ミッション3
ガタンガタンと揺れる馬車に若干酔いながら私は思った。
…どうしてこうなった?
私の破滅までのシナリオはトントン拍子に進んでいる。
これがゲームの強制力というものなのだろうか。
全くどうしたらいのか…
王子と婚約、そしてソッコーでゲームの舞台の学園へ入学する…普通の状態なら素直に喜べたんだろうけど、私は悪役令嬢、破滅の道まっしぐらは避けたい。
うーん…うーん…(ここで思考を放棄)
よし!どうしよもない!どうせゲーム中は死なない!
死ぬまでは自分の好きなことをやろう。
最初に誓ったじゃないか。
前世の分までエンジョイ…これを当面の目標にしていこう!
前世でできなかったことを全部やろう!
髪をショートにしたり、お泊まり会を開いたり、ショッピングをしたり…
…うん、なんか元気が出てきた。
くよくよしても無駄、どうせなら楽しいようにしよう。
そして学園に到着した。
「うわあああっ!」
す、すごい…なんだこのお屋敷は!もしかすると王宮くらいの大きさはあるかもしれない。
中世ヨーロッパ風のおしゃれな建物が私の目の前に建っていた。
れんが造りの壁には蔦が這っていて、所々煤けているのもそれっぽい。
この建物を見て私は学園生活が少し楽しみになった。
と思ったところで、後ろから父様の声がした。
「おおいクーラ、入学手続きをしに行くぞ。王子殿もいらっしゃるから顔合わせしておこう!」
父様のその一言でかなりブルーな気持ちに戻ったよ…
まあ、これも王子に嫌われる一種のチャンスかな?
カラカラと門を開けると…
突然誰かが飛びついてきた。
「すっっっっっごく久しぶりだねえクーラ!ずううっっっっとあいたかったよ!」
!?誰!?久しぶりって何!私わはあなたにあったことありません!何者?!
その人物を私は知らなかった。
いきなり飛びついてくるような不躾な奴なんて知らぬ!
「…父様!なんですかこれは」
私はとっさに助けを求める。
すると腰のあたりから声が聞こえた。
「ええっ!忘れちゃったの!?アルだよ!?」
…忘れるどころかそもそもの記憶がない。
私は必死で頭をぶん回す。
アル…アル…んん?
あっ!あれか!乙女ゲームの攻略対象?
いやだがアルなんて奴はいなかったはず。
そこで父様の助け船が入った。
「アル様を覚えていないのか?お前の婚約者だろうに」
!ということは…
こいつはあの王子!?
そうか、アルというのはアルフォンスの略か。
それなら確か一番ヒロインにいいように使われたかわいそうな王子のはずだ。
私は少し、抱きついている王子に同情した。
…ていうかいつまでくっついてんの!さっさと離れろこの不審者!
腹をけつって引き剥がす。
そこでアル様が口を開いた。
「アルね、クーラちゃんがちっちゃい頃から大好きだったの!だからとーさんに頼んで婚約者にしてもらったんだ!」
たしかに父様の仕事で王城についていったときに何度か遊んだかもしれない。
…ん?
とーさんに頼んだってどういうこと?
国王は魔力を望んでいたのでは?
彼の後ろにいた国王らしき人物を見ると凄い勢いで視線をそらされた。
「嘘をついていたのですか?」
冷や汗が何本も頬を伝っている。
「ん…とね、あのね、別に、あの魔道具は誰にでも貸し出しが可能だけど可愛い息子の頼みだから口実にして婚約を取り付けたとかそういうわけじゃなくてね、ただ善意でこの取引を持ちかけただけで、ただで婚約取り付けれたらラッキーとか思ってないから!」
…この世界の父親はみんなこんななのだろうか。
つまり私たちはまんまと騙されたってことですかね?