林田道真は菅原道真と話したい
ある日のこと、一人の男が道真のところに訪ねてきた。
「あなた様が菅原道真殿にございますか?」
「いかにもその通りだが、貴君は何者だ?」
「申し遅れました。某は讃岐国阿野郡林田郷の林田道真と申し、林田泰郎は我が弟でござる」
「ほう、それがしと同じ名前とは奇遇なことであるな」
「はい、実は、私めも同じ名前のものでして、もしよろしかったらお近づきになりたいと思いまして、こうして参った次第でございます」
「なるほど、そういうことであったのか」
「はい、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしく頼む」
二人は固い握手を交わした。菅原道真は同じ名前を持つという偶然に不思議な縁を感じた。
「それでは、早速、私の屋敷に来ていただきたいのですが……」
「わかった。行こうではないか」
菅原道真は林田道真の屋敷に招かれた。
「どうぞ、お上がりくださいませ」
「お邪魔する」
道真は屋敷の中に入った。室内からは美しい庭園を眺めることができた。
「どうでしょうか? この家は?」
「なかなか立派な家ではないか」
「ありがとうございます」
「ところで、そろそろ話を聞かせてもらいたいのだが……」
「はい、何なりとお聞きくだされ」
「では、遠慮なく聞こう。何故、我が名を名乗るのだ?」
「はて、なんのことやら?」
「惚けるつもりか?」
「と、とんでもないことでございます」
「ならば、教えてもらおう。どうして、わざわざ、このようなことをしたのかを……」
「…………」
「どうなんだ、答えよ」
菅原道真は威圧的に迫った。林田道真は少し戸惑った表情で道真に向き直り、深いため息をついた。
「はい……、実は……」
「うん……」
「私は道真殿が冤罪で左遷されたと聞いて、とても悔しく思い、なんとか力になれないかと考えたのでございます」
「ふーん……」
「ですから、道真殿の名前を使って、道真殿の名誉回復のお手伝いができないものかと思ったのでございます」
「ほぅ……、それは素晴らしい心掛けであるな」
「ははぁ……」
「まあ、気持ちはありがたく受け取っておくよ」
「ははっ……」
菅原道真は林田道真の言葉に驚きつつも、林田道真の熱意と心意気に感動した。菅原道真はしばらく黙考し、心の中で自分自身と向き合った。彼は自分の使命がまだ終わっていないことを感じていた。林田道真という存在が自分の運命と結びついていることに疑いはなかった。
「林田道真殿、貴君の心意気に感銘を受ける。私は君の言葉を信じよう。私達は共に歩むことにしよう。私自身も名誉回復を願っていたが、貴君の献身的な努力によってそれが現実となる可能性が生まれるのかもしれない」
林田道真は謙虚に頭を下げた。
「道真殿、私はまだまだ未熟者でございますが、貴君のご指導とご協力を頂ければ、名誉回復のために全力を尽くします」
菅原道真は穏やかな笑みを浮かべながら言った。
「林田道真殿、私は決して貴君を邪険にはしない。むしろ、貴君の努力に共感し、支援していきたいと思っている。私たちは協力し合い、冤罪を晴らし、名誉を取り戻すために立ち上がるのだ」
林田道真の目には涙が浮かんでいた。
「道真殿、ありがとうございます。私はこの名を背負い、貴君と共に進んでいきます。名誉回復を果たし、真の道真の教えを広めるために尽力いたします」




