藤原忠平は天神信仰を広めたい
朝廷は天暦元年（九四七年）に北野天満宮を建立した。北野の地に火雷神が祀られていたことから、菅原道真の霊をその地に祀り、天満大自在天神として神格化した。天満は道真の怨霊が雷神となって天に満ちたという意味である。
天満宮は人々の信仰を集めた。その力強い霊験は、病気の治癒や学業成就を願う者たちの信頼を勝ち得ていった。道真の冤罪に同情が集まったこともあり、天満宮は多くの人々に愛される神社として栄えていった。
「菅原道真公を祀る天神信仰を全国に広めることにいたしました」
「ほう、それは良い考えだな」
忠平は喜んだ。
「しかし、どうやって全国に伝えるのだ？」
「道真殿が讃岐国の人々に慕われていたことはご存知でしょう。その噂を聞いた讃岐の人々が菅原神社を建てて参拝するようになったのです」
「それは素晴らしい！」
忠平は再び喜びの声を上げた。しかし、すぐに不安な表情を浮かべる。
「だが、それだけで足りるだろうか？」
「はい、十分ではありませんね。ですから、全国の寺社にも、道真殿を祀ってもらうようにお願いしました」
「なるほど。これで少しは安心できる」
忠平の顔に笑みが戻った。忠平の家人達は天神信仰の普及の旅に出ることとなった。彼らは古びた手紙や古い絵巻物を持ちながら、全国を巡り、道真公の素晴らしさを語り継いだ。北国の冷たい大地や南の島々へと足を運び、喜びと感謝の言葉を胸に、道真公の教えを広めていった。地域の指導者達や村人達は道真公の智慧と慈悲に心打たれ、共に手を取り、天満宮を建てることを決意した。
道真は信仰の対象となった。天候を操る農耕神としても祀られた。天満宮では五穀豊穣の祈願や雨ごい、水害を鎮める祭りが行われた。ここには讃岐守時代の雨乞いの実績もある。
ある小さな村は毎年のように夏になると干ばつが訪れ、農作物が枯れてしまうという悩みを抱えていた。村人達は必死で水を求めて、川や井戸の水を汲み上げていたが、その努力も虚しく、度重なる干ばつによって村は貧困に苦しんでいた。
人々は心が折れかけていたが、ある日、村に一人の旅人が訪れた。その旅人は忠平の家人であり、道真公の教えを広めるために全国を巡っていた。村人達が干ばつの苦しみを訴えると、彼は優しい笑顔で彼らを励ました。
家人は村人達に、道真公の智慧と慈悲が農作物を守り、水をもたらす力があることを語った。彼らに対して、道真公への信仰と感謝の心を持ち、祈りと行動で農作物を守る方法を示した。
村人達は忠平の言葉に希望を見出し、道真公への信仰を新たにし、祈りと協力で干ばつに立ち向かうことを決意した。彼らは天満宮で五穀豊穣の祈願や雨ごいの祭りを厳かに執り行った。その年の夏、村に奇跡が訪れた。雨が降り注ぎ、渇きに喘いだ大地は潤い、農作物は豊かに実った。村人達は感謝の涙を流した。
村の干ばつの悩みが解消された後も、村人達は道真公への信仰を忘れず、感謝の心を持ち続けました。彼らは毎年、天満宮で五穀豊穣の祈願と雨ごいの祭りを行い、豊かな収穫を得ることができた。
家人は村を去る時、村人達との別れが辛かったが、彼らが道真公の教えを受け入れ、幸福を見つけたことを確信した。彼は他の村々にも同じように道真公の智慧を伝えるため、旅を続けることにした。その旅は果てしなく続いたが、彼は道真公の智慧が人々の心に灯りをともし、農耕に恵みをもたらすことを確信していた。
彼は感謝と喜びを胸に、次の村へと歩を進めた。家人の訪れた村々では、農作物が豊かに実り、人々の心に希望と感謝が溢れるようになった。天神信仰は全国に広がり、天満宮は多くの場所で篤く崇められるようになった。
