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RAND  作者: 市田気鈴
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第15話 余裕なし

 戦闘がなかなか上手くいかないのもあるのですが、アーノルドパートが最近雑になっているような気がします。なんとか丁寧に書こうとしているのですが、彼のパートになると筆が乗らない…。

 ゼオが言葉を覚えるなんて考えもしなかった。知的生命体とはいえ、あれは動物とかの人間とは全く別の類の生物だ。それが人間と同じ言葉を話し、それをクローン人間である自分たちに投げかけている。

 不安以上に当惑した気持ちがロック達を襲う中、マークが前に出て彼を睨みつける。


「まさか話せるとは思わなかったな。意思疎通まで可能ならこちらの話を聞いてくれるか?」


 人型のゼオはマークの問いかけを理解できたのだろうか。呼びかけられたことに反応せず、あれはただじっと彼らを見るだけであった。その内、ゆっくりと腕を上げて彼らを指さすと再び口を開く。


「来た。見る」


 そう言うと周辺の岩礁の隙間からゼオがワラワラと這い出てきた。いったいどこに隠れていたのかと思うほどの数に加えて、少し先の森林からもギャアギャアと声が聞こえる。森から飛び出てきたのは翼を持つゼオが数十体で、それもロック達に向かって進んでいた。

 これにはロック達も驚愕する。いつの間にここまでの接近を許したのだろうか。センサーは作動しているのでこれほど近ければアラームが鳴っているはず。しかし現実は軍隊ともいえるほどの数のゼオが自分たちを取り囲もうと動いていた。

 とにかく今は撃破を狙って動くのみであった。ロックは機銃と外付けのミサイルポッドから弾を発射する。もはや残弾を気にする余裕はなかった。それほどゼオの数はおびただしいものであったのだ。


「レイヴン隊が飛び上がるまで時間を稼げ!」


 マークが機銃を乱射しながら叫ぶ。レイヴンの最大の弱点ともいえるのはこの飛び上がるまでの時間であった。ウォンバットが予備動作なくいきなり飛べるのに対して、レイヴンはブースターを使い一度離陸して助走をつけるように飛び上がって初めてその空中戦を我が物にできるのだ。言うなれば飛行機の離陸と似たようなものであった。拠点では急ごしらえながらも専用の発着場が用意されているため悩むことはなかったが、この状況では致命的であった。残念ながら一度着陸させたのは完全な失策としか言いようがなかった。

 しかしその火力を考慮すれば、再び空にさえ飛べればゼオの殲滅に大いに貢献できるだろう。少なくとも今のゼオの数はウォンバット隊のみで倒せるほど余裕はなかった。

 すでにレイヴン隊は離陸のためにブースターを起動している。この離陸の設定までも少し時間がかかるのがネックであった。間もなく彼らの体が浮かび上がるが、すぐにアシュリーの左翼に1体のゼオが飛びついた。


「うわぁ!!」

「動くなよ!」


 リュータの撃った弾丸が取り付いていたゼオの頭を貫く。続々と現れるゼオは岩の隙間に隠れるような大きさだったためか小柄でパワーもそこまでではないようだ。それでもこの数に物を言わせる戦法は、厄介以外の何物でもない。

 間もなくレイヴンを装備する3人が滑るように空を目指した。低空飛行の段階ではゼオが阻止するように飛びかかるが、リュータ、マーク、補充要員のひとりがそこを重点的に狙っていった。そんな彼らを守るようにロック達が動いてゼオを打ち倒す。今のところは誰一人としてかけていなかったが、徐々に追い詰められているのがイヤでもわかった。

 呼吸は荒く、ガジェット内での脂汗は初めて飛んだ時の比ではないほどかいていた。しかしそれを気にする余裕など彼らにはない。今はただ視界に映りこんでくる化け物を1匹でも多く減らし、仲間を守るだけであった。

 しかしいよいよピンチの状況が顕著になった。上を見ると翼を持ったゼオがかなり近づいていたのだ。数は先に倒したほどではないが、岩陰から湧いて出るゼオを相手しながら上空の彼らにも注意を向けるのは不可能であった。

 死を覚悟したのは何度目であっただろうか。そんなのこの星に来てからいくらでもあった。もはや今さら命に執着を持たないが、クローン人間としての役目とルオンよりも先に逝くのは不本意であった。その想いだけを胸に最後まで腕は下ろさず、武器を使い続けた。そして目の前の敵に集中しすぎたロックの上を通過したのは、一瞬前まで彼の頭を食いちぎろうとしていたゼオの死体であった。


