掠れ行く信条
こんな時、どういう顔をしたらいいか分からない。
どういう言葉を発していいのかもわからない。
そんなファーストチルドレン状態の俺に、笑えばいいと思うよ、なんて言ってくれるサードが居るはずもなく、ただひたすらゆっくりとブランコを前後させることしかできない俺はなんて無能なんだろう。
俺のせいで由宇はひどい目にあった…………?
いやいや、違う。冷静に考えろ。
餓鬼だった俺に何ができた? きっと何かができたとは思えない。
ひどい目に合わせた、ひどいことをしたのは俺じゃない。
だがもしかすると僅かにでも結果を変える事ができたかもしれない……?
やってみて駄目だった事とやらなくて駄目だったことは違う?
無意味なことと無駄なことは違う?
「春枝くん、あまり気にしないでね。今のお父さんは優しいし大好きだし、それに春枝がずっとあの日の事を忘れないで心に留めておいてくれたってことが分かって嬉しかったし」
俺の拙い葛藤を見抜いてか、由宇は寂しそうに笑った。
俺は間違っていたのだろうか。
無類の知りたがりである俺の知りたがりたる原因となった後悔の残る出来事を、こうして今、とある好奇心から始まった探究によって解きほぐされたことによって、後悔が莫大に増幅してしまった。
知ろうとしたことで、知るはずの無かった後悔を増やし、こんなにも胸が苦しくなってしまうことがあることを知った。
今となってはもうどうする事もできない過去の事。
「私、帰るね。本当にあまり気にしないで。さようなら、春枝君」
自分の思考に逃げ込むと周りが見えなくなってしまう俺の悪い癖。
ただ、今はこうでもしないと由宇の前で泣いてしまいそうだった。死ぬほど悔しかった。
駅に向かって歩いていく由宇の姿を目で追う。
それが小さくなり、駅の入口自動ドアに入っていくのを見届けたところで、視界全体がぼんやりと滲み、歪んでいった。
もう俺のポケットには桃色のハンカチはなかった。
そして心の中で俺のポリシー(笑)にヒビが入る音が鳴った。




