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宇多天皇は阿衡の紛議を収拾したい

阿衡の紛議は日増しに広まり、その騒動は都の街を縛りつけた。人々はその議論を、市場のざわめきや川のせせらぎと同じくらいに日常の一部と考えるようになった。


宇多天皇は朝廷の混乱に大変困惑した。宇多天皇は広相を呼び、詔勅の文言について話し合うことにした。広相は詔勅の文言が問題となったことに深い責任を感じていたが、同時に佐世の指摘が形式論に過ぎるとの疑問を抱いていた。そこで広相は提案した。

「阿衡に具体的な職掌を持たせることで、彼の存在意義を明確にし、朝廷の運営をスムーズにすることができるのではないでしょうか」

宇多天皇は真剣な表情で提案を受け止めた。彼は朝廷の混乱を収拾するために新たな方策を求めていた。この提案はまさにその糸口となるものであった。

「その提案は興味深いものだ。具体的な職掌とはどのようなものを思案しているのか、具体的に教えてくれ」

宇多天皇は問いかけた。

「阿衡には、朝廷の各部局の監督役としての役割を与えることができます。各部局の業務の進捗状況や問題点を把握します」

広相は熟考しながら答えた。宇多天皇は広相の提案を採用したが、基経はあくまで阿衡という表現を問題にした。阿衡をそのままにして取り繕う妥協案は受け入れられなかった。宇多天皇は困って先の詔を改めた。

「今より以後、百官を指揮し、奏し下すことは先の如く諮り受けよ」

さらに橘広相を免職にした。それでも基経の怒りは収まらず、橘広相を流刑にすることを要求した。宇多は基経の娘の温子おんしの入内を受け入れるなど譲歩を重ねた。基経の遠慮から内裏に入らず、東宮で過ごした。


その後の日々においても、宇多と基経の対立は根深く、朝廷内に微妙な緊張感を巡らせていった。

「ご無沙汰しております」

基経が宇多天皇に軽く頭を下げた。

「お元気でいらっしゃいますか」

宇多天皇は穏やかな笑顔で応えた。二人の会話は穏やかなものだった。しかし、その裏では彼らの間に漂う微妙な緊張感が、朝廷の静けさを一層際立たせていた。周囲の人々には朝廷の床が対立の重みを受けているように見えた。


宇多天皇は疲れ果てていたが、一方で心の中に燻る反発も抱えていた。ある晩、宇多天皇は宮殿の中庭に独り立つことを決意した。中庭は幽玄の美を持ち、滝の流れる小さな庭園に囲まれていた。


「この対立が続くことは望まぬ。しかし、橘広相を流刑にする訳にはいかぬ」

宇多天皇はひとりごちた。


宇多天皇は庭園の石の椅子に座った。星々が静かに輝く夜空を仰ぎながら、宇多天皇の内なる葛藤が高まっていた。遠くでフクロウの鳴き声が聞こえ、その哀愁に心が惹かれた。その哀愁のある鳴き声は、宇多天皇の内なる葛藤と共鳴しているように感じられた。星座が瞬く中で、宇多天皇は心の奥底に眠る決意を覚醒させる瞬間が訪れることを願った。



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