菅原道真は炭桶の灯火で暖まりたい
冬になると寒さに悩まされた。
「それにしても、ここは寒いところだねえ。そうだ、火鉢でも用意しよう」
道真は炭を用意しようとしたが、炭がなかった。
「しまった!ここには炭なんてなかったんだ。この寒さでは、どうやって温まればいいんだろう」
道真は途方に暮れた。
「そうだ、薪でも集めればなんとかなるだろう」
道真は山に行き、木を切り倒して、薪を集めた。
「ふう、これで少しは暖かくなってきたかな」
道真はホッとした。それでも限界があった。道真は寺の住職に寒さについて相談することにした。道真は寺の門を叩き、住職に助けを求めた。住職は優しい笑顔で迎え入れ、道真の話を聞いた。
「寒さに悩まれているのですね。それは困りますが、私には一つ提案がありますよ」
住職は道真を縁側に案内した。道真が目を疑う光景が広がっていた。縁側の外には豊かな緑に囲まれた庭園があり、その中央には石の炭桶が置かれていた。
「これは、寺の信仰心によって燃え続ける不思議な炭桶です。この炭桶は何年も前からあるのですが、一度も炭をくべる必要がありません。寺の住人が心からの信仰を捧げることで、炭桶の中には常に温かさを湛えているのです」
「どうか、私にもその炭桶の灯火を分けていただけないでしょうか?」
道真は謙虚に頭を下げた。
「あなたの信念が真摯であるならば、炭桶の灯火は必ずあなたにも託されるでしょう」
道真は心を込めて炭桶に向かい、自らの信念と感謝の念を捧げた。すると、炭桶の中から温かな光が輝き始めた。道真の身体はその光に包まれ、心地よい暖かさが全身を満たしていった。その光に満たされた心地よさを感じながら、道真は内なる声が導くままに行動した。
道真は大宰府の魅力を少しずつ見つけ始めた。小さな町でありながら、豊かな自然と古代の歴史が交差するこの地は、一つ一つの物語が詰まっていることに気付いた。道真は地域の文化や伝統に深く関心を抱き、地元の祭りや行事にも参加した。道真の舞は人々に感動を与え、地元の若者達にも舞踊の指導を行った。
人々は道真のもとで学ぶことを求め、道真の教えによって心を磨かれた。道真は謙虚に自身の信念を伝える一方で、生徒たちの個々の才能や可能性にも目を向けた。道真は人々が自分自身を信じ、自らの夢に向かって進むことを助ける存在となった。
道真は自らの信念と感謝の念を持ちながら、炭桶の灯火を守りながら人々の心に光を灯し続けることを誓った。道真は、自分が持つ炭桶の灯火が、人々に勇気や希望を与える存在であることを心から信じていた。道真の存在は大宰府に新たな活気と希望をもたらし、人々の心に深い感銘を与えた。
「先生、この辺りには温泉があるんですよ」
「えっ? 温泉!」
「はい。行ってみましょうか」
「うん、行こう」
温泉地まで歩きながら、道真は心の中で炭桶の灯火の力を感じた。道真の使命はただ人々の心を照らすだけでなく、癒しと安らぎをもたらすことにもつながっているのだと気づいた。温泉は青々とした森の中にあった。温泉からは湯気が立ち昇っていた。
「うわぁ、気持ちいいな」
道真は満足げな表情を浮かべた。道真は心と体が癒される感覚を味わった。温泉のお湯が彼らを包み込む中、道真は炭桶の灯火の力が湯の中にも宿っているように感じた。この温泉が、人々の疲れた心や病んだ身体を癒し、新たな希望と活力を与える場所であることを確信した。
「それにしても、こんなにのどかな場所なのに、どうして、あんなに厳しい政治が行われているのだろうね?」
「よくわからないけど、何か考えがあるのかもしれないよ」
「でも、あまりにも酷過ぎるよ」
「確かにそうだよね。何を考えているんだろう」
二人は首を傾げた。役人の不正や恣意的な徴税によって農民達は困難な状況に立たされていた。税金の増加など彼らの生活を脅かす問題が山積していた。




