出現条件
無詠唱魔法と詠唱魔法を成功する事が出来たリコは、オルガと街に戻り、冒険者ギルドの応接室に通された。
「改めまして、魔法の成功おめでとうございます。」
「オルガさんのレクチャーのおかげです。ありがとうございます。」
「お礼には及びません。さて、リコさん、今日のご予定は?」
「もちろん、スライムをあと50匹倒して、宝玉を手に入れる事です。」
「わかりました。その上で、リコさんに何点か注意事項をお伝えしなければなりません。」
一刻も早くギルド長オルガからのクエストクリアに向け、スライム討伐に行きたいリコであったが、一旦冒険者ギルドまで戻って話をするという事は、モンスター討伐において重要な事であろう事をリコは理解していた。
「まずは魔法についてです。リコさん無詠唱魔法と詠唱魔法、MPの消費はどちらが多いと思いますか?」
「普通に考えれば、威力の高い詠唱魔法だと思いますけど、その威力の高さは詠唱するリスクによるもの。もしかして・・・。変わらないとか?」
「理由も含めて正解です。本当にリコさんには驚かされます。リコさんの言う通りどちらも消費するMPは変わりません。そして、消費するMPはどの魔法でも1となります。リコさんのレベルは今5ですから、リコさんのMPは3となります。レベルがある段階まで上がれば、MPも上がりますし、スキルでも上げる事が出来ます。」
「そうなると、今日私が打てる魔法はあと1回という事ですか。」
と考えたリコは、もう1つの力についての疑問が上がる。
「スキルについてはどうなりますか?スキルを使用するのにMPがかかるとか。」
「良い質問ですね。基本スキルはMP消費する事はありません。しかし、スキルによって使用条件にMPを消費するスキルもありますが、それはスキルの詳細を見た時に書いてありますので、見落とさなければ問題ないと思います。」
「私が昨日習得したスキルにはその記述は無かったはず。これからは、スキルの習得は詳細をよく見て習得しないとね。」
「もう1点、これは本来であれば、モンスターと戦う前には絶対に知っておかなければならない事だったのですが、稀にモンスターの色違いがいる事があります。」
「色違いのモンスター?」
「はい、レアモンスターと言われるもので、元のモンスターよりもかなり手強いモンスターです。その分、倒した時の報酬も大きく、そのモンスターを倒すことでしか獲得できないスキルもあります。」
「それはとても魅力的だとは思いますが、通常のモンスターと比べてどの程度の強さなのか。迂闊には手は出せませんね。」
「通常のモンスターの3~5倍の強さと考えて良いでしょう。ただ単純な強さだけでなく、使ってくる技や特性も違ったりもするので、ご注意を。」
「わかりました。そう考えると、昨日レアモンスターに遭遇しなくて良かったです。」
「もし遭遇してしまっても、領域に入らなければ戦闘は始まりませんので、落ち着いて対処してください。以上になります。他に分からない事が出てきましたら、いつでもお声がけください。」
「はい、ありがとうございます。」
オルガにお礼を言って、リコは再び街の外へと出ていった。
「とにかく、今日の目標はスライム残り50匹討伐。スライムなら魔法使わずに倒せるから問題なし。レアモンスターに注意はしないとだけど、稀に出現ってオルガさんも言ってたし、見かけても領域に入らなければ大丈夫。」
自分に注意点を言い聞かせている内に、スライムと遭遇。「ふぅ」と軽く息を吐いて自分を落ち着かせ、スライムの領域に足を踏み入れ、戦闘が始まる。その刹那
「扇風機!」
今日打てる残り1回の魔法を、無詠唱でスライムに放つリコ。リコから放たれた魔法はスライムを見事に切り裂いた。
「これで今日は魔法は使えない。魔法使える状態だと欲が出るかもしれないし、ちゃんとモンスターに魔法を当てる事も出来た。」
これであとは残り49匹のスライムを、ひたすら剣で倒す事に絞ったリコ。スライムを倒し続けて簡単に目標50匹討伐を達成した。
「もう終わっちゃった。まだ時間も、当然体力もある。それなら残りの時間は、あれを試してみようかな。」
そう言ってリコはスライム50匹討伐後、約4時間ある行動をしてから冒険者ギルドに戻ったのだった。戻ってきたリコを応接室へ迎えたオルガは
「随分と時間が掛かったようですが、なにかございましたか?」
「いえ、ちょっと試したい事がありまして。」
とリコは微笑み答える。
「そうですか、ではこの紙に手を乗せてください。」
オルガに言われ、リコはテーブルに置かれた紙に手を乗せる。すると紙とリコの手の間が白く光った。
「スライム討伐数100匹の確認がされました。おめでとうございます。」
そう言ってオルガはリコに宝玉を手渡した。
