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結局そのあと追加で三ゲーム、俺たちは球を投げ続けた。
指も手首も腕もバキバキって効果音がなりそうなくらい痛くなった。
ついにガターを連発し、呆れられるような形で「じゃあ、もうやめますか」と吐き捨てられたのだった。
デートってなんだよ。
会計で目玉や意識や財布が一気に飛び掛けながら、ボーリング場を後にし駅に向かって歩いた。
二度と来るもんかと心の中で叫んでいると、不意にAさんが小走りになり、数メートル先で立ち止まり、くるりと此方を向く。
俺も立ち止った。
「春枝君、今日はありがとうございました。デート、私は楽しかったです」
デートねえ……。
鼻で笑うのを我慢しながら「おう」と返事。
「少しでも春枝君の為になったなら、成功です! どうでした?」
そう、このセリフで我に返った。
というか、いろいろ思い出したというか、なんで今まですっかり忘れていたんだ俺。
金髪の少女のこと。依頼のこと。
やっぱり、このAさんは金髪のあの子にお願いされて俺とデートをしたんだろうか。
「まあ、楽しかったんじゃないかな。普段できない経験だし」
「なーんか、上から目線ですね。むかつきます」
ちょっと怒って膨らんでいる顔も可愛いなと思いながら、その実俺の頭は他の質問欲で独占されていた。
「なあ、よかったら、その……名前教えてくれないかな」
街灯の明かりがスポットライトの役割を果たし、可憐さを際立たせているAさんに向けて訊く。
彼女はバッグを持った手を後ろに回し、もう片方の手も後ろに回した。
「オースティンです」
言いながら此方を見たままゆっくりと後ろに歩くAさん。
「それ、本名なの?」
俺もゆっくりと前に進む。
Aさんは街灯の明かりから外れたところで止まった。
「そんなところです」
「そんなところって……。ハーフってことか?」
歩みを進め、今度は俺が街頭に照らされたところで足を止める。
「そろそろさよならです、春枝君」
何も教えてくれないもどかしさに苛立ち、言葉を選ぶ余裕のない俺は、
「やっぱり、きみは金髪のあの子の差し金で来たんだろ?」
なんて、ぶっきらぼうに言い放った。
黙っているAさんに更に続けてしまう。
「大方、女の子に縁のない哀れな男がいるから、相手してやってくれ、みたいなことを言われたんだろう? それは間違ってはいないけど依頼に関しては不正解だ。大体金髪も、俺の依頼の本質がわかってない。俺は女の子と携わりたいんじゃなくて――」
ここまで喋ったところでブレーキが機能した。まあ遅すぎたけれど。
俯いてる彼女の表情は見えない。
しかし何故か少し笑っているように見えた。
「なかなか、難しいですね。ありがとうございました。さようなら」
そういって、オースティンなる子はくるりと身を翻し、走りづらそうなサンダルのまま駅に向かって走って行った。
スポットライトを浴びている俺はしばらく立ち尽くしてから、腕時計に目をやる。
――22:22。
この、よく言えば奇抜な腕時計なんかをしているから、ちょっとアレなんて言われるのかな。
閊える何かを無理矢理妹のせいにしながら溜め息を殺した。