菅原道真は大宰府に乗り込みたい
大宰府では役人達が慌ただしく動き回っていた。
「大変だ! 道真が解放されたぞ!」
ある役人が駆け込んできた。
「何だって!?」
「しかも、一人で乗り込んでくるそうだ」
「馬鹿な奴め。返り討ちにしてくれるわ」
「すぐに兵を向かわせるんだ」
「おう」
兵達は急いで準備を整えた。
道真の目の前には大勢の兵が待ち構えていた。
「よくも我々の邪魔をしてくれたな」
兵士の一人が道真に向かって言った。
「お前達の方こそ、私をこんな目に遭わせたじゃないか」
道真は怒りを込めて返答した。
「何を言うか! 貴様が勝手にやったことだろ」
別の兵士が反論した。
「ふざけるな! 私が何をしたというのだ」
道真は困惑しながら問い返した。
「まだ言うか。ならば教えてやろう。この国を荒らしたのは誰なのかをな」
兵士の一人が厳しい口調で告げた。
「ほう、言ってみろ」
道真は挑戦的に応じた。
「それは菅原道真、お前のせいだ!」
兵士の一人が一気に言葉を吐き出した。道真は言葉に突き刺さるような衝撃を受けた。彼は自らが国を荒らしたという非難に対して、心の底から否定した。
「そんなことはない!私は官吏の腐敗をなくすために尽力してきた。それは人々の幸福になる。どうして私が国を荒らすなんてできるだろう!」
兵士達は固い表情で道真の言葉を受け止めた。彼らもまた大宰府の命令に疑問を抱いていた。
「何を根拠に言っている」
兵士達は互いに顔を見合わせ、返答を求められて戸惑った。彼らは道真に対する疑念を抱きつつも、確固たる証拠を示すことができなかった。
「根拠ならある。お前が都を騒がせたからだ」
兵士の上官が苦し紛れに答えた。
「それは違う。そもそも、騒ぎを起こしたのは時の権力者である藤原時平ではないか」
道真は驚きながらも落ち着いて言った。
「黙れ! 言い訳など聞きたくない」
上官は怒りに震えながら叫んだ。
「何だと!」
道真は上官を睨み返した。道真の言葉は兵士達にも届き、彼らは動揺した。兵士達は状況の複雑さと道真の言葉に揺れ動いた。彼らは道真を尊敬しており、彼が真実を追求する人物であることを知っていた。道真が不正を隠すことはない。
「都での混乱はお前のせいだ。お前の異端の思想が人々を扇動したのだ」
上官は息を詰めて言葉を続けた。道真は深くため息をついた。異端の思想とは、官僚主義にとらわれず、人々のために公正な判断を下すことであった。しかし、その思想が守旧派の貴族者達には受け入れられなかった。
「私はただ真実を求めているだけです。都の混乱は藤原時平の不正な政策と統治の結果です」
道真は静かに言った。兵士達は迷った。
「おい、どうすればいいんだ?」
一人の兵士が呟いた。
「道真の言っていることに一定の根拠があるかもしれない。だが、上官に逆らってまで彼を支持するわけにはいかないだろう」
別の兵士が囁いた。彼らも都の混乱に疑問を抱いており、道真の言葉が一定の根拠を持っていることを感じた。しかし、上官の命令に逆らうことは軍人としての規律を破ることになる。兵士達は内心で葛藤し、どちらに従うべきか悩んだ。




