表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先でダブルブッキング  作者: 光岳 擇也
7/13

リコの魔法「〇〇〇」!

 「まぁこの程度の刃こぼれならすぐに直せるが、もう少し傷んでから出した方がいいんじゃねぇのか?傷の状態に関わらず修理費は銅貨5枚だ。それに、大体の冒険者は武器がおしゃかになるまで使って、新しい武器を買ってるぜ。」


 リコから渡された剣の状態を見て、パロットは助言する。


 「いえ、この剣の傷は私が戦闘に関して無知だった事でついてしまったものです。それに、パロットさんが私の為に選んでくれた思入れのある剣ですから。」


 「嬢ちゃんがそういうなら、俺は文句はねぇが。」


 「それとパロットさんに聞きたい事があるんですけど。」


 リコはパロットに武器の耐久力アップのスキルを習得した事、スキルの詳細に耐久力のランクを1あげると書いてあった事を話した。


 「もうそんなスキルを習得したのか!?まだ教えるのは早いと思って言わなかったんだがな。嬢ちゃん、覚える事多すぎて頭ごっちゃにならねぇか?」


 「うーーーん、大丈夫だとは思いますが、確かに1つ1つ整理する時間は欲しいですね。」


 「だよなぁ・・・よし!お得意様の嬢ちゃんにとっておきの情報を教えてやる!」


 「おぉ~!!」


 とっておきの情報という言葉に、リコは目を輝かせた。


 「冒険者ギルドにある宝玉、実はギルド長からのクエストをクリアすると手に入れられるんだぜ!」


 その言葉にリコの表情は苦笑いに変わり


 「そのクエスト、さっきオルガさんから聞きました。」


 「え?」


 「しかも半分クリアしてしまってるみたいです。ハハ・・・」


 「えええええぇぇぇぇぇ!!!?」


 リコの剣の刃こぼれだけを見て、パロットはリコが討伐したモンスターがスライムだとは思っていなかった。

 しかし、ギルド長のクエスト内容をパロットは知っており、その半分をクリアしているという事は


 「スライム50匹倒してるのか!?」


 「はい、そうなります。」


 「せっかくの俺のとっておきの情報が・・・」


 「なんかすみません・・・」


 「あの宝玉が自分のステータスだけじゃなくて、武器のステータスも見れる事も聞いてるだろうし・・・はぁー・・・」


 「ほんとにすみませ・・・・って、えええええぇぇぇぇ!!?」


 それは知らなかった。危うく、ついつい流され聞き逃すところだった。


 「なんだ!?ギルド長から聞いてねぇのか?」


 「初耳ですっ!!」


 「なら、嬢ちゃんの役に少しは立てたようだな!そしたら、そのクエストをクリアして宝玉もらう事が出来たら、その時またこの店に来てくれ!」


 「わかりました!明日中にクリアして宝玉持ってきます!」


 「今日はもう休むんだろ?武器は明日の朝までには直しておくが、それでいいか?」


 「武器はそれでお願いします。それとその・・・今日はもう休みたいんですけど・・・その・・・宿を取っておくのを忘れてまして・・・」


 リコの言葉を聞いてパロットは「ぷっ」と吹き出した。


 「ハーーーッハッハッハ!!」


 「笑わないでくださいよ~~~!!」


 「いやぁ~わりぃわりぃ。そんだけしっかりしてる嬢ちゃんが、まさか泊まるとこを決めてなかったなんてポカをすると思ってなくてな!可愛いとこもあんじゃねぇか!」


 「う~~~っ・・・」


 とリコは頬を膨らませた。


 「よし!ならついてきな!娘がやってる宿があるんだ。俺から頼めば今からでも手続きしてくれるはずだ!」


 「助かります、ありがとうございます!」


 リコはパロットに案内され、彼の娘ミアンが営む宿屋へと入った。


 「お父さん!?」


 「おぉ、遅くに悪いな。部屋の空きってあるか?実はな・・・」


 パロットはミアンにリコの事を紹介しつつ、リコが宿を確保していなかった事を説明した。母親であるサリア似のミアンは快くリコを受け入れてくれた。


 「部屋は2階になるわ、こっちよ。」


 とミアンがリコを案内する。リコはパロットに手を振ってお礼を言い、ミアンについていった。


 「この部屋よ。」


 「え?ここ?」


 案内された部屋の扉の前で、リコは少し後ずさりした。


 「この部屋「修理中」って札が掛かってますけど・・・。」


