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第2話 死闘


「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


「くそっ!」


いきなり斬りかかって来た髭のおっさんは、今も俺を殺そうと何度も何度も刀をブンまわしている。おっさんの表情は怒りに満ち溢れていて、さながら鬼の様な表情だ


俺は市ちゃんを背中に背負いながら必死に体を左右に振って刀を回避している。なぜこんなに俊敏に動けるのかと不思議には思うが、今はそれどころではない


「市ちゃんっ!市ちゃんっ!!うそ?!なんで起きないんだっ??」


市ちゃんは相変わらず背中でスヤスヤと寝ている。強心臓なのか、ただただ寝付きが良いのか分からないけど、これはこれで凄い女の子だ。………ってそんな事を言っている場合じゃない


背中には市ちゃんを背負い、武器なんて何も持っていない丸腰の俺は非常にピンチだ。だけど、おっさんの攻撃の中に一瞬だけど反撃出来るチャンスはありそうな気がしている


それはおっさんの動きだ。おっさんは相変わらず大振りで刀を振っている。なんでそんなに起こってるのかしらないが、刀を振る度に右に左におっさんの体が大きく揺れる。俺が狙えるチャンスはそこしかない


「このこわっぱがぁぁぁぁ!!!」


「今だっ!うおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!」


おっさんが刀を振り下ろしたと同時に、俺は体を捻り後ろに回転させる。回転でスピードに乗った俺は、そのまま左足を伸ばして回し蹴りを喰らわせる。おっさんは刀を大きく振った反動で体勢が崩れており、見事に脇腹へ蹴りがヒットした


「うぐっ!?!」


もろに蹴りを喰らったおっさんは後方へと転がり倒れた。この隙に俺は、少し離れた大きな木の下に市ちゃんを下ろしておっさんと間合いをとった。逃げれば良いじゃないと思うかもしれないが、あのおっさんから逃げれる自信は無い


「むうぅぅ。小僧、見事な蹴りであった………なかなかあっぱれよ」


「………なぜ俺を殺そうとすんだ?」


「知れた事。我らの姫君を拐った罪、万死に値する。その諸行に恥じて潔く死ね」


「姫君?誰の事だよ?」


「戯れ言を………死ねぇぇぇっっっ!!!」


「うわわあっっっ!!!?」 


何とかおっさんの一太刀を交わし再び間合いを取る。ただ、おっさんはさっきの蹴りで冷静さを取り戻しているみたいで、今までとは違い、一切隙がなくなっていた


「こしゃくなぁっ!」


おっさんはどんどん追撃をかけて来る。冷静さを取り戻しているだけあって攻撃はかなり正確だ。俺は必死に走りながら逃げてはいたが、倒木に足を引っ掻けてしまった


「やべっ!?」


「ふははははっ!終わりだっ!!!」


俺が体勢を崩した所に、おっさんの蹴りが飛んで来た。俺はそれを顔面にもろに受けてしまい

、後方へ回転しながら吹き飛んでいった。体感だけど滞空時間が長かった。多分かなりの距離を飛ばされた気がする


「貴様はちょこまか逃げまわるからな。ワシの一太刀で仕留めるには、こうした方がやり易い。さぁ、覚悟は良いか?」


おっさんが満足そうに言ってきた。なにか言い返してやりたいが声が出ない。さっきの蹴りで上手く喋れなくなったみたいだし、体も上手く動かない


あのおっさんの蹴りで、あばら骨でも折れたのか?内臓でもやられたのか?咳き込む度に口から血を吐いてしまう。ああ………せっかくあの時、鬼に延長して貰った命なのに死ぬ時はあっけないもんだな


「あの蹴りでこれか………所詮はただの小僧よ。では死ぬがよい」


視線の先には刀を体の横に構え、俺にとどめの一撃をくわえようとするおっさんが写っていた。俺はこれで死ぬんだと察し、静かに目を閉じたんだ



━━━━どくんっ!


死ぬのか………


"つまらぬ人生だったな"


鬼か?悪いな。せっかく戦国の世に飛ばしてくれたのに


"別に構わぬ。所詮貴様はその程度だったと言う事。ところで、貴様が死ねばあの娘はどうなるのだろうな"


娘?


"貴様が背負ってきた娘だ。貴様が死に、か弱き娘が残る。ならば、貴様と闘い興奮し、気持ちが欲情している男が娘に対してする事など決まっておろうが"


っ!!!!


━━━━どくんっ!!


おっ、鬼っ!もう1度命をよこせっ!市ちゃんを助けに行くっ!


"助けに?つい先程出会った、ただそれだけの娘であろう?"


そんなの関係あるかっ!俺はあの子を助けたいっ!助けたいんだっ!


"………ふむ。ならば我と取引しようではないか"


取引?


"そうだ。今こそ我が力を求めよ"


鬼の………あんたの力?


"そうだ。我が力を貴様に授けてやる。さすれば、あの男に勝てるやもしれん"


勝てるのか………でも、その条件は?


