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悪役令嬢は開き直って自由に生きます!  作者: アールアイオー
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エピローグ

私は、千切乃 契子(ちきりの けいこ)

いつも頼れるイイ子で、毎日先生に褒められ、みんなに囲まれていた。

子供をかばい、22歳で死ぬまでずっと快適で、親も優しく、不満なんて一つもなかった…訳ではなかった。

わたしはいつも、もう少し自由に生きたいと思っていた。

友達とゲームセンターに行ったり、買い食いをしたり、カラオケで熱唱したり…

してみたかったことなど数え切れないほどある。

だが、優等生という自分の立場がそれを許さなかった。

唯一の支えが「love romance」という乙女ゲームだった。

こっそりとお金を貯め、手に入れたゲームは特別に面白いと感じた。

壁紙にした主人公の限定版ポスターを日々愛で、誰にもばれずに萌えていた。

それも十分楽しかったが、友達や兄弟と一緒に遊んだり、出かけたりしてみたかった。

もしそれができたのなら。

せっかくの人生をもう少し楽しみたかった…。




という記憶を思い出した。

私はクライト・シュレティア14歳。

シュレティア公爵家の令嬢だ。

魔力量の多いものがかかる「魔熱病」で死にかけ、今の記憶を思い出した。

どうやら、私はどこぞの令嬢に転生してしまっていたらしい。

どう見てもここは庶民の部屋ではない。

元庶民の私にとっては不相応なほどだ。



うん、決めた。

せっかく転生したんだ。

前世は大して楽しめなかったんだ。

だから。

前世の分まで、今度の人生こそは、完膚なきまでに楽しんでやる!


家族構成は兄2人と両親の(私以外)非常に仲睦まじい一家だ。

だが、私は問題ばかり起こしていたようで家族からも敬遠されているようだ。

前世の家族が優しかったことを考えると少し寂しく感じてしまう。

熱も下がってきたことだし、ちょっと家を散策してみようかな。

ギイっとドアを開けるとギョッとしたような顔をしたお兄様が立っていた。

「クーラ⁉︎ダメじゃないかちゃんと寝てないと」

「いや、大丈夫ですわお兄様」

「そんな訳ないだろ!この前お医者様に言われただろ、治らないって!」

言った後に、お兄様はハッと口を押さえた。その頬に伝う汗を私は見逃さない。

私はやんわりと尋ねる。

「ダメじゃないですかお兄様ァ。私に何か隠し事でもおありで?」

「え、えぇっと、その、あの…」

しどろもどろになるお兄様を私は問い詰める。

「きっちり全部吐いてごらん。楽になるから。」

「……」

なおも喋ろうとしない往生際の悪いお兄様を壁側に追い詰め私は言う。

「喋らないのなら、お兄様の部屋の秘密の蔵書のことばらしま…」

「わかった!喋る!全部話すから!」

それだけは〜とすがってくるお兄様。

やっぱりこの言葉は効果てきめんね。

まさかちょっとハッタリをしかけただけなのにこうもあっさり信じるとは。

「あっれれ〜、お兄様みたいな人がいかがわしい本を持っているのですか〜」

「?…まさか!ハッタリだったのか⁉︎」

こくんと私が頷くと、お兄様は膝から崩れ落ちた。

みんな私を避けているのかと思ったが、案外そうではないようだ。

まあ、とりあえず、

「茶番はいいのでさっさと吐いてください」

血の涙を流しそうなお兄様を急かす。

「くう…心して聞けよ。この前の往診があっただろう。その時に、クーラほどの魔力の持ち主は、軽くなることはあっても治ることはないと言われたのだ。そしてこのままだと1年経たずに死ぬ、と医者は言っていた。」

え…なにそれ。

記憶が目覚めて数分で寿命決定⁉︎

「そこに国王殿下がとあるはなしをもってきてな。なんでも元々魔力の多い王族は、昔から魔熱病に対処できる魔道具を持っているらしいんだが…いろいろあって最近は家族会議中だ」

国王の提案?

その道具があれば助かるのよね、ならそれ受けたらいいじゃない。

ということは、いろいろ、の部分が問題なのでしょうね。

一体なんなのかしら。

「いろいろ、とは一体なんなのでしょうか。お兄様」

「あー、うん、えっと…王族は魔力が強くないと務まらない。だから王はクーラの魔力を欲しがっているんだ。」

?それがどうしたの。

魔力を提供するのがなんでダメなの?

「ここからが問題なんだよ。それでね…王はクーラと第一皇子の政略結婚を求めているんだ。」

ホワイ⁉︎なんでそんな話に?

「そうやって君が王族になれば例の魔道具が使えてクーラは助かり、王族も魔力の多い血を取り込めて万々歳というわけだ。」

…そういうことか。

結婚すれば命は助かる。

でもそうしたらきっと、私の自由はなくなる。

それは絶対にダメだ。私はこっちの世界であっちでの無念を晴らすんだ!

私はスッと顔を上げるときっぱりと言う。

「その話はお断りしておいてくださいませ、お兄様。」

お兄様が顔をキュッと歪める。そして絞り出すように話し始めた。

「俺だってクーラを他の家に出したくはないさ…だが断れば、お前の命は危ないのだぞ。お前が死ぬのだけは絶対にダメだ。ほら今もこんなに熱が…」

と言って私のおでこに触れる。

なぜかいきなり止まるお兄様。どうしたのかしら。

私の顔に何か付いているのかしら。

そう思ってペタペタと顔を触る。

するとお兄様が口を開いた。

「熱が…ない?」

ん?熱ってなんのことだっけ?

何か問題でもあるのかしら。

と思ったらいきなり部屋から飛び出し、大声で叫ぶ。

「クーラの熱が下がった〜!魔熱病が治ったぞ!!」

あ、熱って魔熱病のことね。全然大したことないから忘れてたわ。

体も熱くなかったし気分も悪くなかった。

でも治ったってどういうこと?目が覚めてから体調は一切変わってないわよ?

すると、ドタドタといくつかの足音が聞こえてきた。

バンッと扉が勢いよく開いた。あ、父様だわ。

「魔熱病が治ったとはどういうことだー!それは本当なのかー!」

必死の形相をした父様が駆け込んでくる。

「ええ、そうです父さん。良かったですね!これであの王子に嫁がせなくてもいいですね!」

ごほんと咳払いをする父様。しどろもどろに口を開く。

「ゴホンゴホン、えー…その話についてはまた後でじゃ!とりあえず医者を呼べ!そしてお祝いじゃー!」

…ん、よくわからないけど、みんな私の回復を喜んでくれているのかな?

この体の記憶から、家族には嫌われているんだと思っていたけど…

そうでもないみたい。えへ、嫌われてはいなかったんだね。

そう思うとなぜか笑みがあふれてきた。

きっと今私の顔は気持ち悪いくらいにやけているんだろう。

そこでお兄様が口を開いた。

「あ〜良かった。これでクーラを家からをださなくていいですね!これからもクーラはずっと僕のそばにいてもらわなくては!」

あ、この人シスコンだ。

若干シスコンなお兄様が言った。

すると何故か部屋の空気が一瞬凍る。

多分凍らせたのは父様かな

ギギ…と音が立ちそうな仕草で父様がゆっくりと振り向く。

「その話なんじゃが……えっと…その…医者にも治らんと言われたし…ね…その方がいいかとね…思って…」

あ、すっごく嫌な予感がする。

その続きを言うんじゃない父様!


「婚約…受けてしもうた。えへ?…」



「えへ?」じゃねえええわあああああああ!!!

何してくれてんの父様!!!

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