 「お父さんからリコさんの事頼まれたからねぇ。」


 そう言ってミアンは扉を開ける。すると扉の中は部屋ではなく通路になっていた。しかも、その通路には穴が開いていて、とても歩ける通路ではない。


 「こ、、、ここを進むんですか!?」


 おびえるリコに、ミアンはクスッっと笑い


 「大丈夫だからついてきて。」


 とウインクをする。穴の手前まで歩を進めると、穴を避けるでも飛び越えるでもなく、ミアンは穴へと足を踏み入れた。


 「ミアンさん!!」


 リコは慌ててミアンが穴に落ちないように手を差し出すが、


 「あれ?穴に立ってる?」


 「驚かせてごめんね。でもこれ穴じゃないのよ。」


 リコは近くて穴を凝視すると


 「これ、穴の絵?」


 「そう、だから扉の前に修理中の札が掛かっていて、この通路の穴を見れば不逞な輩はここに入ろうと思わないわけ。」


 「しかも通路の明かりも暗めだから、本当にここに近づかないと、穴が絵である事はわからないわね。」


 「そういうこと。さ、進みましょ。」


 通路の角を曲がって突き当りの扉の前でミアンが足を止めた。


 「この部屋だよ。リコさん扉に触れて自分の名前を言ってみて」


 リコは言われた通りに扉に手を当て、「津久間リコ」と口にした。扉の中が白く光り、やがて光は消えた。


 「終わったみたいね。さぁ、中へどうぞ。」


 とミアンが部屋の扉を開いた。するとリコの目に信じられない光景が移った。


 「私の部屋?」


 「この部屋は前の世界住んでいた部屋の記憶を、リコさんの魂から読み取って再現してくれる部屋なの。と言っても、ベッドや鏡、壁紙とか照明くらいだけどね。」


 リコが以前にの世界で住んでいた部屋には、テレビや冷蔵庫といった電化製品や、クローゼット内に私服や仕事服などあったが、今のこの世界にはない物なので、再現は出来ないということなのだろうとリコは納得した。

 それでも住み慣れた部屋を再現したこの部屋は、リコの気持ちを落ち着かせてくれた。


 「ありがとうございます。でも、こんなにいい部屋に泊まらせてもらって大丈夫なんですか?」


 「言ったでしょ、お父さんから頼まれてるって。そして、1泊食事付きで銅貨5枚でどうだ!」


 「ど、、、銅貨5枚!!?」


 「え!?高すぎた!?」


 「違います!安すぎです!!パロットさんもサリアさんもミアンさんも、もっと自分の儲けを考えてください!」


 リコはミアンを説得するように詰め寄った。リコからしたら毎日スライム5匹倒すだけで、ずっとこの部屋で暮らせてしまうのだ。

 今日にいたってはスライム50匹倒しているので、初日にして10日分の家賃を払う事が出来る。OLで働いていたリコからすれば、考えられない事だった。


 「せめて銀貨1枚は受け取ってください!」


 リコは冒険者ギルドを出る前に、タンタンから銅貨50枚分の銀貨5枚を受け取っていた。そこから3枚をミアンに出した。


 「今日から3日分のお金です。」


 「いやいや、倍のお金なんて受け取れないよ。しかも今日の分は余計に銀貨1枚なんてもらえないって!」


 「パロットさんから私の事頼まれたんですよね?」


 「そ、そうよ、だから他の人と同じ料金だけど、特別なこの部屋を案内したの。」


 「この部屋については本当に感謝しています。慣れない部屋よりも、ゆっくり休息取れますから。その分、料金は見合った金額でお支払いさせてください。その方が、またこの部屋に泊まる為にモンスター討伐がんばろうっていう気になりますから。」


 「そう?・・・わかったわ。それじゃあ、ゆっくり休んでね!それと、ご飯はもう済んでるんだよね?」


 「あっ」


 泊まる問題も解決され、ミアンからご飯の話を聞き、今日何も食べていない事を思い出した。思い出した瞬間、ぐぅ~~~っと腹を鳴らすと


 「忘れてました。。。ご飯ってまだありますか。。。?」


 と涙目でリコはミアンに聞いた。


 「どんだけーーーーー!!」


 パロットから抜けているところもあると聞いていたが、さっそく目の当たりにしてしまった。ミアンは「いいよ、用意してあげる!部屋で休んでて。」と笑いながら言ってくれた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 リコがベッドに横たわって休んでいると、部屋にある電話が鳴った。リコがその電話を取ると


