらに二回もかわされた。こんな経験、魔獣討伐でも経験したことがなかった。

 私の戦い方が全て読まれているような、そんな不思議な感覚、そこを突かれた盲点。

 清々しいほど、完璧な立ち回りで彼女は消えた。




 「・・・赤髪・・・の女・・・」



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