菅原道真は泣き叫びたい
「さて、それじゃあ死んでもらいましょうかね」
「何だって？ふざけるな。私は絶対に死なない。死んでたまるか」
菅原道真の心に恐怖が忍び寄ったが、怯むことなく答えた。
「うるさい。お前はここで死ぬんだよ」
晴明が怒りを込めて言った。彼は不気味な印を結び始め、奇妙な言葉を囁いた。すると、まるで時間が止まったかのように、菅原道真の体が突如として動かなくなった。
「しまった！」
菅原道真は心の中で叫んだ。身体の自由を奪われたように感じ、必死に抵抗しようとするが何もできなかった。
「では、さようなら」
場の空気が重くなり、悪意に満ちた気配が漂ってきた。菅原道真たちの周囲に闇が立ち込め、その中から異形の姿が現れた。それは安倍晴明の手によって召喚された妖怪達であった。
「逃げてください！！ ここは私に任せて……」
林田道真が叫ぶ。林田道真は菅原道真を背にし、力強く立ち向かう姿勢を見せた。林田道真は身体を震わせながらも決意を固め、優れた剣術の技を駆使して妖怪たちと戦い始めた。だが、その言葉は途中で遮られた。
「やめて下さい。お願いですから……」
菅原道真は泣きじゃくりながらも、林田道真の勇敢な姿に感銘を受けていた。菅原道真はは心の中で林田道真に感謝の気持ちを抱きながら、自身ができることを考えた。菅原道真は身体の自由を奪われていたが、心は自由であった。菅原道真は自分の精神力を集中させ、思いを林田道真に届けるための方法を探り始めた。
菅原道真は心の中で叫んだ。
「林田道真、私の気持ちを受け取ってください！私は絶対に諦めない！あなたの勇気に励まされ、私も戦います」
心の中で力強く祈りを捧げる道真の思いが、何かしらの形で林田道真に届くことを願った。その瞬間、林田道真は異様な輝きを放つ剣を手に握りしめ、妖怪達に立ち向かった。林田道真の剣術は妖怪たちを巧みに翻弄し、その剣の一振りごとに妖怪たちが消え去っていった。林田道真の身に宿る神聖な力が、妖怪達に対して絶大な効果を発揮していた。
それでも林田道真の身にも危険が迫っていた。妖怪達は次々と攻撃を仕掛け、林田道真を取り囲んでいった。林田道真は息を詰め、菅原道真を守るために最後の力を振り絞った。その時、菅原道真の思いが伝わったかのように、境内に強い光が降り注いだ。それは道真の強い意志が具現化したものであり、妖怪達を浄化する力を持っていた。
光の中に包まれた妖怪達は消え去った。林田道真は疲れ果てた体を支えながら、菅原道真の元に辿り着いた。菅原道真は感動のままに林田道真を抱きしめた。彼は深く頭を下げ、涙で濡れた声で言葉を紡いだ。
「本当にありがとう。あなたの勇気と力が、私を救ってくれたのです」
林田道真は微笑みながら、菅原道真の肩を励ました。
「あなた自身の強い意志と信念が、私たちを守り抜いたのです。私はあなたの友であり、共に戦うことができて光栄です」
「ダメです。諦めてください」
晴明は感動シーンを無視して冷酷に言った。
「そんなぁ?」
菅原道真は泣き叫んだ。
「ぐわあああっ！！！」
悲鳴が洞窟に響き渡ると同時に、菅原道真は衝撃を受けて地面に倒れ込んだ。林田道真はその叫び声を聞き、恐怖と焦りが胸を締め付けた。
「菅原殿！」
林田道真は叫びながら、菅原道真のもとに駆け寄った。林田道真が菅原道真の傍に辿り着くと、愕然とした表情を浮かべた。菅原道真の体には深い傷が刻まれ、血が流れている。菅原道真の命が急速に衰えていくことが分かった。
林田道真は必死に菅原道真を支えながら、菅原道真の手を取り、優しく握りしめた。菅原道真は苦悶の表情を浮かべながら口を開くことができなかった。菅原道真の命が尽きる寸前であり、菅原道真が語ることは叶わなかった。
菅原道真の顔には無念さと悔しさが交錯し、その瞳からは闘志と正義の意志がにじみ出ていた。彼は冤罪を晴らすために戦い続けてきたが、その最後の最後で敗北を迎えた。最後の最後まで冤罪を晴らすことを望んでの無念の死であった。林田道真は悲しみに打ち震えた。