 「ミアンだけど、まだ少し時間かかりそうだから、お風呂でも入って来ちゃえば?」


 「お風呂はどこに行けば?」


 「あぁそっか、ごめんごめん。部屋の入口から見て左のドアが浴室よ。どうぞごゆっくり。」


 リコはそう言われ、浴室のドアを開けた。浴室もリコが利用していた浴室にそっくりで、タオルと部屋着がたたまれておいてあった。

 とりあえず今日流した汗を流すためにシャワーを浴びた後、部屋着に着替えて部屋へと戻った。すると、コンコンと部屋の入口からノックが聞こえ、リコが返事をするとミアンが料理を持って入ってきた。

 テーブルに並べられたのは、チャーハン、エビのチリソース、タマゴスープにデザートの杏仁豆腐だった。


 「おいしそう!」


 「そう?良かった。食べたら食器は部屋の前に出しておいて。後で回収するから。」


 そう言って、ミアンは戻っていった。リコは食べながら


 「この世界でも食の文化は似たようなものなのかな?そういえば露店で並んでた食べ物も知ってそうなものだったし。」


 と口ずさみ、食事を終え、言われた通り食器を部屋の前に出した。


 「明日はオルガさんからのクエストをクリアして、宝玉を手に入れないとね。その為に今はゆっくり体を休めよう。」


 そう言ってリコは部屋の明かりを消し、眠りについた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 翌日リコは起床し、外に出る支度をしていた。ミアンからの電話で朝食を部屋の前に置いてある事、外出する時は浴室と反対側にあるドアを開ければ、店の裏口から出られる事を教えてもらった。

 リコは朝食のパンとコーンスープを食べ、食器を部屋の前に出し、言われた通りに店の裏口から外に出た。その理由は今日帰ったら説明するとミアンが言っていた。

 パロットの店に顔を出し、パロットから剣を受け取る。刃こぼれが直っている事を確認して銅貨を5枚出した。


 「まいどあり。じゃあ嬢ちゃん宝玉を手にしたら、また顔を出してくれ。」


 「はい、必ずおじゃまします。それとミアンさんの宿を案内してくれて、ありがとうございました。」


 「気に入ってくれれば何よりだ!今日も頑張ってこいよ!」


 リコはパロットの店を後にし、冒険者ギルドに入った。


 「早いですね。おはようございます、リコさん」


 いつもならタンタンや他の受付が声を掛けるはずだが、オルガが入口の近くで声を掛けてくれた。

  

