第4話 その男、信長
2週間に1話のペースかなぁ
ここは清洲城の大広間。俺はここで待たされていた。なぜここに居るかと言うと、柴田勝家………もとい、柴田のおっさんに頼まれたからだ
柴田のおっさんに再び会ったのは、市ちゃんと話していた時の事だった。急に廊下からドスドスドスって足音が聞こえたかと思ったら、襖の向こうで市ちゃんの侍女達と揉める声が聞こえたんだ
その侍女との一悶着が静かになったなぁって思っていると、襖がバーンッて勢いよく開いて柴田のおっさんが入って来たんだ。そしたら急に土下座されて
「お主にはいろいろと謝らなければならんのだが、今はなにも聞かずワシと来て欲しい!信長様がお主をお呼びなのじゃ!」
って。俺はしばらくポカーンとしてしまった。急に柴田勝家が土下座してきて、信長が会いたいとかって理解が追い付かなかったんだ。そしたら市ちゃんが、俺の脇腹をツンツンってしてきて耳元で
「信長お兄様は気分屋なお方です。早めに行った方が宜しいかと思います」
と、大和撫子モードの市ちゃんがそう言った。まぁ、市ちゃんがそう言うならと俺は承諾した。そして柴田のおっさんに連れてこられて現在に至る。とりあえず、下座にずっと座っているがさすがに疲れてきたぞ
「なぁ、柴田のおっさん。いつまで待つんだ?」
「黙って待っておれ!良いか?!けして顔を上げて殿顔を見てはならんぞ?!」
「なんで?」
「お主は………っ!それが作法と言うものだっ!」
「作法ねぇ」
俺は転生をしてこの世界にやって来た。まぁ、生まれた時からこっちの世界で生きてれば作法の少しも身に付けれただろうけど、今の俺には作法なんてなぁんにも分からなかった
「柴田様、虎丸様」
「ん?」
声のする方へ振り向くと、綺麗な顔立ちの男の子が膝をついて頭を下げ座っていた。多分、信長の小姓なのかな?この当時の人は男色をするって聞いた事がある。小姓って大変だよな
「信長様がお呼びです。虎丸様、こちらへ」
「分かりました」
「良いかっ!?くれぐれも………っ!!!」
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通されたのは6畳ほどの部屋。俺はここで、とりあえず平伏しながら待っていた。小姓に呼ばれて行く時も柴田のおっさんにしつこく作法作法って言われたからだ
「貴様が市を助けた男か?面を見せよ」
「はい。あっ!?」
やべ!なにも考えずに頭を上げちゃったよ。あんだけ柴田のおっさんにしつこく言われたってのに、これはやばいっ!ここは直ぐに謝るしかないぞ
「すっ!すいませんっ!作法なんて全く知らないのでっ!」
「ふん、田舎者に作法など期待しておらん。それに、市を助けた恩義もある。此度は許してやる。さて、貴様は誰だ?」
「と、虎丸です 」
「鬼の小僧ではないのか?」
「はいぃ?」
「勝家が貴様の事をそう称しておった」
「なんですか?それは」
よくよく聞くと、柴田のおっさんが俺と戦った時の事を詳細に信長に言っていたようだった。その時の俺が一瞬鬼の様に見えて、恐怖したがなんとか勝てたって事を。そうだったのか?
「市を助けた事、感謝する。褒美は何が良い?」
「何が良い?って言われても」
「ふん。優柔不断だと損をするぞ。まぁ、良い」
パンッ!パンッ!
信長が手を2回叩くと襖が開けられ、さっきの小姓が1本の刀を両手に持って入って来て信長に手渡した。その刀に俺は見覚えがあった
「あっ!俺の刀っ!」
「らしいな。見させてもらった。勝家が言うには貴様は鬼に貰ったとか言ったらしいが」
「ええ。まぁ………気が付いたら持ってたって感じですが」
信長が刀を鞘から抜いて刃を検分している。俺もあまり覚えてはいないが、確かに柴田のおっさんと戦った時の刀だ。でも、どこか違う気がする。なんだろう?変な感じだが、刀から覇気を感じないって感じだ
「ふむ。何度見ても何の変哲もない刀だ。まぁ良い」
信長は刀を鞘に納めると、まるで興味がなくなったのかの様に刀を俺に投げて来た。俺はそれを必死に受け止めて顔を上げると、信長は既に襖を開けて廊下に出る所だった
「貴様には市の事で借りがある。しばらくは今まで通り市の屋敷で静養するが良い。此度の返事はいずれ聞くが。褒美は後に届けさせる」
そう言うと信長はそのまま出て行った。俺は少し呆然としながらも、先程の信長の言葉を思い出していた。身の振り方を考えておけ、つまり仕官するかしないかって事だよな
「凄い人だな………」
ポカーンとしながら柴田はのおっさんをみたら、おっさんはずっと平伏したままだった。なんでも許しもなく顔をあげたら最悪死罪になるとか。顔をあげただけでなぜだ………とか思いながら、俺は信長と会談した部屋を後にするのだった