転生
「異世界・・・?転生・・・?」
リコは混乱していた。異世界とはなにか。日本でも地球上でもない世界?想像すらできない。また、転生とはなにに転生をするのか。人間なのか、それ以外の動物の可能性も、、、いや、そもそも異世界なのだから、リコが想像できるものかもわからない。
「だいぶ混乱しているようですね。」
頭をかかえるリコを見てサリーが声をかける。
「異世界と転生と言われ不安ですよね。何処へ行かされるのか。何に転生するのか。」
「うぅ・・・」
うなだれるリコ。しかし、その様子を見てサリーは微笑んで
「でも、そこは安心してください。リコさんが想像する事ができない世界ではありませんし、転生するのも「人間」ですよ。」
人間・・・?異世界の詳細はまだつかめないが、転生するのは人間とサリーは言った。地球以外の世界で人間は存在するという事なのか?不安だらけではあるが、それでも少し気持ちが落ち着いた。
「その世界はどんな世界なのですか?人間という言葉が出たからには、地球と同じような?」
「地球というよりはゲームの世界というのが近いですね。」
「ゲーム?」
「はい。リコさんはドラゴンミッションやアナザー・ファンタジーといったRPGは知っていますよね?」
「モンスターを倒してレベルあげたり、ストーリーを進行して最終のボスを倒すみたいな?」
「その認識で合っています。そのような世界を神が創ってくださり、現世の死者を私たちが、その世界の人間に転生させてきました。」
神という存在をリコは信じていなかったが、今こうして死後の世界でサリーと話している状況を考えると、神という言葉を聞いても嘘には聞こえなかった。
「その世界で私は何をすれば良いのですか?レベルを上げてボスを倒せと!?」
「順に説明しましょう。」
サリーは焦るリコに対し、ゆっくりとした口調で口を開いた。
「まず理解してもらいたいのは、この異世界はリコさんたち転生者に何か使命を与えたりはしていません。戦うも戦わないも自由です。先ほど、不幸にも若くして突如命を落とした者を、異世界に転生させると言いました。その者たちに神の創った異世界で、楽しく、充実した第2の人生を過ごしていただきたいのです。」
「でも、戦いがあるということは、モンスターもいるという事ですよね?」
「そうですね。モンスターを倒せば経験値とお金を獲得する事ができます。経験値を稼いでレベルアップをすれば、使えるスキルも増えますし、お金がなければ衣・食・住ができません。ですが、スローライフを望むなら、衣・食・住に必要な分だけ弱いモンスターを倒せば良いだけです。モンスターも街を襲う事はありませんので、そこは安心してください。」
「それなら大丈夫かも・・・」
リコは簡単なゲームや単純作業は好きな方だった。学生の頃、友人がボスが倒せないと諦めていたゲームを数日借り、友人にゲームを返した時、友人は驚愕した。数日の間にパーティーのレベルが大幅に上がっていたのである。
友人はどうやってレベルを上げたかリコに聞くと、一つ手前のダンジョンで同じ敵をひたすら倒したとリコは答えた。
レベルは上がれば上がるほど、次のレベルに必要とする経験値は多くなる。多くのプレイヤーはある程度のレベルで妥協し、次のボスやストーリーを進行しようとするのだが、リコはレベル上げは全く苦にはならなかった。
「転生しても今までの記憶や経験は引き継がれます。そして、それに合わせ転生先の年齢もリコさんと同じ年齢になります。」
「生まれ変わるという事ではないのですか?」
「神が創った異世界の人間の中で、リコさんと同じ年齢の人間に私がリコさんを転生させるのです。」
「それでは転生先の人が・・・」
「神が創られた人間ですので、リコさんの世界でいうNPCのようなものと考えてください。つまり、リコさんが転生したからといっても、転生先の人間の魂がなくなるという話ではないのです。」
いまいち納得はいかないが、神が創ったと言えばそうなのだろう。転生というからには、また生まれるところから第2の人生が始まると思っていたが、確かに今の年齢から始まる方が違和感はない。
「なんとなくわかりました。それで・・・死んだ直後に聞くのも変なんですけど、その世界で死ぬことはあるのですか?」
「はい、あります。」
「ですよね・・・」
「モンスターから攻撃されればダメージもありますし、通常は年もとっていきます。そのあたりは異世界に転生してから調べてみてください。異世界の冒険者はリコさんのような現世で死んだ転生者です。その世界の事をやさしく教えてくれる者もいるでしょう。」
「わかりました。」
「転生後はまず冒険者ギルドに行きなさい。その世界での過ごし方や情報を手に入れられると思います。では、そろそろ転生に移りますが、問題ありませんか?」
サリーからの問いにリコは封じ込めていた気持ちが飛び出そうとしていた。正直聞きたくない。しかし、今聞かなくてはその答えはこれから先知ることができなくなる。
リコは重い口を開き
「私が亡くなった後・・・両親や友人、会社の人たちは・・・」
「あれからリコさんのお葬式が執り行われましたが、そこには悲しみしかありませんでした。特にリコさんのお母様は泣き崩れていました。」
「そう・・・ですか・・・」
俯き涙を流すリコ。そんなリコにサリーが優しく落ち着いた声で話しかける。
「リコさんのご両親や知人の方々は、死後の世界で幸せに過ごせる事を望んでいます。その方々の想いに応えるためにも、前を向き生きていく事が大切だと私は思います。リコさん、これは独り言なのですが、確かあるモンスターを倒した報酬の中に、現世の人間と話すことができるアイテムがあるという噂があったような・・・」
「ホントですか!?」
「え?私なにか言いました?すみません、ついつい独り言つぶやいてしまいまして。」
「転生、お願いします!」
リコの表情に覇気が出た。その顔を見てサリーは
「かしこまりました。」
と微笑み応えた。
サリーは目を閉じ、なにやら唱え始めた。全然聞いたことのない言葉だが、転生に必要な詠唱なのだろう。リコの顔もこわばっていく。するとリコの足元に魔法陣が出現する。
「わっ」
魔法陣に驚いたのも束の間、リコの魂が球状に変わる。そして、魔法陣にリコの魂がゆっくりと吸収された。
異世界の上空に魔法陣が出現する。
(リコさん、第2の人生良いものであるようにお祈りします。リコさんの魂を転生させる人間はあそこですね。)
サリーの脳内に異世界が広がる。右腕を上げ人差し指を立て、その中からサリーはリコの転生先に狙いを定める。そこを目掛け勢いよく右腕を振った。
異世界の上空の魔法陣からリコの魂が射出される。サリーはふぅ・・・と目を閉じ一息ついた。リコの魂は路地に立っている一人の女性へと真っすぐに向かっていく。そして、リコの魂が女性に入った瞬間、赤と青の光が女性を一瞬包み、光は消えた。
「これが・・・異世界・・・」
リコは周りを見渡し、そうつぶやいた。自分の新たな体が思い通りに動くかどうかも確認する。手を握っては開いてみたり、足で地面の感触を確かめたりした。
「転生は成功したんだね。ありがとう、サリー。」
ここにはないサリーのいた死後の世界。上空を見上げながらリコはサリーに感謝した。
しかし、
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
~死後の世界~
「ど、どうして・・・?」
本来であれば、リコの転生を終え、リコの第2の人生に祈りを捧げるサリーの姿はそこにはなかった。
なかなか更新できずにすみません。もう少し早く更新できるように努力します。そして、やっと異世界に転生ができました。読んでくださっている皆様が、ちょっとでも面白いかもと思ってもらえるような、ストーリーやバトルにしていきたいと思っていますので、もし良ければ引き続き読んでいただければ嬉しいです。