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藤原菅根は冤罪を抑制したい

京では藤原菅根が藤原時平の屋敷を訪れた。菅根は緊張しながら時平の前に立ち、深々と頭を下げた。

「時平様にお伝えしたいことがありまして参上しました」

時平は興味津々の表情で言った。

「ほう、それは一体どんな内容なのかね」

菅根は息を飲み、重要な情報を伝える準備をした。

「実は、道真殿が太宰府で暴れているという噂を聞きましたので、急いで駆けつけた次第です」

「道真殿が暴れていると?それは深刻な事態だ。どうしてそんなことになったのか、詳細を教えてくれ」

菅根は説明した。

「道真殿の近くには讃岐国の林田郷の人々が集まり、彼らの助力を借りているとも伝えられています」

「なるほど、そういうことか。で、どうしてそのことを私に伝えに来た?」

「道真殿を殺さないようにして欲しいのです」

菅根は懇願するように言った。

「なぜそんなことをする必要がある?」

時平は眉をひそめながら尋ねた。

「道真殿は、時平様にとって大切な存在だからです」

菅根は胸の内に秘めた思いを込めて答えた。

「そうか……。だが、道真は麻呂を陥れようとしたのだぞ」

「それは誤解です。道真殿は、時平様のためを思い、行動を起こしただけでございます」

「どういうことだ?」

「実は、時平様は、道真殿に対して嫉妬していたのではないでしょうか」

時平は菅根の言葉に心の奥底で揺れ動く感情を抱えていた。彼は自分が道真に対して嫉妬しているのではないかという考えを避けようとしていたが、その思いが否定できなくなっていた。

「私が……道真に嫉妬しているだと? 馬鹿を言うんじゃない。私は、ただ単に、あいつの才能を認めたくないだけだ」

時平は自己弁護を試みるものの、言葉に自信がなかった。

「いいえ。本当は、あなた様は、道真殿のことを羨ましく思っており、妬んでいるはずです。道真殿はあなた様と同等、もしくはそれ以上の才能を持ち、名声もあなた様と比肩することができる存在です」

時平は菅根の言葉に耳を傾ける。彼は自身の感情に向き合うことが苦手だったが、今は避けることができない真実に直面しなければならない時だと感じた。時平は沈黙の中で内省し、心の中で葛藤していた。彼はかつて道真と共に学び、互いに才能を磨いてきた。しかし、道真がその才能を遺憾なく発揮し、自分以上の成功を収めていく姿を見るにつけ、自分の心の奥底には嫉妬の念が芽生えていたのかもしれないと思い至った。

「あなた様は、道真殿を恨むあまり、道真殿を太宰府に追いやった。しかし、道真殿は大宰府でも人々から慕われていた。だから、道真殿に対する嫌がらせを始めました」

「菅根よ、お前の言葉には一理ある。私は、道真の成功に嫉妬し、自分自身の不甲斐なさを感じていたのかもしれない。しかし、それが私の道徳心や義務感からくる行動に影響を及ぼすことはない」

菅根は穏やかな表情で時平を見つめ、肯定するように頷いた。

「時平様、それが心の奥底に秘めた感情であろうとも、私はあなたの正直さと覚悟を尊敬します。どうか命だけは助けてあげて欲しいのです。お願い致します……」

「……わかった。道真の命は取らないことにしよう」

「ありがとうございます。それでは、私はこれで失礼いたします……」

菅根は去っていった。


「時平様、本当によろしいのですか?あんな奴の言葉を信じても」

「仕方ないだろ。あの男の話を聞いているうちに、あいつの言うことが正しいのではないかと思い始めたんだから」

「そうなんですね……」

「そうだ。それにしても、まさかあいつが、道真のことを庇うとはな……」

「はい。驚きました」

時平は、道真のことが少し気になり始めていた。


時平は一人部屋に座り込んだ。時平は菅根の言葉と自分の内なる葛藤に頭を抱えた。道真への嫉妬心と共に、自分自身の弱さや未熟さを感じていた。

「私はいつまで自分の感情に縛られているのだろう」

時平は自問した。自身が道真に対して抱く感情を正面から受け止め、それを乗り越える決意をすることが必要だと悟った。



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