ep2 Project Alive
ガレージに戻り必要なものを壁に書き殴る。
そしてその中から現状で揃えられるものを揃えて行く、それしか方法が見つからない。
ガレージの中を片っ端から探して使えそうなものを探した。
バール、鉄パイプ、非常食の缶詰と水……武器として使えそうなものもあるがどれも近距離でしか使えない。
使えそうなものを見つけては片っ端からハンビーの荷室に積み込んで行く。
一通り積み終えたところで部室に備え付けられた内線用の電話が鳴り響いた。
普段から頻繁に使われている受話器を手に取りいつも通りに応答した。
「こちら自動車部です、修理のご依頼ですか?」
外の状況を悟られないように落ち着いて対応する。
「この声は幸太か?今から部室に向かうからそこで待ってろ!いいか、絶対に校外に出るなよ!」
声の主はそれだけ言うと受話器を置いてしまった。
おそらく声の主は外がどうなっているかを知ってしまったのだろう。
しかし奇妙な事に内線を使えている。
もし、外の状況が知れ渡っていれば内線を使う余裕などないし、周囲の人々の悲鳴で会話どころではない。
と言うことは、まだそこまで知れ渡っていないように思える。
そんなことを考えていると、ガレージ横のドアが開き、見慣れた男が入ってきた。
「幸太、落ち着いて聞いてくれ……」
深刻そうな顔をして入ってきたのは、自動車部部長の榊原裕也だ。
「外の状況はわかってるよ、まるで海外の映画だ」
外の状況を把握している事を匂わせると、彼は落ち着いて話を始めた。
「なら話は早い、現状ではまだ校内では何も起きていないがみんなこの自体を知っていて講義に来ていない連中に連絡を取ろうとしてるが携帯が繋がらない。固定電話も使えない事をさっき確認できた」
携帯も固定電話も使えないとなると、連絡手段は内線だけ。
だが講義に出て無いと言うことは校内にいる可能性は低い。
「俺が部室にいる確証があったからかけてきたのか?」
確証がないのにかけるのは時間の無駄だ、それなら内線なんて使わず直接部室に来た方が手っ取り早いだろう。
「だって幸太、ここ最近ずっとここにいるじゃん?だから今日も来てると思って」
たしかにそうだ、暇さえあれば部室に来てコーヒーを飲むのが日課になりつつあったくらいだ。
「なるほどね、俺はお前の事は心配してなかったよ。お前は単位落としそうで講義を受けてるってわかってたから」
そう告げると裕也は、「少しは心配しろよ」とため息混じりに呟いた。
そうしてしばらく話をした後、今後の計画や万が一の脱出ルートが決まった。
計画はこうだ、校内に屍が入って来ないうちに部員の車を改造し、それと同時に手が空いている人が武器、食料などの必要な物を集める。
そして屍が侵入し、この場に留まるのは危険だと感じたら車で強行突破し人気のない山奥を目指して走り続ける。
「おそらく人が多く住んでいる場所はどこもこんな状況だろうけど、山間部の小さな集落なら感染者がいない可能性もある。屍どもは歩いてしか移動できないみたいだから、今からこの街を出て歩いても山の方に行くには4日はかかるだろう。でも車なら4時間もかからないさ」
裕也はそう言っているが、そう上手くはいかないだろう。
街中は事故車が道を塞ぎ、それに伴って渋滞も発生している。
「滅多に車が通らないこの道なら使えそうだ、屍は撥ね飛ばしながら進むしかないからな。もう一つの問題は撥ね飛ばす車だ、ハンビーなら撥ね飛ばしても走れるが、他は厳しいと思うぞ?」
そう、部員の車はセダンやクーペばかりだから撥ね飛ばして進むには不向きだ。
しかしここは自動車部だ、部員の車にも使える部品は山ほどある。
「とりあえず今俺たちにできる事をやろう。手始めに部員の車につけるバンパーをある程度作っておこう、屍を撥ね飛ばすなら樹脂製のバンパーは役に立たないからな」
裕也はそう言いながら鉄パイプを集めて作業を始めた。
それと同時に俺は部室を出て他の部員を集める事にした。