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転生先でダブルブッキング  作者: 光岳 擇也
9/13

ダブルブッキング①

 ~20XX年7月25日金曜日 重本ホテル~


 17:00フロントに若い男性4人が来た。フロントの女性が対応する。


 「予約した古月ふるつきドミノだけど。」


 女性はその名前に聞き覚えがあった。


 (あの忙しい時に電話予約した人だ。)


 女性は心の中では文句を言いたいと思っているが、落ち着いて対応する。


 「古月様、お待ちしておりました。では、こちらの用紙にお名前、ご住所、電話番号をご記入ください。」


 古月が「はいはい」と面倒くさそうに記入する中、女性は部屋の鍵を準備するためパソコンに目をむけた。しかし、古月の名前は無く、予約した部屋には別の客の名前が入っていた。


 (えっ!?私、確か832号室を予約したはずよね!?)


 女性は自分が予約した時の事を思い出していた。あの日はとても忙しく、832号室に古月の名前を入れ、あとは確定をする時に・・・


 「すみません!終わりました?フロントヘルプお願いします!!」


 フロントヘルプに呼ばれたのだった。


 (もしかして、予約確定押してなかった?)


 女性の血の気が引いていく。ダブルブッキングしてしまった。ダブルブッキングとは、ホテルの部屋などで二重に予約を受け入れてしまう事だ。

 この場合、古月の予約は確定されていなかったので、古月を当初取った部屋ではなく、別の部屋にしなくてはならないのだが


 (今日は満室、空き部屋がない!)


 女性が慌てる中、古月の用紙の記入が終わった。


 「古月様、少々お待ちください。」


 「なに?さっさと部屋の鍵が欲しいんだけど。」


 「申し訳ございません、実は・・・」


 と自分のミスによりダブルブッキングしてしまった事を古月に伝え、女性に男たち4人の罵詈雑言が浴びせられた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「嬢ちゃんの剣、仕上がってるぜ!」


 翌朝パロットの店を訪れたリコは、疾風の名前が刻印された剣を受け取る。

 リコはポシェットから宝玉を出すと


 「宝玉に触れつつ、もう片方の手で自分の剣に触れて、剣の名前を口にしな。」


 リコはパロットに言われた通りに、片方はほもう片方は剣に手を触れた。


 「疾風」


 リコが自分の剣の名前を口にすると、宝玉から光が出て、剣のステータスが表示される。


 「これで剣の状態を知る事が出来る。だが、剣自体はレベルを上げたり、スキルを習得する事はねぇ。嬢ちゃんが武器の強化スキルを習得すれば、ステータスも上がるって事だ。」


 「なるほど、分かりました。ステータスをこまめにチェックして、異常があったら修理をまたお願い出来ますか?」


 「もちろん、それは任せておきな!」


 「これからも色々とよろしくお願いします。」


 リコはパロットの店を出て、冒険者ギルドに顔を出した。そして、クエスト依頼の掲示板を見る。


 「なにかいいクエストは・・・」


 ひとつひとつの依頼書の内容を読み、その中の1つの手配書を手に取る。


 「スライム討伐30匹。倒すモンスターがまたスライムなのは気が進まないけど、報酬がスキルポイント200。お金じゃなくて大量のスキルポイントがもらえるのは大きいよね。」


 基本スキルポイントがもらえるのはレベルアップによるもので、他に買いたいものが現状無く、宿代も払うお金は充分にある為、このクエストに魅力をリコは感じた。


 「このクエスト受けたいんですけど。」


 リコは受付のタンタンに自分の取った依頼書を渡した。


 「は、はい、それでは依頼書の上に手を乗せてください。」


 以前とは別人のような対応は、ギルド長オルガの叱咤によるものだろう。リコの機嫌を損ねない様にタンタンは気を使った。


 「普通に接していいよ。もう怒ってないから。でも、嘘ついたり騙したりはしないでね。」


 リコの許しを聞いてタンタンの目が潤む。


 「ありがとうございます、リコさ~~ん!もう貧乳長身ババァがねちっこくって~~!!」


 「タンタ・・・」


 「大体、言う事も古臭いし、ケチ臭いし、猫かぶりでホントにウザくてぇ~~!!」


 「タンタン・・・ご愁傷様。」


 そう言ってリコが目を閉じた。


 「えっ!?」


 タンタンがリコの言葉に疑問を持つが、タンタンの後ろから黒いオーラを発する女性がタンタンに笑顔で声を掛ける。


 「貧乳長身ババァって、誰の事でしょうか?」


 タンタンが恐る恐るゆっくりと後ろを振り返る。リコは事の顛末を見届けずに、冒険者ギルドを出るが「ヒギャアアアアァァァ!!!」という悲鳴が中から聞こえた。

 気を取り直してリコはクエストクリアの為、スライムの出現場所に足を運んだ。そして、出現場所に到着したのだが、数多くのスライムの中に1体色違いのスライムを見つける。


 一目見て色違いに気付くリコ。それもそのはず、その色は


 「金色のスライム!?」


 レアモンスターであろう金色のスライムを前に、リコは見た時には驚いたが、心を落ち着かせて考える。


 「オルガさんはレアモンスターは通常のモンスターの3~5倍の強さって言ってた。私は今レベル6。レベル1でも一撃でスライムを倒す事が出来た。魔法もフルで打つ事が出来る。そして、スキルもいくつか使えるようになってるし、いざとなったら、電光石火のスキルで領域外まで逃げる事も出来ると思う。」


 そう呟いて、リコは金色のスライムの領域手前まで歩を進める。そんな中、冒険者3人がリコに気付いた。距離は遠いが、1人の冒険者が金色に輝くスライムと戦おうとしている事は想像できた。


 「おい!あれってスライムのレアモンスターだろ!」


 「間違いねぇ!冒険者1人だし、戦闘が始まったら俺たちも領域に入るのに急がねぇと!」


 「やめとけ!」


 モンスターの戦闘において、その領域には最大4人まで入ることが出来る。リコは単体で金色のスライムと戦おうとしているので、その領域には3人の空きがある。

 リコの戦闘に加わり、おこぼれをもらおうと躍起になる2人だったが、残りの1人が制止する。


 「回復や蘇生が出来ねぇ俺たちが戦えるシロモノじゃねぇ。それとも、誰が犠牲になっても恨みっこ無しで、戦闘に参加するってんなら止めねぇが。」


 「そ、そんなにあのレアモンスター強いのか!」


 「そこまでは強くはねぇさ。だが、犠牲無しに勝てる見込みがねえ。」


 「マジか・・・。」


 そんな会話の内容を全く知らないリコ。そして、リコは金色のスライムの領域に踏み入れ、気合を入れる。


 「いざ・・・勝負!!」


来週更新予定と言っていましたが、筆がのってしまいました。文字数少ないですが、キリが良かったのでここまでにして更新となりました。この作品の題名でもあるダブルブッキング、ついにタイトルにするところまで進む事ができました。これもご愛読くださっている皆様のおかげです。次回も楽しめるような展開に出来たらと思っていますので、これからも宜しくお願いします。

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