菅原道真は林田湊に立ち寄りたい
道真は山陽道を長門まで進む予定であった。しかし、盗賊団に襲われたことでルートを変更し、瀬戸内海を海路で進むことにした。折角なので讃岐国の林田湊に立ち寄ることにした。道真にとっては讃岐守を退任して以来の林田湊である。林田湊は多くの思い出が詰まった場所であった。道真は感慨深い思いに浸りながら、かつての日々を回想した。
道真が林田湊に到着すると、林田泰郎が近寄ってきた。泰郎は道真の教え子であった。若き日の泰郎は、道真の厳しい指導の下で学問を修め、今は学問所で教えていた。道真は泰郎の努力と才能を高く評価し、互いに深い信頼関係を築いていた。
「おお、これは懐かしい顔じゃのう」
道真は嬉しそうな顔をして迎えた。
「これは先生、お久しゅうございます」
泰郎も笑顔を見せた。
「先生がここにいるということは……、左遷の噂は本当だったのですね」
「はい……。実は、ある者に騙されてしまい、九州へ流されてしまいました」
「なんと! そんなことが……」
「はい。冤罪が悔しくてならないのです」
「なるほどなあ。しかし、あの時平様がねえ……」
「信じられないかもしれませんが事実なのです。とにかく私は、このままでは済まさないと心に決めているんです」
道真は涙ぐんだ。
「分かりました。先生の無実を信じましょう」
「ありがとうございます」
それから二人は昔話に花を咲かせた。道真が京に戻ってからの日々や心の葛藤について語り合った。泰郎は心の中で道真の姿勢に深く感銘を受けながら、自身の未熟さを痛感した。彼は道真に問いかけた。
「先生、私はまだまだ未熟です。どうすれば心の成長を遂げられるでしょうか?」
道真は優しく微笑みながら答えた。
「泰郎よ、人生は終わりのない学びの連続だ。己の心を磨き続けることこそが成長の道だ。成長は一朝一夕にはやってきません。それは日々の努力と自己啓発によって築かれるものです。大切なのは、自分自身と向き合い、内なる声に耳を傾けること。自分の弱さや未熟さを受け入れつつも、それを乗り越えていく覚悟を持つことです」
道真と泰郎は心の成長と人生の学びについて熱く語り合った。泰郎は道真の言葉に深く共感し、自分自身の未熟さを受け入れつつも、進むべき道を模索していた。泰郎は道真の言葉を胸に刻みながら、自分の心の成長に向けて努力する覚悟を新たにした。道真の導きに従い、学問を続けながら、内面の探求にも取り組んでいった。泰郎は技術的な成長だけでなく、心の成熟と深化も遂げていった。
道真は懐かしい場所を巡りながら、かつての讃岐守としての責務や人々への思い出を振り返った。林田郷の人々は道真の訪問を喜び、心からの歓迎を示した。特に道真が助けた村人達は彼の訪問に感激した。道真は地元の人々と交流し、かつての絆を再び深めることができた。
林田湊の滞在中、道真は地元の祭りにも参加した。祭りの賑わいと共に、彼は地域の活気や人々の絆を実感した。道真は祭りの中で舞を披露し、人々を魅了した。彼の舞は思い出と未来を繋ぐ架け橋となり、人々の心に感動と勇気を与えた。道真は林田郷で元気になり、九州へ船旅に出た。




