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菅原道真は蛙に慰められたい

道真は自分のみじめな姿を見に来る野次馬が苦痛であった。着物は色褪せ、体は痩せ衰え、白髪が増えた。道真は政敵である時平一派に対する憤りを胸に抱き、かつて天皇に対して忠誠を誓ったことを後悔した。


道真は捏造された罪状が自身の家族や親戚まで累及していることに痛恨と悲憤を覚えた。過去の功績が抹消され、彼の存在が否定される現実に苦しんだ。道真は心の奥底で狂想に取り憑かれ、孤独な苦悩にさいなまれた。


ある日、道真は窓辺に立ち、静かに和歌を詠んだ。

「あしびきのこなたかなたに道はあれど、宮こへいざといふ人ぞなき」

山々が道となり、さあ都へと進むことはできるが、彼を励まし、都への旅へと誘ってくれる人は誰もいないのだ。孤独と静寂が部屋を支配し、時間はゆっくりと過ぎていった。四季がめぐり、山々の景色も変わっていく中、道真の和歌の技量はますます高まっていった。道真の和歌は深みを増し、人々の心を打ち動かすものとなった。しかし、道真の心にはまだ穴があいたままであった。


道真は小さな池のほとりに一人静かに立ち止まった。池の中から蛙の鳴き声が聞こえてきた。蛙達はにぎやかに鳴いていたが、道真の心には、家族と離れ離れになった寂しさや懐かしさが広がっていした。

「蛙の声 家に連れて帰るか 雨の夜」

歌を詠む道真の声は静かで、深い哀しみが込められていた。その歌声が池の蛙たちの耳に届くと、彼らも静まり返った。道真は蛙の鳴き声が途絶えたことに気づいた。彼らが自分の歌に共鳴し、道真の心の声に応えたのかもしれない。

一匹の蛙が小さく呟くような声で道真に語りかけた。

「菅原道真、私達はあなたの孤独な心を感じた。あなたの家族との別れ、その悲しみを理解しています。しかし、あなたは決して一人ではありません。私たちもあなたの味方です」

道真は驚きと感謝の念で胸がいっぱいになった。彼は蛙に向かって微笑みながら言葉を返した。

「ありがとう、友よ。あなたたちの存在が、私の心を温かく包んでくれます。家族の思い出と共に、あなたたちの声も私の心の中に永遠に響き続けるでしょう」

それ以降、池の蛙たちは道真のために鳴くことを止めた。彼らは自分達の小さな力で、道真の孤独な心を癒してやろうと決意した。


道真は孤独であった。孤独な時間が過ぎるたびに、道真はますます心の奥深くに沈んでいった。部屋の窓からのぞく自然の営みが、道真の心に少しの明るさをもたらしてくれる唯一の希望だった。時折現れる雀と燕の親子が、道真の孤独な心の友となった。


道真が窓辺に立って外を眺めていると、小さな雀が窓枠に止まった。道真は優しく微笑みながら言った。

「おや、君はいつも元気に遊んでいるね。私も君たちの姿を見ると、心が和みますよ」

雀はチョコチョコと小さな鳴き声をあげ、道真の言葉に応えるかのように羽を広げた。それを見て道真は安らぎを感じた。


翌日、道真が再び窓辺に立つと、今度は燕の親子が舞い降りてきた。燕は素早く飛び回り、道真の周りをぐるぐると旋回しながら鳴いた。道真は微笑みながら言った。

「君達の飛び方は本当に美しいね。私も君たちのように自由に舞いたいと思うよ」

燕は羽を広げ、まるで道真に挨拶しているかのように見えた。それを見て道真は幸せを感じた。


日々、雀と燕の親子は道真の窓辺に現れ、道真の孤独な心を温めた。彼らの存在は道真にとって大切な友となり、彼らの姿を見ることが楽しみになった。

ある晩、道真が窓辺に座っていると、鳥達が突然鳴き声を上げた。道真は驚きながら言った。

「どうしたんだろう?何かあったのかな?」

窓の外で鳥達が大騒ぎしている様子が見えた。道真は外に出た。庭先には大蛇が忍び寄ろうとしていた。雀と燕は大蛇に立ち向かっていた。道真は叫んだ。

「待って、助けに行く!」

道真は石を手に取り、大蛇に向かって投げた。大蛇は驚いて一時退散し、雀と燕は無事であった。道真は疲れ切った身体を座り込ませながら、雀と燕の親子に向かって微笑んだ。

「君達は本当に勇敢だね。私の大切な友達だよ」

雀と燕の親子は道真に応えるかのように鳴き声を上げた。それを聞いて道真は幸せを感じた。道真は窓辺に座り、雀と燕の親子の鳴き声に耳を傾けた。彼らの存在は道真の心に小さな明かりを灯し、彼の日々をやさしく照らしていった。

「君達がいてくれることで、私は決して孤独ではないんだ。ありがとう、いつも一緒にいてくれて」



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