『反撃を開始します!』


 耳に聞こえるクレアの声、何とか飛び上がれたレイヴン隊の凶弾にロックは安堵の息を吐く。ようやく焦るような呼吸から解放されたのであった。








 ガジェットは素晴らしい開発ではあったが、万能ではないことをアーノルドは思い知った。

 昼休憩を終えた頃に、マーク部隊が妙な動きを見せていた。戦闘したと思われる動きの後に水晶に近づいたきり、その場でまごつくような動きを感知したからだ。

 元々ガジェットは通信機能について高性能ではない。だから衛星を星の外に設置してそれを介して通信を行うことが理想であった。しかし実際は地球以外で衛星を採用している星などほとんどなかった。それを造るための材料はガジェットや宇宙船に回されるし、打ち上げるにしても費用は掛かる。しかもこのための専用施設を星ごとに造り、維持費や人手も考えると進歩した技術でも厳しかった。

 だがガジェット部隊の動きをまったく把握できないわけではない。どこにいるのかくらいはガジェット自体とそれなりのレーダーがあればわかる。そこでどのように動いているかを見れば、戦闘に入っているのか、飛んでいるのかといった動きは予測できた。

 だからマーク部隊の動きには不穏な様子が見られた。すでに目標地点にいるにもかかわらず、その場で動きを見せないのはゼオと交戦しているからであろう。だが動きはまるで蛇に威嚇されて追い詰められていくカエルのようであった。


「あの動きは囲まれているのか?」


 レーダー室でキーボードを打つ男が呟く。ロック達の様子が知りたいと言って案内された部屋の壁には巨大なスクリーンが備え付けられ地形のデータと赤い点が映し出されていた。ここまで把握できているのに通信できないというのは不便なものだと思う。

 素人目には赤い点がうろついているようにしか見えなかったが、プロにはあの微妙な点の動きだけで何かがわかるのだろう。それとも彼のいる席にある小さいモニターに必要な情報があるのだろうか。

 状況がはっきりしないことにやきもきするアーノルドの横で、ロベルト上席は顎を指で叩きながらモニターに釘付けになっていた。


「おかしい。レイヴン隊がいるにもかかわらず、ここまで追い詰められるものか?」

「一度、着陸したみたいですね。おそらくそのタイミングで囲まれたのかと」

「バカなことを…しかしそれでも視界が良好なあの場で隠れられる場所などあるのか。だとしたらやはり奴らは徒党を組んでいるな」

「援軍は送らないのですか?このままでは追い詰められるだけですよ」

「バカなことを言わないでください。私はあくまで輸出入の管理です。船を出すにあたってゼオの動きを確認しにここに来たにすぎません」

「だったらバロックさんが…」

「それもあり得ない。彼は今回必要な指示を彼らに与えています。そもそも今回の作戦では予定外の援軍は出すつもりはありません。それをやったところで無駄に被害を出すだけです」


 冷静に淡々と話すロベルトからは何の感情も感じられない。アーノルドからすればロベルトも他の人間と同じような存在だった。温厚には見えたが、実際のところはクローン人間への蔑視は隠しきれておらず、ビジネスの道具あるいはただの戦争の武器程度にしか考えていないのだろう。

 昼前に聞いたバロックの言葉は彼の中であっという間に同僚への侮蔑へと変わった。


「薄情ですね。彼らは我々のために戦ってくれているのに」

「クローンである彼らの仕事はこれが当たり前なのですから、薄情も何もないでしょう。そもそも先ほども言ったとおり、今回の作戦は予定外の援軍は出さないのですよ」

「このまま彼らが死ぬかもしれないじゃないですか」

「そうなったら彼らの命運はそこまでだったということです。いずれにせよ、よほどの不測の自体でもない限り、問題ないはずでしょう」


 言葉を出したかったが、それ以上の追及と非難をアーノルドの口から出すことはできなかった。どれだけ言葉を投げかけても彼らが意識を変えることなどあり得ない。出来ることなど無いお飾りでしかない自分の言葉など彼らに届くわけがないだろう。自分の無力さを痛感し、あとはただ彼らを恨めしく感じていた。

 そんな彼の視線に気づいてかロベルトは画面から目を離さずに口を開く。


「作戦は問題ありません。あなたはもっとどっしりと構えていればいいのです」









「くっそ!思った以上に当たりが悪い!」


 舌打ちしながらロックは誰に聞かせるでもなく悪態をつく。レイヴン隊が飛び上がったのはいいが、それで一気に形勢逆転できるほど事態は甘くなかった。上空ではレイヴン隊が間違いなく敵の数を減らしている。しかしすでに戦況を翻すには敵の数が多すぎる上に、ロック達も疲弊していたため、レイヴン隊が飛べても逆転とまではいかなかった。下手すればこのままジリ貧になり、敵の数にすりつぶされかねない。

 近くづいてきた相手をブレードで斬っていく。弾薬はまだ残ってはいたが、発砲するには敵が近すぎた。あのギャアギャアとわめく鳴き声がガジェット越しに響くほど近づいているだけで緊迫するには充分であった。

 そこにロックを狙うように一匹のゼオが突っ込んでくる。かなり体格の良いゼオの背中には例の人型のゼオが乗っており、馬を操るかの如く動かしていた。

 ブレードで乗り手を斬ろうとするが、あれは生け捕りにするべきだというのが彼らの共通認識であった。突然変異のゼオは捕らえて調査する価値がある。あれこそがこの星を完全に制圧するために必要な鍵になるかもしれない。

