菅原道真は外出を許されたい
ある日のこと、道真は外出を許された。
「よし、今日は外に出られるのか」
道真は喜んだ。
「何だ、お前は?」
門番は不審な目で見る。
「私は菅原道真と言います」
「そうか、道真と言うのか……」
「はい」
「おっ、あれは何だろうか?」
道真はあるものを見つけた。
「ん、どうした?」
「いえ、何でもありません……」
道真は誤魔化した。
「そうか……」
「それより、早く行きましょう」
「ああ、分かった……」
二人は歩き出した。
「なあ、お前って、もしかしたら偉い人なのか?」
「えっ、どうしてそんなことを?」
「いや、だってお前、難しい言葉を知っているじゃないか?」
「別に大したことではありませんよ」
「ふーん。まあ、いいけどさ」
「それよりも、ここの景色は素晴らしいと思いませんか?」
「確かにそうかもな……。でも、俺は都の方がいいと思うぜ」
「そうかもしれませんね。私もそう思います」
「そうか。わかってくれるか」
「はい。もちろんですよ」
「そうか。それは良かった……」
「えっ?」
「実は俺、ここに来る前は、都にいたんだよ」
「そうなんですね……。それで、どんな生活をしていたのですか?」
「それはもう最高の生活さ。毎日読書したり、詩を書いたりした」
「そうですか。羨ましいです……」
「だろ?」
「はい……。私なんて、いつも質素なものしか食べていませんでしたから」
「それは残念だな」
「ははは……」
道真は苦笑いした。質素な生活に美しさがある。飾り立てない日々は人間の本質を見つめる機会になる。
「あっ、そうだ。ちょっと待っていてくれ」
「えっ?どこに行くつもりなんですか?」
「すぐに戻る」
男はどこかに行ってしまった。
「一体どこに行くんだろう……?」
道真は不安になった。しばらくすると、男が戻ってきた。手には何かを持っていた。
「ほら、これをあげるよ」
「これは……?」
「おにぎりだよ。腹が減っているのかなと思って、少しでも力をつけてもらえればと思って作ってきたんだ」
「ありがとうございます……」
道真はそのおにぎりを受け取った。そして一口食べた。
「おいしいですね……」
牢の食事とは比べものにならないほど、おにぎりは手作りの温かさと愛情が詰まっていた。道真は男に目を向け、心から感謝の気持ちを伝えた。
「これは本当においしいですね。あなたが心を込めて作ってくれたのですね」
男はにっこり笑いながら道真に答えた。
「そうだよ」
道真はその人柄の温かさと、善意に満ちた行動に心を打たれた。
「あなたは私を助けるためにここまでしてくれたのですか?」
道真が尋ねると、男は頷いた。
「はい、その通りです。私はあなたに何が起きたのか知りたいと思っていました。そのために、あなたを連れ出してみたんです」
道真は男の言葉に深く感銘を受けた。




