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RAND  作者: 市田気鈴
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プロローグ

体調崩してネタも思いつかず、まったく別の話ばかり考えていました。こっちの方が思いつくのでしばらくはこちらの方を書いていきます。


 人間にとって繁栄の時代が訪れていた。

 かつて地球の資源が枯渇していく未来を予想した人間達は宇宙に多くの資源が眠っていると考えて、宇宙進出のために精を出していた。そんなときに発見されたのが「RAND」と呼ばれる成分であった。

 この成分は人間が生命活動を停止すると体内の血中に流れ始める成分であまりにも複雑かつ未知の分子によって構成されていた。いまだに血中の何の成分が変化したものなのかは不明ではあるが、研究こそされど活用方法もわからない謎の存在であった。

 この成分をロケットなどの燃料に使った研究者は狂気じみていると思われただろう。現に当時は多くの同業者からその稀有な発想を叩かれたものであった。しかし結果はどうであったか。燃料にRANDが含まれた血液を100分の1だけでも混ぜることでその出力と馬力は格段に跳ね上がり、長期的な稼働も可能となった。

 これを皮切りに様々な分野で技術が発展していくことになった。ロケットなどの宇宙進出のための乗り物はもちろんのこと、それに使われる部品や通信技術、さらには武器なんかも開発されていった。RANDの汎用性はずば抜けており部品に利用すれば劣化しない強固なものを、機械のエネルギーに利用すれば半永久ともいえる持続力と類を見ない馬力を、さらにはバッテリーなんかにも利用するだけで電気や電波にも強大な影響を与えた。

こんなに発展していく中で国同士の対立や戦争がなかったといえば嘘になる。しかしこれはだんだんと影をひそめることになっていった。

 宇宙に進出した人類が最も期待したのは地球以外にいるであろう知的生命体の存在であった。かつて多くの人間が宇宙にロマンを求めたのは、自分たちを超える何かがあると思ったからだろう。生物、技術、理論、どれも人間では手が届かないような存在であるはずだ。宇宙には未知のものにあふれておりそれは地球を容易に超えていく…そう思われていた。

 宇宙に進出して何十年経っただろうか、人間が数万光年先の惑星や他の銀河の存在を知って結論付けたのは人間を超える生命体は「存在しない」ということであった。地球以外に彼らの想像を超える存在はなかったのである。

 その失望は人間達にとってあまりにも大きいものであった。期待を超えた結果が欲しかった。燃えるような感動が欲しかった。手に汗を握る熱狂が欲しかった。こういった感情がすべて崩れていくのは全人類に共通していた。

 この失望と同時に人間達の価値観が変わったことを知らねばなるまい。彼らにはある種の連帯感が生まれたのだ。自分たち地球に住む存在がどれほど希少で価値のある存在かを実感した彼らは争いをやめたのだ。国同士の戦争、紛争は徐々に衰退した。これまで以上に自然環境の保護に取り組んだ。

 では人間の攻撃性がすっかり鳴りを潜めたのかと言えばそうではなかった。彼らのそういった感情は宇宙に向いたのだ。まず各国で何光年にも渡るロケットや宇宙船の開発が進められた。同時に地球同様の環境のある星をピックアップすると完成した船に乗り込み、そこを人間含めた地球生物の植民地にしようとした。幸い人間達にはRANDを使った武器がある。これまで以上に強力な武器を得た人間達は見る見るうちに宇宙に勢力を広げていった。さらに人が住めないような星でも資源の存在は確認できる。この多量の資源を見逃す理由はなく人間達はそこでも活動できるようにRANDを使った特殊環境用活動スーツ「ガジェット」を開発した。スーツを身につけることで空気のない場所でも活動でき、人型のスーツであったため作業も良好、ロケットや宇宙船に勝るとも劣らないほどRANDが有効的に使われた開発であった。

 せっかくの資源を見過ごす人間ではない。誇りある自分たちの住む地球以外にいくらでも資源があるのならばそちらに向かうのは当然のことであった。未来のための対策という大義名分を掲げて彼らは思うがままに侵略をしていったのであった。ガジェットという開発はこれを容易に可能にしたのであった。

 RANDの発見は全世界に貢献したが、同時に人間にとって大きなものを失わせるきっかけとなったのかもしれない。かつての人間から見ればそう思うことも自然であり、また圧倒的な技術革新と人類の躍進に羨ましがるのも自然な時代だ。

 かくして長い年月の間、多くの血が流された。多くの発展が存在した。行きついたのは宇宙に大きく進出し、多数の星に人間が存在するという遥か長い先の未来であった。


個人的にSFは大好きです。

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