藤原時平は冤罪を企みたい
道真の批判者達は道真の政策や行動を分析し、政治的な弱点を見つけ出すことに注力した。そこから道真の政策に対する批判的な論評や意見を広め始めた。彼らは道真の政治的な弱点を利用し、彼を追放するための正当な理由を創り出そうとした。道真はこれらの攻撃に対して冷静に対応し、自身の政策や理念の正当性を主張し続けた。道真は信念を曲げず、偽りの証拠や中傷に立ち向かっていった。
道真は家柄の低さを批判されたが、自己の学識と実績で対抗した。道真の能力を認める人々も血統意識から抜け出せない人々が多かった。ここから道真が天女の子どもであるという伝承が生まれる。後に平清盛が武家でありながら太政大臣になったが、そこから白河院の子であるとの説が生まれた。それと同じである。
伝承は羽衣伝説と一体化している。近江国の漁師の桐畑太夫のところに美しい天女が舞い降りた。太夫は羽衣を隠して天女と夫婦になり、道真が産まれた。天女は羽衣を見つけ天に帰ってしまい、太夫もその後を追って天に上ってしまう。道真は石の上に捨て置かれ、泣いていたが、体が光に包まれて空に飛び立ち、菅原是善の屋敷の庭に着地した。是善は長男と次男を相次いで亡くし、豊受大御神に子どもを祈願していた。
「私には父母がいないのでそなたを父にしたい」
着地した道真は是善に語り、道真は菅原家で育てられることになった。道真は菅原家で育てられる中で、優れた教育を受け、学問を身につけていった。
時の権力者たる藤原時平は悩んでいた。道真の名声が高まるにつれて、彼の政敵達は焦燥感を抱くようになった。道真の公正な政治への情熱と人々からの支持が、時平の権力にとって脅威となりつつあった。
「やはり道真は邪魔だな。道真を何とかしなければ……何かいい方法はないものだろうか?」
藤原菅根が言った。別の者は深くため息をつきながら答えた。
「道真を排除することは容易ではありません。彼は公正さと人々への真摯な取り組みが評価されており、彼を失脚させることは人々の不満を招くかもしれません。しかし、このまま彼の存在を黙認するわけにもいきません。私達は新たな策略を考えなければなりません」
藤原菅根は藤原時平に注意深く近づき、囁いた。
「時平殿、もし私に許されるのであれば、道真を追い込む一手を考えてみましょう。彼の名声と信念を利用し、彼自身を陥れる罠を仕掛けることはいかがでしょうか?」
時平はその提案に興味を持ちながらも慎重に考えた。
「それは危険な一手だ。道真を陥れるために証拠や噂を利用することになるかもしれない。しかし、それには慎重な準備と信頼できる手段が必要だ。彼を公正さと誠実さで打ち負かすことができるのなら、それが最良の方法かもしれない」
「あいつを冤罪で左遷してしまえばよいのです」
「なるほど、そういう手がありますか!」
「これは名案ですね」
別の者は反対した。
「冤罪の左遷では我々の面子が立たないではないか」
「道真を追放することは正当な理由が必要ではないでしょうか?冤罪をでっち上げることは道義に反する行為です」
「君の言う通りだ。私達の手段は卑劣すぎるかもしれない」
「しかし、このままでは道真の存在が我々にとって永遠の脅威となります」
「うーん……、確かにそうだ」
「道真を追放すれば、我々も気分が良くなります」
「確かに道真の存在がなくなれば私たちの悩みも解消される」
「よし、やってみるか!早速準備を始めよう」
「冤罪を成立させるためには、人々を信じさせる必要がある。我々は道真の評判を傷つけるための巧妙な策略を用意しなければならない」
側近達は意見を出し合いながら、計画の詳細を練り始めた。彼らは道真に対する噂や陰謀を広めるための手段を探り、信頼できる人物を利用することを決定した。彼らは都合よく切り取られた事実と噂を組み合わせ、道真の名声を傷つけるための冤罪の網を張り巡らせていった。




