菅原道真は消費者契約法を定めたい
道真は、墨も滴るいい筆致で、道真は昌泰の消費者契約法を書き上げた。そこには不実告知や不利益事実の不告知の原型となる一節があった。
「欺瞞の告文は、心惑わす邪な術なり。商人が不実を告げ、不利益を告げずに民を惑わして得たる契約は、速やかに取り消すべし」
しかし、当時の法体系「律令」は、国家の秩序維持や犯罪の取り締まりが中心で、個人間の商取引における「公平性」や「消費者保護」といった概念は希薄であった。藤原氏に連なる貴族たちは猛反発した。
「何を寝ぼけたことを。商売とは騙し合い。買った後の『後の祭り』こそが風流というもの。国家がいちいち、民草の買い物に口を出すなど、野暮の極みですな」
藤原時平は、扇子で口元を隠しながら鼻で笑った。
「否!住宅地と見せかけて実は底地が沼地だったとか、重要事項説明を古文の難解な言い回しで煙に巻くなど、人道に外れる!人としての道に外れただまし売りは、律令の精神にも反する。弱き者を守らぬ政治に、梅の香りは宿りませぬ!」
道真は毅然として反論した。その弁舌は、まるで京の都に響き渡る鐘の音のようであった。
「商いに口出しするなど、前代未聞」
「人の心を踏みにじる商いは、真の道にあらず。救済の法を定めねば、民は報われぬ!然れば、この道真、この法を必ずや定める」
道真は押し切った。かくして、消費者契約法は、都中に触れが出されることとなった。都中に触れが出されるや否や、だまされた人々が「キャンセル料を返せ!」「このお札、全然効かないじゃないか!」と市司へ殺到した。
「……恐れながら、この薬売り、『飲めば百歳まで生きる』と申しましたが、うちの爺さまは昨日、餅を詰まらせて……(号泣)」
「不実告知なり! 契約取り消し! 薬代全額返還に加え、慰謝料として米三俵を処す!」
道真の厳しい、しかし愛のある裁きに、都の悪徳商人は震え上がった。
「道真公の前では、小さな文字の注釈(※但し書き)も通用せぬ……」
ある日は、安かろう悪かろうの布を「舶来の高級品」と偽って売られたという老婆の訴えを聞き入れ、契約を取り消した。老婆は奪われた土地を取り戻し、代金も返還されて、涙ながらに道真に感謝した。
消費者契約法の施行により、都の商取引は驚くほど清廉なものへと変わっていった。これまで商取引に不信感を抱いていた人々が、安心して物資を売買できるようになり、市場が活況を呈するようになった。消費者に「不実の告知」や「不利益事実の不告知」と見なされないよう、商品の品質や説明に気を配る商人が増えた。誠実な商売を行う商人が評価され、彼らが市場で力をつけていった。
消費者契約法は地方へも波及していった。京の都での成功事例、特に道真が自ら裁いた契約取り消しの事例などが詳細に記されており、各地の役人らはその内容に驚愕した。都から地方へ旅する商人や僧侶たちが、新法の話を手土産のように持ち帰り、各地で語り聞かせた。消費者契約法の趣旨や具体的な事例が絵巻物として描かれ、寺社などで披露された。
地方では「都の勝手な取り決め」と捉える向きもあった。しかし、実際に消費者契約法が運用され、だまされていた人々が救われる事例が相次ぐにつれて、民衆の間にも法の正当性が理解されるようになった。特に地方の小さな市や村で力を持っていた悪徳商人が、消費者契約法によってその不正を暴かれ、失墜する様子は、多くの人々に勇気を与えた。
「人の心を踏みにじる商いは、真の道にあらず。法とは、民の涙を拭う紙であるべきだ。消費者契約法が、これからも人々の暮らしを守らんことを」
人々は安心して商いを行い、道真の名声はますます高まった。しかし、その功績は同時に、藤原時平ら既得権益層の強い警戒心を招くこととなった。彼らにとって、道真の改革はあまりにも急進的であり、自らの富を脅かすものであったのだ。
「あの男は、国の秩序を乱す」
これが後の「昌泰の変」へと繋がる発端となるが、道真は知る由もなかった。道真の真っ直ぐな消費者保護の精神が、やがて都を揺るがす大きな嵐を呼ぶことになる。大宰府へ向かう道中、道真はふと呟いたとか。
「東風吹かば、匂いおこせよ消費者法。主なしとて、契約忘るな」
道真の消費者契約法は貴族たちの圧力により骨抜きにされ、歴史の闇に消えていった。しかし、道真が蒔いた「消費者を守る」という法の種は、千年以上の時を超え、現代日本の消費者契約法という形で確かに花開いているのである。




