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菅原道真は讃岐国府に入りたい

道真は林田湊から讃岐国府に入った。

「ここが新しい職場か……」

道真は自分が新しい任務に就くことで、讃岐国の人々のために尽力することを誓った。こうして讃岐守としての新しい生活が始まった。


道真は厳かな表情で携えてきたに任符にんぷ税所さいしょの官人に与えた。税所は税の収納を担当する係である。

「この任符は讃岐守の赴任を通告する太政官符だ。税所の官人、君に託されるこの役割は重大だ。国の税収を適切に管理し、国の発展に寄与することを期待する」

「了解しました。この責務を全うするために全力を尽くします」

道真は税の管理が国の発展に直結することを理解しており、そのために官人に全力を尽くすように促した。その任務は、ただ税金を徴収するだけではなく、地域の安定と国の繁栄にも直結するものである。道真は税所の官人にその重要性を説き、彼に対して責任感を促した。道真自身も、地域の発展と人々の幸福のために全力を尽くす決意を新たにした。


次に道真は請印しょういんの儀式を行うため、厳かな雰囲気の中で讃岐国の官人達を集めた。広間には讃岐国の国印が飾られ、その威厳ある姿が周囲に静寂をもたらした。


道真は請印の意義について語り始めた。

「讃岐国の命令書には、この国を象徴する国印を押すことが求められます。そのためには、請印の儀式が欠かせません。この儀式がなければ、官人達が国符こくふを発行することはできません。讃岐守が着任していない時でも国府が命令書を出さなければならないことはあります。その場合の命令書は留守所下文るすどころくだしぶみと呼ばれます。しかし、正式な国符は請印の儀式を経ることが必要です」

道真の言葉に、出席者達は真剣な表情で耳を傾けた。請印の儀式の重要性を改めて認識し、彼らはそれを心に刻んだ。道真は静かに讃岐国の印を取り出し、官人達の前に慎重に置いた。その瞬間、厳かな雰囲気が一層広がり、儀式の重みが実感された。


讃岐国の印は櫃に納められ、封印された。出席者達は静かに拍手を送り、道真に感謝の意を示した。彼らは、これからも国の発展と安定に尽力することを誓った。道真は彼らの決意を肯定し、讃岐国の未来に希望を託して儀式を締めくくった。


それから正倉の鍵が道真の前に提出された。これは道真が讃岐国の倉を管理する権限を持ったことを示す儀式である。

「この正倉の鍵は讃岐国の倉を管理する権限を示すものだ。私はこの任務に精一杯努める。まずは、讃岐国の現状を教えてください」

「はい。では早速説明いたしましょう」


「……というわけでございます」

「なんですって?!そんなバカな!」

「えっ?」

「それはおかしいです。こんなことは許されない」

「いえ、しかしこれが現実なのです」

「いいですか?この国は今大変な危機に陥っているのです。それなのに、どうしてこうも悠長なことをしているのですか?もっと早く手を打たなければ手遅れになりますよ!」

「そ、そう言われましても……」

「あなた方はそれでも役人なんですか!?」

「まあまあ落ち着いてください」

「私は落ち着いていますよ。とにかく、このまま放置していたら国が滅びてしまいます。すぐにでも対策が必要ですよ!」

「うーん……。困りましたね。どうしたものでしょうか……」

「何を言っているんだ!!君達はそれでも役人なのか!!」


道真は讃岐国の現状について把握した。

「これは酷い。このままではまずいな」

道真は率直に思った。

「このままでは人々の生活が脅かされ、国の発展が止まってしまう」

讃岐国の現状は道真をショックで震え上がらせた。讃岐の土地は、農民達の苦労が色濃く残る場所だった。道真はその現状を目の当たりにし、自らの使命を強く感じた。

「讃岐国は貧しい国なのか?」

道真は疑問を持った。讃岐国は米や塩、魚、海苔、昆布などが特産品であった。これらの品物は品質が高く、質の良いものであった。ところが、官吏の腐敗によって庶民の生活は困窮を極めていた。讃岐国では約三十年前の天安元年(八五七年)に百姓らが国司の弘宗王ひろむねおうの暴政を訴え出る事件が起きたほどであった。


官人は道真に宴会の開催を求めてきた。

「新しい守が到着したので、三日間連続で宴会を開きましょう」

道真は宴会の開催を断った。

「地元の人々の負担になることを避けたい」

「しかし、宴会は習わしではないのですか」

官人は驚きの表情で言った。

「習わしに固執するのではなく、地元の人々の利益を考えるべきだと思う」

道真は真摯な態度で答えた。官人は驚きながらも、道真の判断を尊重する表情を見せた。



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