Mission11:犯行現場へ急げ!
パウロ男爵によってアメリアはこれまでの有能な殿下の婚約者の肩書ながら、実際は傾国の一員として活動するスパイという二重の肩書を背負う事になる。
彼の計画で犯罪行為は手伝っていた事で、最後はテロ行為の首謀者として拷問として殺される。
原作の彼女を振り返りながら、私は彼女のマントに身を包んだ。
手紙に支持された目的地へと向かう為、私は、窓の外から手綱をたぐり邸宅を抜け出した。
・ ・ ・
ーパウロ・レバデロ男爵家の屋敷ー
「パウロ様、ご準備ができました。私たちの贈り物どうぞお受け取りください。」
「あぁ、今回も良い取引ができて幸いだ。」
彼は自室で、酒を飲みながら水晶向かって会話する。
「あの、女もすでに私の手の中だ。次の射影会でもいい働きをしてくれる。今度こそ、期待していてくれ。」
その言葉に水晶に映し出されている男がにっこりと微笑んだ。
「えぇ、昨年は残念でしたが、私どもも、まだまだ技術不足でしたので。ですが、次回パウロ様には、私共が用意したとっておきのお品を用意しておりますので近々、機会を設けさせていただきます。
それまで今しばらくお待ちください。それでは」
水晶の中に映し出された妖しい男と上機嫌に会話を終わらせたパウロは、既に次の計画に心が躍らせていた。
(今日は私が現場に行かずとも、計画が実行される。次は念願の射影会だ。それもまた私が直せず手を下さずとも上手く行くだろう。
本当に良い駒を手に入れた!ふふっ実に愉快だ!)
パウロ男爵は、優雅にグラスワインを飲み干しながら勝利の悦に浸った。
そして彼は自身が抱いた大きな野望がすぐそこのあることを確信し、思いを巡らせる。
レバデロ家、彼の家業は表向きには、金の貸付で利益を得た成金とされているが、いくつか訴訟沙汰を起こされ、さらには隣国とは怪しい取引をしていた。
方やパウロも、その金の使い道を自らの欲のためだけに使い、遊び呆け、その金をもっと増やしたいと思い、彼は国の資産や財産を、簡単に隣国に売り渡していた。高く買ってくれれば、治安悪化や国への影響などどうでもいい。
どんどんこの国の資産を買い付け、それを高く隣国に売りつけた。その様な行為がバレないはずもなく今では、彼を見れば「成金」「遊び人」「売国奴」という言葉が用いられた。
最近は何かと目を付けられ、ポラロイドに
それはそれで、彼のプライドをひどく傷つけた。
どこまでも身勝手な男は、国の英雄としての功績を残せば、王国に最も近い爵位を得られると考えた。
そして彼はその方法としてとっておきの計画を立てた。
自国を急速に治安悪化させ、テロ行為を装い、安全なこの国に不安因子を植え付ける。
そしてそのある程度甘い蜜を吸った頃合いで、テロ行為の首謀者を自ら捕まえ、その栄誉勲章と地位を得ようと考えた。
事「北の怪物」と名高い辺境伯爵が近々、長きにわたる北部遠征の功績を讃え、爵位が上がると噂されているのだ。
パウロをそれをヒントに、功績は自らの自演自作によって行おうと考えたのである。
だが、肝心の首謀者の選択に彼は頭を悩ませた。
ある程度の知名度がなければ、一時の話題作りで終わってしまうし、民衆の関心を得られない。
皆が一斉に犯人の断罪を望む様な、そんなインパクトのある人物でなければ・・・。
「しかし、俺も、つくづく運を味方にした男だな。フフ」
ワイングラスを飲み干しご満悦にあの時の自分の功績に、パウロは浸った。
計画を隣国の男に話した数日後、彼の元にとある招待状が届いた。
それは、滅多に自分が呼ばれることのない公爵家主催のチャリティパーティだった。
この国の王子も来る由緒正しき社交界の参加はレバデロ家の悲願だった為、一家でこの招待状に舞い上がった。
満を辞して臨んだ、社交界だったが、公爵家に向かう道中、まさかの車輪トラブルに見舞われた。
ようやく着いた頃にはパーティも終盤となっていた為、彼はせっかくの機会を、焼け酒で過ごした。
一頻り、自慢話を吹聴して回ったが周囲の反応は自分が期待したほどの反応が得られずつまらないと二階で高みの見物を決めた。
上から彼らの家紋と名前を言いながら、悪口で酒の当てにして過ごしていると、突然彼に社交界の天使が微笑んだ。
アメリアマーズがひどい格好で現れ、盛大にパーティをぶち壊したのだ。
その姿を二階から見たパウロは腹を抱えながら笑った、笑い尽くすとふと閃いた。
この滑稽で醜い、それでいて「殿下の婚約者」の肩書を持つ哀れな女。
これだけの知名度を持った奴ならば、最高の手駒になるんじゃないかと。
(その後は、帰りの馬車がなく、メソメソ泣いているアメリアの前に颯爽と現れ、俺は手を貸すだけ。
それだけで、楽にあいつを信用させられた。
あの日のことをあいつはたいそう感激しているからな。
今では俺に目がない雌豚だ。