 「昨日の件がありますからね、念には念を入れまして。」


 「さすがにあれだけ絞られれば、ないと思いますけど・・・」


 「では、魔法について説明しますので街を出ましょう。」


 そう言って、オルガに連れられてリコは街の外に出た。オルガは人気の無い場所で歩きを止めた。


 「この辺りで良いでしょう。」


 「これで魔法が使えるようになるんですね。ちなみにオルガさんはどの魔法が得意魔法なんですか?」


 「私は冒険者ではありませんから、魔法は使えませんよ。」


 「え?」


 「ですが魔法の使い方は教える事ができます。」


 「なるほど、では早速お願いします。」


 オルガの魔法を見れないのは残念だが、教えてもらえるのには変わらない。リコは気合を入れ直し、オルガに頭を下げた。


 「まずは無詠唱魔法ですね。リコさん得意魔法である風をイメージし、どちらの腕でも構いませんので、魔法を打ちたい方角へ向けてください。」


 オルガに言われ、リコは右腕を真っすぐ前に出し、風をイメージした。するとリコの手の前に魔法陣が出現する。


 「これって。」


 「魔法陣が出たら打つ準備が出来たという事です。そして、その魔法陣から魔法が放たれるイメージが出来れば、魔法を打つことが出来ます。」


 「魔法が放たれるイメージ・・・中々思い浮かばないなぁ・・・。」


 そういうとリコは少し考え、「そうだ!」と一つのアイデアが浮かんだ。


 「魔法の名前を唱えれば、自然と魔法が放たれるイメージになるかも!風の魔法だから・・・」


 リコは風の魔法に結び付く名前を模索した。そして、


 「扇風機!」


 魔法陣から扇風機の風・・・ではなく風の刃が放たれる。初めての魔法成功に喜ぶリコだが


 「あの・・・せんぷうき?というのは?」


 「私の前の世界にあった、風を発生させる機械です!」


 リコもゲームをやっていた人間であるが、基本はパズルゲーム。RPGの作品の名前くらいは知っているが、やった事はなく、もちろん魔法の名前もしらなかった。

 とはいえ、テニスをやっていてライジングショットという必殺技を持っているのだから、もっとましな名前を思いついても良いものだが、リコには扇風機という名前が一番イメージしやすかったようだ。


 「そ、、、そうですか。まぁ、なんにせよ魔法は成功しました。今のが無詠唱魔法です。そして、次は詠唱魔法になります。」


 「詠唱魔法。」


 「詠唱魔法は一定時間その魔法をイメージしながら、言葉を口で唱え続けなければなりません。その言葉が途絶えてしまったり、イメージが途切れてしまうと最初からやり直さなければいけなくなります。」


 「そっか、無詠唱はイメージさえできれば打つことは出来るけど、詠唱魔法は条件が整わないと打つことが出来ないんですね。」


 「その代わり、条件が揃って詠唱魔法を打つことが出来れば、その威力は無詠唱の3倍もの威力となります。」


 「一定時間というのはどのくらいで、唱える言葉というのはどのようなものですか?」


 「詠唱する言葉の数や難しさによって時間は変化します。言葉は決まってはいませんが、詠唱が途絶えないように、自分の打ちたい魔法の事を、口に出し続けた方が成功しやすいかと思われます。打つ準備が整った時、さっきの魔法陣が3倍の大きさになります。そこから先は無詠唱魔法を打つ時と同じです。これは中々難しいので、失敗したとしても恥じる事はありません。詠唱魔法は戦闘本番では、より打つ事が難しく、武器での攻撃と無詠唱魔法の攻撃で敵を倒すことが一般的ですので。」


 「要は、打ちたい魔法をイメージし続け、なるべく多くの言葉を詠唱する。魔法陣が大きくなったら魔法を打つ事が出来る。で合ってますか?」


 「簡単に言うとその認識で大丈夫です。」


 「魔法をイメージは出来るけど、その魔法の事を口に出し続けるのは難しいよね。それなら魔法をイメージする事と、詠唱する言葉の内容は別に考よう。言葉数を絶やさず、難しい言葉ってなると・・・」


 リコは目を閉じ考える。そして、またアイデアを閃き、「いきます!」と目を開け、右腕を前に出した。


 「風をイメージ・・・」


 リコの手の前に魔法陣が出現する。ここまでは無詠唱魔法と同じ流れだが、ここからリコの詠唱が始まる。


 「生麦生米生卵・青巻紙赤巻紙黄巻紙・カエルぴょこぴょこ3(み)ぴょこぴょこ あわせてぴょこぴょこ6(む)ぴょこぴょこ・・・」


 リコの詠唱という名の早口言葉を聞いてオルガは「へ?」と表情を崩す。しかし、リコは構わずに詠唱し続ける。


 「坊主がびょうぶに上手に坊主の絵を書いた・となりの客はよく柿食う客だ・バスガス爆発・新春シャンソンショー・東京特許許可局・・・」


 その様子に呆然とするオルガだが、その時リコの魔法陣が3倍の大きさに広がった。オルガが我に返ってリコに叫ぶ。


 「準備が整いましたよ!リコさん!」


 「扇・風・機!!」


 先ほどの3倍の威力の風魔法がリコから放たれた。その威力に詠唱魔法の成功を確信し、オルガも素直に喜びたいのだが


 「何か素直に成功を喜べませんね。なんでしょう、この気持ち。」


 とモヤモヤするのであった。

リコというキャラの個性を出せた回となりました。これからリコだけではなく、他のキャラにも色々な個性を出せたらなぁと思っています。次回の更新は1~2週間後になる予定です。読者様が増えてきたらSNSで更新のお知らせ等も考えていますので、これからも応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 早口言葉全く魔法と関係ないなwww メッチャウケたwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