にゃんだか不思議な路地裏。
閑静な住宅街に、ふてぶてしい黒猫がいる。そいつは太っていて、鋭い眼光でいつもこちらを見ては路地裏にのっそりと消えていく。通学の時にいつも見る光景だ。
気が変わった。今日は尾行してやる!
入り組んだ道だなぁって思っていると、あら不思議。段々道が大きく感じるじゃないか……どうしてかにゃん?
(……にゃん?)
あれれー? おかしいにゃあ、私の手ってこんなに短くてモフモフしてたっけ。もしかして、猫になっちゃったにゃん!?
「おい小娘」
振り返る。思いのほか体が柔らかい。何だか体中がモコモコしているにゃん。だから止めるにゃん、その語尾!
「元に戻してほしければ、ネコを崇めよ」
「よく看板で見るあれかにゃん? 冗談はよすにゃ!」
「看板の神をネコに変えたのも俺だ」
「にゃんだとぅ!」
ふぅー! 威嚇してみたけど、猫になりたてで体の動かし方が分からないにゃん。ここは、目の前の黒猫の言うとおりにしようかにゃん。引っかかれたら痛そうだし……。
「まずは、必ずノラネコたちに挨拶をすること」
「わかったにゃ」
「そして、あり餌全部寄こすこと」
「ひぃい怖いにゃん」
この黒猫の眼光。確実にそこら辺のノラ猫を葬ってきている顔つきだにゃん! 帰りたいにゃ、帰りたいにゃー!
「わかったら早くしろ」
「わかったにゃん!」
――気が付いたら私は人間に戻っていた。相変わらずふてぶてしい黒猫がこちらを見ている。あれ、私は路地裏に行ったはず。じゃあ、あの出来事は何? 夢? 私は今までどこに居たの?
「にゃあ」
近寄ってきた黒猫が、偉そうに挨拶するように鳴いた。私は、
「こんにちは、ネコ様」
と返して、お菓子の入った袋をそっと地面に置いた。黒猫は何も言わずにそれを口で咥えて、路地裏へと入っていく。こそっと覗いてみると、野良猫たちが私のお菓子に群がっている。また黒猫と目が合った。
「にゃあ」
私は、
「お元気で、ネコ様」
そう言って学校へと向かった。道中の“ネコを崇めよ”という看板が気になったが、気のせいだと思いながら、この経験を友達に話そうと、駆け足でアスファルトを蹴った。心なしかワクワクしている。
早朝のことだった。
思い付きでぱっぱと書きました。
できたてほやほや~。
感想返信等はできません。ごめんね!
見てくれてありがとう!