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好奇心は小心者ですら殺す  作者: えねるど
5月17日(土)
6/46

黒髪ショートのA

 さて、前屈みに座っている俺の腕のそれは「17:00」に切り替わった。


 どこか遠い所から鐘の音が聞こえてくる。

 と同時に一つ隣のベンチに座っていた人が立ち上がるのが見えた。

 一瞥、なるほど小柄な女の子ではあるが金髪ではない。長髪でもない。

 目線を再び地面に戻す。

 

 数秒後、視界にブラウンのサンダルが映った。


「春枝君ですよね」


 頭上からのか細い声。

 見上げると、さっきの隣のベンチの小柄な女の子がそこにいた。


「……そうですが」

「今日は、よろしくお願いします」


 何をだ。


「ええと、どちら様?」

「今日は一日、というかもう今日は残り少ないですけれども、ご一緒させていただきます。不束者ですが、よろしくお願いしますね」


 さっきから優しい風に乗って物凄くいい匂いがする。

 薄いピンクの手提げのバッグ、デニムのショートパンツに純白のシャツ。

 そして生足←ここ重要。

 肩までもない短めの黒髪。小さく整った顔立ち。


 うん、こんなかわいい子知らない。


「あの、あまりジロジロみないでもらえますか」

「すいません」


 癖の無意識アナライズを反射的に謝ってしまった。ここでも小心。


 ここまできて、まだまだ状況が読めない。金髪はどうした。


「さあ、行きましょう春枝君。時間は大切、ですよ」

「もう一回訊くけど、どちらさま?」


 謎の女性は苦笑いにも近い困った笑顔を浮かべて口を開く。


「そうですね……。私の名前はオースティンです。呼び辛いと思うので頭文字でAとでもお呼びください。今日、春枝君とデートすることになってます」


 ええと、待って。デート?


「ええと、待って。デート?」


 そのまんま思考が口から出たじゃねーか。動揺極大(マックス)


 情報量が多すぎて処理落ちしそうだ。

 オースティン……どう見てもこの子は日本人だと思うんだけど。


「あまり状況が読めないんだけど……どういうこと?」

「とにかく、デートをしてみるのです。さあ、いきますよ」


 無邪気な笑顔で俺の顔を覗き込む女性。

 目をそらしてしまう俺。

 自分の顔が赤くなっているのが分かる。

 そりゃだれだって、こんなかわいい子に正面からデートを申込まれたら照れの一つくらい生まれてしまうよ。くそ。


「一応訊くけど、あの金髪の子の指示なのかな? 俺はその金髪の子が来るものだと思ってたんだけど」

「金……そんなところです。ただ、今日はお互いできるだけ自然に楽しみましょう。」


 そしてまた笑顔。

 その顔で何人の男のハートを無自覚に射抜いてきたんだろうか。

 それともこれもこの子の計算なんだろうか。


 余計な思考で当初の「金髪の正体」のことを忘却した俺は、とりあえず観察や勉強を兼ねてデートと言うものをしてみることにした。


 繰り返すが断じて観察や勉強のために、だ。

 鼻の下など伸びていない。


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