宇多法皇は悩みたい
「私はどうしたらいいのだろう？」
宇多上皇は悩んでいた。すると、ある人物がやって来た。
「失礼します」
その人物は菅原道真の弟子だった。
「おお、よく来てくれた」
宇多法皇は喜んだ。
「実は、道真様に頼まれていたことがありまして……」
「何だい？」
「道真様は、法皇のことを心配しておられました。もし、自分がいなくなっても、上皇を支えてほしいと」
「道真が……」
宇多法皇の目からは大粒の涙が流れた。
「はい……」
「道真は朕のことを案じてくれていたのか。朕は道真に愛されていたのか？」
「もちろんでございます。道真様は法皇のことが大好きでございました」
「ありがとう！嬉しい！」
宇多法皇は再び涙を流した。
「そこで、法皇にお願いがあるのですが……」
「何だい？」
「道真様の代わりに、私が法皇のお力になります」
「本当かい！？」
宇多法皇の顔に笑みが浮かんだ。
「はい！私は道真様のように優秀ではありませんが、精一杯取り組みます！」
宇多法皇は彼の意気込みに感銘を受け、道真と同様に彼を信頼することを決めた。
「頼んだぞ！これからよろしく頼むよ」
「はい」
こうして宇多法皇には新しい側近ができた。彼は道真と同様に賢明な判断力を持ち、公正さと誠実さを心に刻み込んでいた。
「道真が大宰府に飛ばされてしまった。何とかならないものかね？」
宇多法皇は時平を呼び出して尋ねた。
「私も道真殿のことは大変残念に思っています。しかし、今は大宰府に道真殿の代わりとなる人材がいないのです」
時平はぬけぬけと答えた。
「それは分かっているが……」
宇多上皇は悲しそうに顔を伏せた。宇多上皇は深い嘆きを抱えながら、時平の言葉に失望した。道真が大宰府に飛ばされてしまったことは、法皇にとって大きな悲劇だった。道真は優れた政治家であり、文学や教育にも深い理解を持つ人物だった。道真の代わりになるほどの人材が現在の朝廷にいるかどうか疑問だった。
「道真がいなくなったせいで、朝廷の仕事が滞っている」
貴族達は道真の存在の大きさを改めて感じていた。彼らは道真の助言や指導がなければ、問題解決や政策立案に時間がかかることを痛感していた。
「はい。その通りです」
「何とかしなければならんな」
「しかし、道真殿がいないと、仕事ができないというわけではないのでしょう？」
「確かにそうだな。現在の朝廷にも優れた人材は存在している。彼らは自らの力で仕事を進めることができる。しかし、道真がいれば、もっと楽になるはずだ」
「まあ、そうでしょうけど……」
「よし、決めた。道真を呼び戻すことにする」
宇多法皇は宣言した。
「それはなりません」
「何故だ」
「道真殿が大宰府に飛ばされた理由は、一定の事情があったはずです。道真殿を呼び戻すことは、その事情を無視することになります。また、大宰府に道真殿の代わりとなる人材がいないことも事実です」
時平は反論した。
「しかし、このままだと、朝廷の業務に支障が出るぞ」
「はい。分かります」
「だったら、どうして呼び戻してくれないのだ？」
「今、道真殿を呼び戻したら、殺されてしまいますよ」
「そんなことはないだろう」
「いえ、やられかねないと思います」
法皇は沈黙し、考え込んだ。法皇も道真の大宰府への追放の理由を理解していた。道真が大宰府に飛ばされたのは、政敵からの陰謀によるものであり、道真を政治の舞台から遠ざけるための策略だった。
「そうか……。じゃあどうすればいいのか教えてくれないか？」
「はい。まず、帝には道真殿のことを許してもらう必要があります」
「なるほど。それは難しいかもしれんな」
「私達も朝廷の業務が円滑に進むよう、最善を尽くします。道真殿の影響力と知識は大きいですが、現在の状況では彼を呼び戻すことは難しいでしょう」