「リコさん、分かっているとは思いますが、こちらの宝玉はとても貴重な物です。リコさんが宝玉を持っている事は私しか知りませんが、紛失や盗難などされた場合、再度差し上げる事はできませんので注意してください。」
「はい、わかりました。」
そう言ってリコは受け取った宝玉をポシェットに入れた。パロットの妻サリアが選んでくれた装備にはポシェットが付いていて、いくらでも物が入る不思議な物となっていた。
ポシェットへの出し入れも購入者しか出来ない魔法加工されているそうで、重さも一切感じない優れた物だ。
リコは冒険者ギルドを出ると、そのままパロットの店へと顔を出した。
「来たか嬢ちゃん!それで宝玉は?」
パロットに言われ、リコはポシェットから宝玉を取り出す。
「やったな嬢ちゃん!そしたら剣のステータスの見方の前にやる事がある!剣に名前を付けてやるんだ!」
「名前?」
「宝玉に自分の武器の名前を言う事で、ステータスを出す事が出来るようになるんだよ。」
「なるほど。」
「名前が決まったら、俺がその剣にの持ち手に名前を彫る。特別な手法だから銀貨2枚になっちまうが、大丈夫か?」
「はい、それは大丈夫です。名前か・・・。」
剣の名前。これから長く共にする相棒の名前をリコは考える。モンスターを切り裂き、自分が馴染んでいるラケットのように振る事が出来る剣。しばらくした後、
「決まりました。疾風にします。」
「なかなかいい名前だな。よし!任せろ!ただ時間をくっちまうから、また明日来てくれるか?」
「分かりました、お願いします。」
リコはパロットにそう言って頭を下げ、宿へと戻った。その際、ミアンに言われた通りに誰にも見られていない事を確認し、裏口から自分の部屋へと戻った。
部屋の電話を取り、ミアンへ帰宅の報告をすると、ミアンがリコの部屋を訪れた。
「リコさんお帰り。もう少ししたら食事になるからね。その前に、裏口からの出入りの理由について教えるね。」
「お願いします。」
「リコさんが駆け出しの冒険者ながら、スライムを何匹も討伐した事は他の冒険者に知られてる可能性があるの。そうなると、ギルド長のクエストをクリアして、宝玉を持っていてもおかしくないって考えて、自分じゃ手に入れられないから奪おうとする輩もいるわけ。」
「そっか。確かにスライムは倒せるけど、まだまだレベルは低いし、襲われたら敵わない。モンスターだけじゃなくて、他の冒険者にも注意しないといけないんだ。」
「そういう事!だから、くれぐれここの出入りは注意する事!」
「色々配慮してくれて、ありがとうございます。」
「お礼なんかいいって。じゃあゆっくりしてね。後でご飯出来たら持ってくるね。」
そう言ってミアンは部屋から出て行った。リコは少しの時間ひと息入れると、ポシェットから宝玉を取り出した。
「津久間リコ」
宝玉に手を乗せ自分の名前を口にし、ステータスを確認する。
「レベル6か。スライム50匹倒しても上がったレベルは1だけ。明日からは違うモンスター討伐も考えないとかな。」
レベルが上がるに連れ、次のレベルアップにかかる経験値も増え、スライム討伐ではレベルアップの効率が良くないと感じたリコであった。しかし、リコはステータスの確認だけではなく、もう1つ確認したい事があり
「獲得可能スキル」
と口にすると、昨日には無かったスキルが増えていた。
「電光石火」
そう呟き、電光石火の文字に触れる。
「戦闘中のすばやさが3倍になる。やっぱり間違ってなかったようね。」
スライム討伐後の4時間、リコはスライムの領域に入り、広がった領域をひたすらに出て戦闘を回避する事を繰り返していた。
「これでモンスターを倒すだけが、スキルの獲得条件じゃない事が証明出来た。」
リコはそう言って電光石火のスキルを習得した。
「明日はパロットさんから疾風を受け取って、武器のステータスについて聞く事と、冒険者ギルドでクエストでも受けようかな。あとはそろそろスライム以外のモンスターと戦ってみようかな。」
リコは明日の予定を確認し、食事に風呂を済ませて眠りについた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
~リコが眠りについて1時間後~
静かな寝息をたてているリコの寝息が不意に止まる。そしてベッドから起き上がりポシェットから宝玉を取り出す。
宝玉に手を乗せて自分の名前を口にし、ステータスを確認する。
「獲得可能スキル」
次に、自分の獲得可能スキルを確認する。
「そういう事か。」
そこから1時間、スキル画面を操作し終え、眠りについた。
来月あたりから、活動報告に更新予定日やキャラクターの設定などを書かせていただこうと思っています。次の更新につきましては来週を予定しています。引き続きご愛読いただければと思いますので、これからも宜しくお願いします。