テレパシー
-神殿-
「で、津久間リコと間口ロイの魂が同じ人物に入ってしまったと。」
「ま、誠に申し訳ございません!」
ここは異世界を創造した神キリトの神殿。若々しい神のキリトは今回の顛末をサリーとヘクシアから報告を受けた。
「神キリト様、いかがいたしましょう。私たちが出来ることは魂を異世界の人間に移すところまで。どうにか間口ロイの魂を、本来移すはずでした人間の元へ移せないでしょうか?」
サリーが神キリトに尋ねる。本来ヘクシアが尋ねるべきだが、自分のミスを謝る事でいっぱいいっぱいだ。
「このままでよい。」
サリーとヘクシアは揃って「え?」と口にする。
「2つの魂を同じ人間に入れるというのは本来不可能だ。既に魂が入っている人物に違う魂を入れようとしても、弾かれて別の人物に入るからな。全くの同じタイミングで入ったのは奇跡というしかあるまい。私にも人物に入った魂は動かす事は出来んからな。」
「しかし、それでは津久間リコと間口ロイが!」
神キリトの言葉にサリーが異を唱える。
「うむ、故にサリーとヘクシアは津久間リコと間口ロイを見守る事。他の者も今回の事を教訓に、細心の注意を払うように!」
「「「はい!」」」
サリーとヘクシアの後方にいる聖女たちが神キリトの注意に返事をする。その中に神キリトが何かを感じた。
(ん?なにか違和感を感じたが、、、しかし、まさか二つの魂が同じ人物に入るとは、人間世界でいうバグというやつか。果たしてこの先どうなるか、、、)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ねぇ、あなた、、名前は?」
空を見上げながらリコは口にする。しかし、何も返事がない。
「ちょっと無視?名前くらい答えなさいよ。」
しばらく待つも何も返事はない。
(どういう事?確か私がこの体に転生したのと同時に転生したって言ってた。でも声がしたのはさっきの戦闘だけ、、、)
リコはしばし考える。レアモンスターとの戦闘をリコは振り返った。
(体の自由が効かなく、、いや、頭と左腕か。その後声が聞こえてきた。今は頭も左腕も動かせるし、違和感もない。。。もしかして、スキル?そうだとしたら、その声を聞いた事によって、私も同じスキルが獲得可能になってるかもしれない!)
リコはすぐさま立ち上がり、サコラスへ戻ろうとするが
(しまったー!クエスト全然手をつけてないじゃん!魔法は打てないけど、スライムなら疾風で倒せるし、30匹討伐しなきゃ!)
リコは気持ちを切り替え、スライム30匹の討伐に向かった。二時間後討伐を終えてギルドへ入る。
「リコさ~~~ん(グスン)」
「なんで冒険者じゃないあんたがボロボロなの、、、あっ」
リコはクエストと受注した時を思いだした。
(確かタンタンがオルガさんの悪口を言ったのを、後ろでオルガさんに聞いていて、私がギルド出た時凄い悲鳴聞こえたっけ。)
「全く、反省してこれからは私語慎んだ方がいいよ。災いの元だから。クエストクリアしたからお願い出来る?」
「はーーい、、ではこちらですぅ、、」
リコが依頼書に手を置くと、光となってリコに吸収された。
「よしっ、ありがと。また明日ね。」
「もう今日はお休みですか?まだ時間もあるから、別のクエストも受けられますけど?」
「うん、ちょっと調べたい事あってね。」
「調べたい事?」
「スキル関係でさ、詳しくは言えないんだけど、人と離れた場所とか、近くでも頭の中で会話できるスキルってないかなって。」
「タンタンもそのスキル欲しーです!そうすればあの地獄耳貧乳長身ババァの悪口言いたいほう、、リコさん?」
「何回同じミスすんの、、、」
リコはそう言ってタンタンの後ろを指さす。タンタンもそれに気付きゆっくり、まるで錆びたロボットが発するギ・ギ・ギという鈍い音を出しながら首を後ろに向けると、案の定笑顔の閻魔オルガが立っていた。
「ギョニュアアアアアアアア!!」
ギルドの建物が揺れるかのようなタンタンの悲鳴。リコはため息をつき
