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菅原道真は少女に大丈夫かと聞きたくない

菅原道真と林田道真は静かな林の中を歩いていた。鳥のさえずりや風のざわめきが心地よい自然の音を奏でていたが、突然、その静寂を切り裂くような悲鳴のような声が聞こえてきた。

「ギャアァッ!!」

二人は一瞬固まり、驚きの表情を浮かべながら周囲を見回したが、周りには誰もいなかった。ただ静かな林が広がっているだけであった。

「なんだ、今のは!?」

菅原道真が疑問を口にした。彼らは声の発信源がどこにあるのかを探ったが、何も見つけられなかった。

「空耳だったのかしら?」

菅原道真が首を傾げていると、再び同じ叫び声が響いた。今度はかなり近くの場所から聞こえてきた。

「こっちの方角からだ!」

林田道真が叫ぶと同時に声の方向へ走り出す。続いて菅原道真も走った。そこには小さな洞窟があった。洞窟の奥からはさっきの声が聞こえているようであった。菅原道真は慎重に洞窟の中を覗き込んだが、何も見えなかった。しかし、声ははっきりと聞こえてくる。

「私たちは誰かを助けるべきかもしれない。その声は苦痛や恐怖を感じさせるものだから」

林田道真が提案した。

「そうだ。私たちの力で、その声の主を助け出しましょう」

菅原道真は頷いた。二人は決意を胸に、洞窟の中へと進んでいった。何が待ち受けているのかわからない中、二人は困難に立ち向かう覚悟を決めた。


洞窟の奥に進むと、そこには一人の少女が倒れていた。彼女は全身が血まみれで、生命力の衰えが明らかに感じられた。

菅原道真は少女に近づき、心配そうな表情で彼女を見つめた。彼は少女の安否を確認しようと思い、言葉をかける前に彼女の状態を見て判断することに決めた。その目で少女を見つめると、彼女の表情からは苦痛や絶望が滲み出ていた。彼女の身体は弱々しく震えており、血の染み込んだ衣服からは深い傷の痕跡が見受けられた。


菅原道真は傷ついた少女に寄り添った。彼はただ黙って彼女を見守り、彼女が話すのを待った。彼女は苦しい声を出し、彼に対してはっきりとは話せなかったが、彼女の目には助けを求める光が宿っていた。

「大丈夫ではないようだね」

菅原道真はつぶやいた。ここで「大丈夫か」と質問するならば馬鹿である。どう見ても大丈夫ではない。道真はただ彼女のそばにいて、彼女の心の支えとなる存在でありたいと思った。


「お願いします……、助けてください……」

少女は苦しそうな声で言った。

「分かった! 今すぐ手当をするよ」

菅原道真は懐から布を取り出し、それで少女の傷を包み込むようにやさしく手当てをした。すると、みるみるうちに出血が止まった。少女の苦痛は少しずつ和らいでいった。彼女の表情も穏やかになり、彼女は菅原道真に微笑みかけた。菅原道真は彼女の微笑みに応えると、彼女の手を取り、ゆっくりと立ち上がらせた。


「良かった。これで一安心だ」

菅原道真がホッとしていると、林田道真が険しい表情をして尋ねた。

「ところで、あなたは何者なのでしょうか?」

「私は梅子と言います」

梅子は弱々しく答えた。


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