好奇心は小心者ですら殺す
教室のロッカーに入っている鞄を、それはそれはゆっくりと取り出し、辺りを見回す。
どう頑張っても、この賢道高校には正面玄関を通らねば登下校できない。
一応職員玄関なるものも存在はするが、生徒が悪戯に出入りしない様見張りの用務員が常駐している。
ロッカーをゆっくりと閉め、再度周りを確認。
廊下の奥の方では、何部か分からん男どもが腕立て伏せやらクランチやらのトレーニングをしている。
それ以外には一応、目につく限り人影はない。
どうにかして正面玄関以外から脱出できぬものか。
ここは二階、窓から脱出できなくもない高さではあるが……。
自分の教室である六組の窓に駆け寄り、下を覗く。
……。
正面玄関の真上だった。
さすがに、コミュ障小心の俺がまだちらほらと生徒が残る他教室にずかずかと入り込み、突然窓から脱出なんていうハードボイルドなことができるわけもなく、諦めて正面玄関に向かうことにした。
教室を後にし、階段を下る俺はまたしても周りに目を配る。
俺が逃げ出さない様、誰かが見張っている気がして。(小心者)
岸絵が本当にどこかのソレのお嬢様なのだとしたら、いつどこに見張りが居てもおかしくない。
用心するに越したことはないからな。
まあ、見張られてなかったとしても逃げ出す術はないんだけど。
あまり遅いと朱雀とかいうチビッ子に脳天撃ち抜かれそうで怖いので、小走りに玄関へ向かった。
やっぱり、なんだ。どこかに連れ込まれるのかな。
好奇心は小心者ですら殺すってか。
正体知られたからには――とか何とか言ってたけど、そんなに知られたらまずいのかな。
他言無用を約束することで見逃してはくれまいかね、岸絵殿。
まあ、他言するような知り合いも友達もいないんだけどね。
そんな矮小な存在ですからどうか、見逃してください。
下駄箱で靴を履きかえ玄関を出ると、すぐそばの白樺の木陰にさっきの二人が立っていた。
「遅いんじゃボンクラ! お嬢を待たせるなんざ二十年早えんじゃ!」
あなた年下ですよね朱雀さん。
「すみませんお二人とも。で、どちらへ?」
「来りゃわかる、です。付き合ってくれや、です」
おっとりとした目のまま不敵に笑う岸絵はそのまま校門の方へ歩き出した。
やっぱりこれあれか。お・と・し・ま・え的な?
正体知っただけなのに俺どうなっちゃうのこれ。冷や汗が止まらない。
「さっさと歩かんかボンクラ!!」
そう言いながら朱雀は俺のお尻を押すように蹴った。
そのひらひらの中に隠しているものを考えると抵抗できそうにもなく、内心半べそで岸絵の後をついて歩いた。




