一体これから何が始まるんですかね
無事に母親からの叱責をいただいた後、目的の品を購入し、家へとついた。
それから約束の十七時までの約四時間、自室で落ち着きなく時間を潰してから再びミニベロへと跨った。
誕生日に妹から貰った、少し趣味の悪い腕時計は「16:51」を表示している。
駅へ向かう最中ふと思ったが、俺はいったい金髪少女の正体を知って何がしたいのだろう。
なぜ正体を知りたいのだろう。
どんなことをしているか、どんな生い立ちなのか、それを知ったとして、俺に何か益があるのだろうか。
知らないものは知りたいし、知らなければならないとも思うし、そのように生きていくと決めたが。
しかし、この短絡的感情が「恋」でないのは確かだ。
それこそおめでたい頭の思春期野郎でもない限り。
ただ、なぜだか胸に引っかかるものがあるのも事実ではあった。
あの時、天文学室で見た金髪に、他人と思えないような雰囲気をどうしてか感じたのだ。
三逆駅の駐輪場に相棒を止め、北口のベンチを目指す。
――まさか、生き別れの妹?
と、思考でふざけられる精神的余裕がある今のうちに、深呼吸をしておく。
ゆっくり、ゆったりとしたベンチへの腰かけ方とは裏腹に、またしても俺はそれとなく緊張していた。
これから金髪少女が来て、いったい何が始まるのだろう。デートとか?
少し鼻の穴が膨らんでいることを自覚し、再び深呼吸をした。