"貴様がこの戦いで敗れ死んだ場合、我が貴様の魂をいただく。そうなれば貴様は、死ぬ事も許されず未来永劫地獄で奴隷として働く事になる"


………構わないさ。俺の魂なんかくれてやる!俺は!俺はっ!!市ちゃんを助けたいんだっ!!!


━━━━どくんっ!!!


"ならば我の力を求めるのだな"




「………ははっ。それしかねぇだろうが」


「っ?!」


俺にとどめを誘うとしていたおっさんが、急に笑い喋りだした俺に驚き少し間合いを取った。俺は辺りを確認してみる。なにも変わっていない。鬼と話してる間は時間は進んでいなかったみたいだ


相変わらず体中が痛い。でもさっきより少し楽だ。これなら立つことも出来る。俺は立ち上がろうと右手を動かしら手に触れるものがあった。俺はそれを掴むと立ち上がり、ゆっくりとおっさんを見た


おっさんは明らかに先程までと雰囲気が変わった俺、そして手に見た事もない刀を持っている俺に驚いて少し困惑している感じだ


「小僧、その刀をどこから出した?」


「………鬼に貰った」


「鬼?」


刀を両手で掴みおっさんに相対する。相変わらず口からは血が溢れてくるし、体中が痛い。息も上手く出来ない。少しでも気を抜けば一瞬で意識が飛んでしまいそうだ


こんなんじゃ多分、鬼に貰った刀でおっさんを攻撃出来ても1回が限界だろうな。俺はゆっくりと間合いを取り刀を構える。おっさんも俺の意図が分かったらしく、刀を正面に構えた


「ほほぅ、良き目をしておるな。殺すには惜しい男よ。小僧、名を聞いておこう」


「………虎丸」


「良き名だな。出会いが違えば家臣にした物を………されど罪は罪!せめて苦しまずに殺してやろうっ!」


「くっ、来やがれおっさんっ!この一太刀に俺の全てをかけるっ!!」


「よくぞ申したっ!我は織田信行様が家臣、柴田勝家っ!貴様の一太刀に我も全力を持ってお相手しようっ!いざ、参るっ!!」 


おっさんは柴田勝家だったのかよ。まぁ今は関係ねぇ!柴田のおっさんは刀を前方に構え、そのまま一直線に突っ込んで来た。刀を振り上げ俺に斬りかかってくる。ビリビリと気迫も伝わってくる。まさに本気を出した一太刀だ


俺は、深呼吸をして気持ちを静め体を動かし前へと走る。鬼の力か、今までより早く動ける。俺はそのまま刀を下手に持ち、強く握り、大きく強く振り上げる



その瞬間━━━━

 


「っ!!?」


「かはっ!?」

 

吹き上がる鮮血。多分、致命傷には至ってはいないとは思うんだけど、完璧に負けた。だって、意識が遠退いて行く。俺の下手からの攻撃は見事に弾かれ、そのまま二の太刀で斬られた


「ははは………負けちゃったな………」


「見事な太刀であった」


「………ありがと」


「最後に言う事はあるか?」


「あの………女の子………を………安全………家………へと………に送って………くれ………」


「無論そのつもりだ」


意識が遠退く。もう駄目だ。悪いな鬼、せっかく取引したのに。市ちゃんもごめん。俺は薄れゆく意識をそのまま手放し、暗闇へと落ちていったのだった………


すでに日はとっくに沈み、辺りは漆黒の闇が支配している。柴田勝家は、肩を大きく揺らしながら意識を失った虎丸を見ていた。実は先程の一太刀、普通にやっていたら勝家は負けていた


それは自分の刀と虎丸の刀が交わった時に、一瞬死を覚悟した程だ。それでも勝てたのは、勝家と虎丸の実戦経験の差だろう。何度か死戦を潜り抜けていればいろんな対応も出来る


ただその代償は小さくなかった。虎丸の刀を無理矢理力で抑え込んだ為、その衝撃で肩を脱臼してしまっていた。別に治らない物ではないが、今は右腕が全く使えない状態になっていた


勝家は刀を左手に持ち替えると虎丸に股がり、刃を下に向け、心臓の上で刀を固定した。せめて苦しまずに殺してやる為である。そして勝家は左手に力を入れ心臓目掛けて刀を突き降ろす



が、その時━━━━



「矛を納めなさい、勝家」


刺さる手前でピタッと止まる勝家の刀。振り替えると小さな女の子が立っていた。その女の子は虎丸が背負って一緒に清洲まで来た市であった


「お市様………」


「その者は(わたくし)を助け清洲まで送ってくれた者。無礼な立ち振舞いは許しませぬ」


「なっ!?なんとっ!?」


「此度の事、(わたくし)にも責任があります。この者を屋敷に運び手当てを」


「はは━━━━っ!!!」


勝家は虎丸を丁寧に担ぎ上げると、お市の後に従い歩く。自分の勘違いで、なんて事をしてしまったのだろうと後悔の念しかなかった。が、実際に戦った勝家は思っていた。この者を自ら鍛え上げ、我が家臣にしたいと


「勝家、この者の事。くれぐれにも兄上には」


「分かっております。お任せ下さい」


市と勝家は清洲の町を通り過ぎ静かに城門を通ると、清洲の城の中へと入って行くのだった

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