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畠山重忠は道場天満宮を信仰したい

菅原道真は冤罪被害者として正直の神とされ、そこから信義の神、約束履行の神と崇められた。起請文に誓う神には天神が含まれるようになった。北野天満宮の出す牛王法印が起請文として利用された。


菅原道真は鎌倉武士にも信仰された。道真は弓道にも優れ、都良香邸で矢を射て百発百中だったという伝承がある。平将門は道真の神託によって新皇になった。これらの点から武士が道真を信仰することは自然なことであった。


北条義時は源頼朝に使える姫の前に一目惚れした。姫の前に婚姻する際に「絶対に離別しない」という内容の起請文を書いて頼朝に提出した。起請文で誓った神には天満大自在天神、即ち菅原道真も存在した。姫の前は比企氏の娘である。頼朝としては北条氏と比企氏の関係強化という思いもあっただろう。


しかし、頼朝死後に北条氏と比企氏は対立し、比企能員の変で比企氏は滅ぼされる。義時は姫の前と離別した。これには諸説ある。第一に義時を冷酷とする。第二に当時は父親の命令は絶対で、姫の前を殺さなければならないところを離別して逃がしたとする。


義時は離別したことで起請文を破ったことになるが、その罰は義時本人よりも、義時が起請文を出した頼朝に振りかかり、源氏が断絶した感がある。義時の長男の頼時の「頼」は頼朝から授かったものであるが、義時が起請文を破ったことを気に病み、「頼」の字を返上して泰時と名乗った(遠山景布子『義時 運命の輪』集英社、2021年)。


武蔵国の御家人の畠山重忠も菅原道真を信仰した。後に重忠は北条時政によって冤罪で滅ぼされる。その重忠が冤罪で失脚した道真を信仰したことは運命的である。この共通の運命は、彼らの物語を結びつけ、歴史の中での存在と影響力を浮き彫りにする。


重忠は武蔵国足立郡(埼玉県さいたま市桜区道場)にも領地を持っていた。古くから宗教的な意味が宿るこの地には、ある驚くべき出来事が起こった。建久年間に土の中から観音像が発見された。この出来事は、この地が古代から宗教的な霊気を秘めていたことを示すものであった。


この地にはかつて大伽藍が存在していたが、大蔵合戦によってその輝かしい寺院が焼失してしまった。その寺院の本尊だったとされる観音像は、奇跡的にもその焼失を免れて土の中から発見された。この観音像は、その後、守護仏として扱われ、持仏堂(道場)と呼ばれる建物が建てられた。この持仏堂が後に金剛寺という寺の起源となった。道場という地名の由来にもなった。


金剛寺の境内には天満宮も設けられた。これが道場天満宮として知られるようになる。天神信仰において、天神は天満大菩薩として観音菩薩の化身とされ、慈悲と救済の象徴とされている。そのため、観音像を守護仏とする寺院に天満宮が併設されることは自然な流れであった。


鎌倉の最大の宗教施設の鶴岡八幡宮も寺であり、鶴岡八幡宮寺と称された。八幡神は八幡大菩薩となり、仏であった。源頼家の息子で出家した公暁が鶴岡八幡宮寺別当に就任したように僧侶が運営していた。これらは明治時代の神仏分離後に純粋な神社になった。


道場天満宮には、歴史と宗教の奇跡的な交差点がある。観音像の発見や持仏堂の建立、そして金剛寺と道場天満宮の存在が畠山重忠という人物の運命と結びつき、彼の姿が永く語り継がれる一部となっている。畠山重忠の信仰や運命が、道場天満宮を通じて語り継がれることで、彼の存在が後世にも刻まれる。


播磨国矢野荘にも天満宮が存在した。矢野荘では領家と地頭が対立して、下地中分が行われた。下地中分は荘園を領家方と地頭方に分けることである。天満宮は地頭方に含まれたが、天満宮は双方の領域から侵攻を集めた。天満宮で行われる流鏑馬の費用は領家方が負担した。


「下地中分はあくまで年貢・公事の収取や検断などの支配の面に限られ、荘民の生活には大きな影響はなかったようだ」(伊藤俊一『荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで』中央公論新社、2021年、171頁)。領域として一体という感覚が持ち続けられたことは、地頭による荘園侵略は下地中分でも終わらず、続いていっただろう。



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