「オルガさん優しいですね。普通クビにしますよ。まぁ、辞めないタンタンもある意味すごいけど」
「それよりもリコさん、さっきの話ですが、おそらくテレパシーというスキルなら該当するかと。」
「テレパシー、、、。」
「一定時間脳内で離れていても会話の出来るスキルです。」
「ちなみに、一定時間ってどれくらいですか?」
「初期のテレパシーは5分、テレパシーのスキルレベルが上がればもっと長い時間会話が可能だったはずです。」
(5分、、、レアモンスター倒した後に喋りかけた時は、もうテレパシーの制限時間が終わっていたって事かな。次テレパシーを使えるようになるのはいつ?条件は?時間経過、MP消費、1日の回数制限?今オルガさんに聞いてもいいけど、私の中にもう1つ魂があってなんて言えないし、帰って調べてみてから判断した方がいいよね。)
「ありがとうございます、オルガさん。」
「もうよろしいのですか?」
「はい。今日は早めに帰って、スキルとか確認する事にします。」
「クエストクリアで結構なスキルポイント入りましたからね。分からない事があれば、いつでもお尋ねください。」
オルガに頭を下げギルドを出るリコ。リコが視界からいなくなると同時に
「さーて、、、タンタン?」
名前を呼ばれギクッとするタンタン。
「話の続きしましょうかぁ?」
「あ、、の、、?お話は先程終わったのではー、、、」
「誰が終わりと言いました?さぁ、応接室へまいりましょ♪」
クビ根っこを掴まれ引きずられるタンタン、二度とオルガの陰口をたたかないと心に誓うのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リコは宿の自分の部屋へと戻った。宿への道中、男の3人組が何故か驚いていたが、特に気にしなかった。ポシェットから宝玉を手に取り「津久間リコ」と自分の名を口にする。宝玉からリコのステータスが可視化されるが、そこには驚きの数値が。
「スキルポイント1195!?レベルは8に上がってる。レベルアップとクエスト報酬のスキルポイントを考えても、残りのスキルポイントはあのスライム討伐報酬かな。レアモンスター倒す事で、ここまでの恩恵は魅力よね。、、、でも」
それは、あくまでも倒せればだ。実際、この身体にいるもう一つの魂が助けてくれなければ、死んでいたかもしれない。リコは現実を受け入れ、小さく息を吐いた後、「獲得可能スキル」と口にした。宝玉の光の画面がステータスから獲得可能スキル画面へと変わる。
「このスキルって、、、」
リコのお目当てのスキル、テレパシーを探してはいたが、それよりもリコの目を止めたスキルがあった。
「獲得経験値2倍!?モンスターを討伐した時、獲得する経験値が2倍になる。使用スキルポイントは100。特にMPやお金使用するとも書いてないし、こんなにいいスキルがどうして、、、?もしかして!これもあのスライムを倒した報酬!?」
「おそらくそうだろうな。」
「!!」
レアモンスターとの戦闘中に聞こえた声が、リコの脳内に伝わる。
「この声は!」
「間口ロイだ。時間がない。とにかく今はお互いの獲得可能スキルについて話す事が最優先だ。」
(こっちはそれより聞きたい事あるのに!!、、、でもそっか。テレパシーで会話出来る時間は5分。次に話せる条件は分からないけど、それはこの後確認すればいい。)
聞きたい事は山ほどあるが、ロイの言う事が確かに最優先とリコも納得した。まだ確認していないが、テレパシーは何らかの条件がクリア出来れば再度使用出来るという事だろう。
「わかったわ、間口ロイ!でも、それが終わったら」
「あぁ、分かってる。」
ロイの返事を聞き、リコは獲得可能スキルの画面に再び目を向けた。
ゴールデンウィークで少し執筆の時間が持てた事と、書く内容自体はまだまだストックが当然ありますので、1日で更新できました。文系ではないというのは、言い訳になるかもしれませんが、誤字脱字、または間違いありましたらご教示いただければ幸いです。