ばかで疑う事を知らないお嬢様は本当に扱い安い。
一頻り、国を売った後は堂々と全ての罪を浮気相手の恋人に押し付けさえすればいい。簡単だな。)
さらに悦を感じ、追加のワインを注ぎ飲み干した。
彼の脳裏に、ふとあの日(舞踏会)の彼女の服装が思い出された。
涙で化粧の剥げた顔立ちは目鼻立ちの綺麗な素材で、そして乱れたドレスからみえた細い胸骨。
泣きはらした表情で私を見つめる姿は情けなく、そして私の嗜虐性を擽った。
まるで少年のように儚く、美しい。
パウロは普通の女性にはない彼女の中性的な風貌に新たな欲望をかき立てられるのを感じた。
(次はもうそろそろ手をつけていい頃だろう。)
彼はますます上機嫌の夜を過ごし、その高笑いは静かな月夜の晩に響いたのだった。
・ ・ ・
「アメリアお嬢様、それは本当ですか?!」
驚いたフロリーが、その拍子に私に向けて入れかけの紅茶の茶葉を吹きかけてきた。
私はその茶葉を一つづつ摘み上げながら、先日のエルカルロとのやりとりをフロリーに話した。
「まさか・・・彼も私の失墜を狙っていたとはね。まさかの出来損ないの兄弟達の味方だなんて。」
「そのようですね。私が調査した所、アメリア嬢の手紙を、意図的にエルカルロ様の元に届けるよう指示していたようです。
すみません。また軍資金を使用させていただきました。」
彼女には、ある程度の軍資金を内偵に利用させている。彼女は商人の父に似て人の懐に入るのが上手い。これは教えてどうこうなるわけでなく、環境や素質の部分が大きい。本当に味方として頼れる唯一の存在だ。
「だとすると、あなたの事も彼は監視しているかもしれないから、行動には気をつけてね。」
「そうですね、気をつけておきます。それよりもお嬢様は、大丈夫なのですか?手紙が一度エルカルロ様の元に渡ったとなればこのように文通していては、お嬢様もいらぬ疑いをかけられてしまいます。」
「えぇ分かっているわ。だから、この手紙で最後にするつもり。」
「まだ、あのパウロ男爵に手紙書くんですか?!」
「まぁね。彼のことだもの。いきなり連絡が途切れたらどんな言いがかりをつけられるかわからないわ。ここはきちんと返事する方が帰ってスムーズに行くものよ。」
フロリーには、パウロ男爵に言い寄られているという嘘で、あえてパウロのことを話している。
今後、彼の事で協力を仰ぐかもしれないからだ。私には多くの敵がいるのに、協力者はフロリーただ一人。
ただ、彼女には決して危険なことはさせられない。父ダニエルを直接やり取りしてその思いをさらに強くした。
正直、第一線で動ける人が協力者に欲しい所だが、彼女の交友関係を調査し尽くしても該当する人がいないのが、今私を悩ませている一番の課題だ。
かつて私にも仲間がいた。
私のわがままを上に融通してくれる先輩も、私の代わりに連携をとってくれる同僚も、大量の申請書や報告書、調書を仕上げてくれる従順な部下も私が向こう水の一本木で居れたのは周囲の助けのおかげだった。
また畑違いの仲間達も私の代わりに危険な任務に立ってくれることもあった。
男除隊の中、紅一点の私だったが、私は仲間に恵まれて多くの事件を解決できた。
今回、一人で多くの存在と戦って分かったが、一人の力はとても小さいということ。
自分だけが頼りというのは、とても恐ろしくもある。
犠牲フライができるのもある意味、後を託す存在の頼もしさあってのことなんだと初めて知った。
’私って、実は幸せ者だったんだ・・・’
二人はこの文を読んだら絶対に燃やすように約束しあっていた。アメリアはパウロからの申し出を愚直にを守った。
だが、相手はおそらく全ての手紙を保管しているはずだ。
犯行計画書として、来たる時に、裁判で証拠として突き出すに決まっている。
だから、私もこの計画内容が書かれた手紙だけを所有していても有利でも何でもない。
その手紙を奪い返すまでは、彼と交流を維持しなければならないのだ。
この手紙のやり取りに関しては彼と私は共犯者なのでおじ様に文を読まれそうになったと一言書けば十分だ。
もう二度と手紙が送られてくることはない。
だが、必ず紙の保管場所を探し出し、彼から奪い返さねばならない。
私は、計画に乗ったフリをして最終的に彼の部屋に乗り込まなければならないことを考えると、ゲンナリした。
彼は、アメリアとの交際後、男色家に目覚めた。
原作にアメリアの男装の時にだけ、夜を共にしていた書かれている所はファンサイトも荒れたほどだ。
私も彼に今から会うと考えただけで嫌だし、後ほど会うことになり部屋に入ることになれば、殺してしまう自信しかない。
どうにか別の形で証拠隠滅できないか、今のうちから考えておかなければいけないだろう。
取りあえず、明日決行される事件を未然に防ぐ計画を立てることに専念する。
準備する暇が少ないが次の作戦の準備にとりかかった。