 ロックは横にひらりとかわすと、突っ込んできたゼオの脇腹を狙う。だがすぐに気づいた。あれを狩るのはそう簡単にいかないのだと。なんとそこを狙って人型のゼオも棒に水晶を括り付けた即席のこん棒のようなものでロックの頭を狙ってきたのだ。不意を突かれたがギリギリで回避したロックは後ろを向いている彼らに狙いをつける。一方でそれに気づいているかのように人型のゼオはロックに視線を向けていた。どうも彼はロック達の動きを予測して動けているようだ。これも今までの戦闘を踏まえているのだろうか。


「…化け物だ」

「消える。見せる」


 振り回すこん棒が風を切る音が聞こえる。軽く回しているその様子には余裕を感じさせた。その態度は一種の憎らしさを抱かせ、ロックは吠えるように人型のゼオに問いかけた。


「今になってこんな反撃をしてくるなんて…お前らの目的はなんだ!」

「見せる。できない。死ぬ」

「話にならない。ここでお前を捕まえたことで偉い人がどう判断するのか…」

『それでも遂行するだけだ!』


 聞き慣れた電子音が聞こえた瞬間、上空からレイヴンに身を包むギャリーが擲弾を撃ち込む。狙いはゼオの少し前の足場。着弾すると砕けた岩盤の破片が目的を襲う。彼らは思わず怯み、飛び下がったが破片は彼らの肉の一部を傷つけていった。


「あれは捕獲だぞ!」

『ゼオが今さらあの程度で死ぬか!それよりもまずはあの下の奴を落とせ!』

「言われなくても!」


 爆風により煙が視界を遮るが、探索に使われるウォンバットがこの煙程度で視界が遮られるわけがなかった。備え付けられたカメラに映るのは熱量だけでゼオがどこにいるのか丸わかりだ。

 ロックは注意深く狙いをつけて乗り物と化しているゼオの脚を狙う。右腕の機銃が音を鳴らし、狙いをつけた脚へと弾丸が飛んでいく。威力こそ低いものの、怯んだゼオにこの攻撃は効果的であった。喰らった瞬間、身体を大きく揺らし銃弾が撃ち込まれた足を大きく滑らせた。背中に乗っていた人型のゼオも大きく体を揺らすが、判断が早くすぐに後ろへ飛び上がり乗っていたゼオに振り落とされるようなことはなかった。

 その瞬間、ロックとギャリーが同時に動く。ギャリーが退路を断つために人型のゼオの後ろに数発の擲弾を撃ち込む。ゼオが後ろを振り向いた瞬間、爆風と煙が空に向かう。一方でロックは最初の煙が晴れていく中を走り、ブレードで足を負傷したゼオの首を手早く斬り落とした。そのままロックは走り続けて、人型のゼオに狙いをつける。敵も水晶のついたこん棒を振りかぶるが、ロックはブースターを動かし垂直に飛んだ。上空には翼を持つゼオはクレアやアシュリーが相手しており、わずかに向かってくる敵はギャリーが対空ミサイルで撃ち落とした。極め付きに上空からロックは捕獲用の網を撃ち出す。見た目こそ普通の網だが、ガジェットにも使われているイゾリムと呼ばれる鉱物も含まれているため、その強度は使い手も驚かされるほどであった。

 人型のゼオも逃げ場がない状態では網にかかるのもあっさりだ。網にかかったゼオはもがくものの、余計に網が絡まっていくだけであっという間にがんじがらめとなる。


「よし捕まえた!早く引き上げよう!」


 誰に言うでもなく叫んだロックは急降下する。なぜここまで気持ちが焦るのだろうか。あれを捕まえればすべてが終わるとでも終わったのだろうか。いやあれを捕まえるチャンスがきたのだから、動くのは当然だ。いつもの任務を全うするだけだ。それを証明するかの如く、ロックの視線はあのゼオ一点に向けられていた。


『待てロック!』


 ギャリーの声は聞こえているはずなのに、ロックは一瞬反応が遅れる。煙の中から何かが直進し、ロックを殴りつけた。すんでのところで腕で防御するも、その筋力はガジェットを装着しているロックを容易に吹き飛ばした。ロックは一瞬意識がとぶものの、絶命したゼオの体がクッションとなった。

 ギャリーがパルスナイパーで飛び出てきた相手に弾丸を撃つも、なんとその弾を両腕で受け止めた。


『ああっ!?』

「…化け物がまだいたのかよ」


 頭の中が有象無象のようにぼんやりとする中で、目の前にいた化け物は人型ゼオの網を強引に取り外す。いつものゼオに似ているが肉体はそれ以上にはちきれんばかりで、肩には棘のようなものがついている。大きな牙は威嚇するかの如く口から覗かせていた。新たなゼオが現したその姿に、いよいよロック達の絶望は深まるばかりであった。


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